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なぜJAVAが犬猫へのマイクロチップ装着の「義務付け」に反対するのか Q&A

動物愛護法改正の議論のなかで、「飼い犬猫にマイクロチップを装着することを義務付ければ、迷子になっても飼い主がわかり、殺処分が減らせる」といった意見をよく耳にします。また、環境省は、動物愛護法の附則に従って、販売される犬猫への装着義務付けに向けての検討を進めています。
JAVAは、マイクロチップの装着には反対していませんが、それを「義務付ける」ことには反対しています。今回、その理由をわかりやすくQ&Aでご説明します。


 

Q1 マイクロチップとはどういうもの?
A マイクロチップ(以下、チップといいます)は、直径約2㎜、長さ8~12㎜程度の円筒形の電子標識器具です。チップごとに15桁の番号が記録されていて、専用のリーダー(読み取り器)でこの番号で読み取ることができます。この番号を、登録データを管理する組織(日本では動物ID管理普及推進会議(AIPO)や一般社団法人ジャパンケネルクラブ等)に照会すると、登録されているその動物の飼い主の氏名や連絡先、その動物の特徴(種類、性別、生年月日など)、装着した獣医師名や連絡先などの情報がわかる、という仕組みです。
チップは、獣医師によって注射器のような専用の器具を使って皮下に埋め込まれます。動物の種類によって埋め込まれる場所は異なりますが、犬猫は首の背面が一般的です。

マイクロチップ(環境省のホームページより)

Q2 チップを入れておけば、飼い犬猫が迷子になった時、見つかりやすくなるのでは?
A たしかに迷子になって、保健所や動物管理センター、動物病院などに保護された場合、チップが入っていれば飼い主のもとに戻れる可能性は高くなります。しかし、チップは次のように万全ではなく、チップを入れていれば安心というわけではないのです。

  • すべての保健所、すべての警察署、すべての動物病院がリーダーを所有、設置しているわけではないので、収容先によってはチップを読み取る作業ができません。
  • ISO(国際標準化機構)規格外のチップを入れている場合、普及しているISO規格のリーダーでは読み取れません。
  • 犬猫が怯えて暴れていたりすると、上手くリーダーがあてられず読み取れないこともあります。また、チップが装着した首の背面から皮下を移動する可能性があるため、リーダーをあてた部分にチップがなく、読み取れない場合もあるのです。ゲート式リーダーならケージに入れたまま、体全体から読み取るのでそういった問題は解決できますが、ゲート式リーダーは大きくて、高価なため、所有している施設が限られています。
  • 自治体の職務怠慢により、収容した猫に対してチップを読み取る作業をしなかった例もJAVAは複数把握しています。
  • チップが読み取れても、照会してみたら何の情報も登録されていなかったり、登録されている所有者の連絡先が変更になっていて連絡がつかず、返還できなかったといったケースも発生しています。
  • 2012年から犬へのチップ装着が義務付けられている北アイルランドでは、迷い犬のうち、正しい情報の入ったチップを入れていたのはわずか28%であったことが報告されています。
  • 飼い主が「うちの犬(猫)がいなくなったけれど、チップが入っているから」などと安心してしまい、捜すまでに時間をあけてしまうと、チップは上記のように決して万全ではないので、飼い主が連絡を待っている間に殺処分された、ということにもなりかねません。

Q3 犬猫を捨てたらチップによって犯人がわかるので、遺棄防止になるのでは?
A 残念ながら、その効果はあまり期待できません。チップを入れるには、自分の犬猫を動物病院に連れていく手間と、数千円~1万円程度の費用がかかります。そのようなことをきちんとする飼い主は、犬猫を捨てる確率は低いと言えます。 自分の飼い犬猫を捨てる、不妊去勢をせず、どんどん産ませてはその子犬子猫を捨てることを繰り返す、というような無責任でどうしようもない飼い主は、義務付けをしてもチップを入れないと思われるため、捨て犬猫の犯人捜しにチップが効果を上げることはほとんど望めないでしょう。ペットショップでチップを入れてから売った場合でも、そういった無責任な飼い主は、情報の登録(AIPOの場合、費用は1,000円)や変更・更新の手続きをしなかったりして、やはり遺棄防止の効果はそう変わらないと考えます。

Q4 少なくとも、迷子になった時に見つかりやすいというメリットはあるのだから、飼い犬猫へのチップの装着を義務付けたらいいのでは?
A 自分が飼っている犬や猫が迷子になった時のために、チップを入れておくことに異論はありませんが、法律や条令等で「義務付け」とすることには大きな問題があります。それは野良猫の命を脅かすことになるからです。

Q5 なぜ、チップの装着を義務付けにすると野良猫の命を脅かすことになるのか?
A 猫は、飼い猫であれ野良猫であれ、動物愛護法で愛護動物に規定されており、虐待すれば罰せられるわけですが、中には、「野良猫ならば殺しても構わない」と思っている人が未だに多くいて、「糞尿被害がある」「数が増えている」を理由に、野良猫を駆除しようと捕獲したり、毒殺したりといったことが後をたちません。それどころか、駆除目的という不正な猫の引取りをする自治体もいまだにあるのです。

