HSVMAのKrebsbach博士から酪農学園大学長あての意見書
酪農学園大学 谷山学長 殿
牛頸部切開放血手法に関して
拝啓
Humane Society Veterinary Medical Association(HSVMA)は、酪農学園大学獣医学部における解剖学と病理解剖学教育の為の、残酷で時代遅れの手法:無麻酔による放血法による生きた牛の殺処分に対し、はなはだしい遺憾の意を表明いたします。
この、牛の殺処分法が受け入れ難いものであるのみならず、酪農学園大学は獣医学校における最近の世界的な傾向である、自然死した、あるいは治療不可能という医学的な理由によって(教育メモリアルプログラム[Educational
Memorial Programs/略してEMP]及び献体寄贈プログラム[Willed-Body Donation Programs]として適用される)安楽死させられた動物の死体を使用する方法を採用されるべきです。
放血法は、死に至らしめる一つの方法ではありますが、それは動物の殺処分法としては反対されて然るべきです。
麻酔無しでこの行為を行うことは、極度の血液量減少に伴うひどい不安を引き起こすため嫌悪されるものです。[i]
安楽死に関する米国獣医師会のガイドライン及び合衆国国立衛生研究所の実験動物委員会のガイドブックでは、放血法は意識のある動物に対しては行うべきではないと明言しています。
より人道的な安楽死方法は、バルビツール酸誘導体を使用するものです。
バルビツール酸系麻酔薬は、中枢神経組織を次の順に弱めて行きます。最初に大脳皮質を、次に意識の喪失を伴って徐々に安楽死に向かわせます。過剰摂取は麻痺を深め窒息をもたらします。呼吸器中枢機能の低下により、続いて心停止を引き起こします。
麻酔用のバルビツール酸誘導体は静脈注射をすれば、安楽死させるために使用できます。これによって迅速な効果が現れます。
静脈穿刺に伴う最小限度の、あるいは一時的な痛みはあるものの、バルビツール剤によって意識の喪失が起こります。このバルビツール剤が望ましいのは、効力があり、長く作用し、溶解して安定しているからです。そして安価であるということです。
ペントバルビタール・ナトリウムは、これらの基準に最適なものであり、最も広く利用されています。またセコバルビタールのようなものも同じように好ましいものです。[ii]
解剖目的の動物の死体に関する更に進歩した考え方は、教育メモリアルプログラム(EMP)です。EMPは獣医学教育において、近年飛躍的に普及してきています。この方法は、献体として提供された人間の遺体を使い100年以上も人間の解剖学を学んできた、医学博士たちによって使われてきた方法を基にして作られています。
それと対照的に、ほとんどすべての北米の獣医大学は、長い間世界中の他の獣医学校と同じように、動物のディーラーやブリーダーやグレイハウンド産業や動物シェルター(管理センター)などから、犬や猫の死体を解剖に使用するために調達してきました。家畜に関しては、馬、牛、羊などの最も一般的な調達先は、オークションで購入するものでした。
解剖学や外科技術実習に使用する動物死体をこのような所から調達することに対して、強い反対をする獣医学生や獣医学部の教授が増えてきています。
また、一般市民は、獣医学大学やその他の場所において、解剖学のために健康な動物を殺すことについて倫理的な問題意識を高めています。
実際、多くの州や地方自治体は、解剖目的でシェルターの動物を入手することを禁止する法案を制定し通過させて来ました。
EMPは、学生たちや教授陣、一般市民による倫理的な問題意識に応じたものであり、さらに動物の福祉を促進するものです。
EMPを通じてそれらの動物の死体を調達する方法は、正当な代替法です。治療法が可能な牛を殺して使用することは、正当な代替法とはなりえません。
これらの考え方の発展に応じて、アメリカの幾つかの獣医学部は、人間の献体プログラムに倣い、飼い主によって直接、獣医学部付属動物病院に献体された動物の死体を使うようにEMPを計画しました。
献体される動物は、
1)医学的に病気が治療できないため安楽死させられたもの
2)顧客が高額な治療費を支払うことができないで安楽死させられたもの
3)自然死したもの
EMPは、獣医学大学に教育目的の正当な死体供給源を提供しています。そして、動物のオーナーには将来の獣医師のサポートが出来る特別な機会を提供しています。
アメリカ合衆国では、以下の獣医学大学がEMPを実行に移しました。
EMP:
カリフォルニア大学デイヴイス校
タフツ大学
フロリダ大学
ペンシルヴェニア大学
ウィスコンシン大学マディソン校
ウェスタン大学
さらにEMPに関しての情報をお知りになりたい場合には、(よくあるご質問の返答も含め、より賢明なプラン、標準プラン、見解、供給源など)以下のホームページをご覧ください。
http://www.educationalmemorial.org/
HSVMAは、酪農学園大学獣医学部において行われている、非人道的な放血法実施に深い危惧を感じています。
そのような残酷な殺し方は、大学のキャンパスで行われるべきものではありません。そこでは将来の獣医師が治療や治癒を学んでいるところであり、そこでは動物の健康や福祉が最重要であるべきです。
私達は、近い将来において大学でこのような野蛮な行為が廃止されることを強く望んでいます。
敬具
Humane Society Veterinary Medical Association(HSVMA)
獣医学コンサルタント
獣医学博士Susan B. Krebsbach
[i] Blackmore DK. Differences in behaviour between sheep and cattle during
slaughter. Res Vet Sci 1984; 37:223-226.
[ii] American Veterinary Medical Association. AVMA Guidelines on Euthanasia
2007; 11.
|