JAVAではこれまで数多くの自治体による猫捕獲や捕獲された猫の引取りを廃止させてきました。それができたのは、「飼い猫と野良猫の区別はできない。野良猫と思っても誰かの猫が迷っているだけかもしれない。飼い猫を捕獲するのは窃盗だ」という私たちの主張が通り、自治体がその違法性を認めたからです。しかし、チップ装着の義務化により飼い主の有無が明らかになってしまえば、その主張は通らなくなり、野良猫や迷い猫、そして地域猫の命がますます危険にさらされることになるのです。
過去には、「飼い猫に町で交付する首輪の装着を義務付ける。猫を捕獲して、首輪がない猫は京都府で殺処分することができるようにする」という条例案が議会にかけられた京都府大江町(現 福知山市)の例もあります。なんとか事実上の廃案にできましたが。

チップを飼い主の判断で装着することに異論はありませんが、日本にまだ殺処分のシステムがある以上、また、駆除目的の引取りが完全になくなっていない以上、野良猫たちが殺される危険性がある義務付けには反対です。
飼い主のいる動物だけが守られるのではなく、最も不幸な境遇にある動物、守ってくれる人がいない動物もきちんと保護される動物愛護法であるべきです。マイクロチップの義務付けは、不幸な動物をますます不幸にしてしまいます。

Q6 JAVAも求めている「8週齢規制」にはチップ装着が必要では?これは販売用の犬猫だけが対象だから、JAVAが懸念する問題はないのでは?
A 「8週齢規制」実施の課題の一つに「犬猫の生年月日の証明」があり、そのため、販売用の犬猫の8週齢を証明する目的でのチップ装着の義務付けについても環境省において検討がなされています。
JAVAは8週齢規制を強く求めていますが、ただ、そのためにチップ装着を義務付けることにも次のように疑問を持っています。

  • 義務付けても悪質な業者はチップを入れなかったり、嘘の生年月日を登録する可能性があります。チップ装着を義務付けても正しい生年月日を証明できるとは限りません。
  • 8週齢規制が2000年頃から実施されているフランスは、飼い犬猫にチップもしくは入れ墨を入れることが義務付けされていて生年月日も登録されていますが、飼い主を見つけることが目的であって、8週齢規制のために義務付けたのではありません。8週齢かどうか疑わしい犬猫が販売されていた場合、週齢の最終的な判断は、警察から依頼を受けた獣医師の診断で行います。
  • 米国では、危険と判断された犬など特別な場合を除いて飼い犬猫にチップ装着を義務付けている州はありません。22の州で8週齢規制がすでに実施されていますが、販売される犬や猫にもチップ装着を義務付けてはいません。他の州でも義務付けていません(郡や市町レベルで義務付けているところはいくつかあります)。
  • 犬の8週齢規制が1999年からある英国ですが、犬へのチップ装着が国全域で義務付けられたのは2016年4月からであり、英国でも8週齢の判断はチップの登録情報に頼っていません。獣医師の判断や書面等で行っています。
  • つまり、これらの国々はチップに頼らず8週齢規制を長年実施しているわけであり、日本でも可能といえます。
  • チップを入れたほうが出生から販売に至るまでの履歴が正確に把握できるかもしれません。しかし、最初は「義務付けするのは販売された犬猫に限る」というものであっても、これが将来、「すべての飼い犬猫を対象にする」と対象が拡大される可能性は、環境省や日本獣医師会などが飼い犬猫全体へのチップの装着を強く推し進めていることからも十分に予測できます。Q5で述べたような義務付けによって野良猫たちの命が危険にさらされる可能性がある以上、チップを用いない8週齢規制に留めるべきです。

※「8週齢規制」とは:子犬子猫の心身の健康のため、8週齢(生後56~62日)までは産まれた環境から引き離したり、販売することを禁じる規定で、米国(22州・犬のみの州あり)、英国(犬のみ)、フランス、ドイツ(犬のみ)などで実施されている。しかし、日本の動物愛護法では、「7週齢(49日)規制」に留まっている。同法には「8週(56日)」と明記されているが、附則によって緩和措置が設けられたために、実施の見通しが立っていない。

まとめ 
自分の犬や猫が迷子になった時のことを考え、「できる限りの対策をとっておきたい」とチップを入れる飼い主の気持ちはもちろんわかります。また、震災などで飼い主のもとに帰れない犬猫を見て、「チップを入れていたら帰れたかも」とチップの普及を望む気持ちもわかります。ですので、そのようなマイクロチップ本来の使い方なら、普及させることにJAVAは反対ではありません。
ただ、日本の殺処分システムがなくならない限り、「チップがない=所有者がいない」として野良猫や迷い猫が命の危険にさらされる可能性があるのです。そのため、JAVAは法律や条令等でマイクロチップ装着を「義務付ける」ことには反対をしています。

<参考>
環境省発行資料『マイクロチップによる動物の個体識別の概要』
公益社団法人日本獣医師会;動物の福祉及び愛護
Battersea Dogs & Cats Home 発行資料『 Microchipping where it matters most』

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