世界最大の実験用マーモセットの繁殖施設建設を撤回させる

世界最大の実験用マーモセットの繁殖施設
JAVA、建設計画を撤回させる!

2008年3月、「沖縄県金武町が、2,000頭もの実験用マーモセットを飼育し、繁殖、販売をする施設の建設を計画している」と地元新聞が報じました。

金武町は、この計画を25人の雇用や、年間4億5,000万円以上の収益など、町の活性化や経済効果をかなり期待して、町長、町議会が一丸となって押し進めていることが判明しました。この計画を中止させるには、ただ動物実験の実態や残酷性を訴えるだけでは無理であることから、JAVAは、町が期待しているほどマーモセットの需要は無く、経済効果は見込めないことをデータによって示さなければならないと考え、協力関係にある英国、米国の動物保護団体に情報提供や意見を求めました。
そして、金武町と金武町が事業実施の相談をしている北部広域市町村圏事務組合に対し、この計画について、以下の6点の問題点やデメリットを指摘し、計画の撤回を求めました。 

1)動物実験は大変残酷な行為であり、国内外で動物実験反対の機運が高まっている。
動物実験については3Rの原則の遵守が国際的な流れとなり、日本においても「動物愛護法」にこの原則が取り入れられている。また、OECDなどの安全性ガイドラインにおいても、動物実験を外して代替法を取り入れる努力が進められたり、代替法評価機関が欧米に続いて日本にも設立されるなど、世界的な規模で動物実験に反対する動き、代替法を推進する動きが高まるなか、この計画は時代の流れに逆行するものである。

2)特に霊長類の実験使用に対して強い批判がある。
ニュージーランド、英国をはじめ、大型類人猿の実験使用を禁止している国がいくつもある。また、日本でも侵襲的実験は行っていない。その他、2005年の「ベルリン宣言」、2007年の欧州会議における「0040/2007宣言」の採択などからわかるように、いまや科学者、動物保護団体、議会などあらゆるところから、霊長類の実験反対の声が上がる時代である。マーモセットについては、2002年、英国ケンブリッジ大学でのマーモセットを使った残酷な実験の実態が、同国の動物保護団体BUAVによって明らかにされ、国内外からの抗議が殺到し、実験施設増設計画が中止となったケースがある。

3)期待されている経済効果は見込めない。
施設の運営主体となる、実験動物の生産販売会社・日本クレアは、4億5,000万円の収益が見込めるとか、日本国内や欧州で年間2,000頭以上、米国で年間1万頭以上の市場が期待できるなどの経済効果を金武町に提示した。しかし、マーモセットの繁殖はわりと容易であり、欧米ではマーモセットは不足しておらず、欧州ではEUやETS123(実験その他の科学目的に使用される脊椎動物の保護のための欧州協定)加盟国以外からの輸入はほとんどなく、米国では年間275~375頭にとどまっている。日本でもマーモセットの使用数は多く見積もっても400頭であることなどから、日本クレアが提示した経済効果は見込めない。この建設計画を進めたならば、町に莫大な経済損失が発生することは必至である。

4)周辺や自然環境を汚染する恐れがある。
1998年、フランス・ホルツハイムにおいて、実験用サルの飼育施設建設計画が立てられたが、動物実験への反対感情だけではなく、新しいウィルスへの脅威や、排泄物などによる地下水などへの環境汚染の危険性から、大きな反対運動が起こり、建設計画が中止になった。
2,000頭ものマーモセットの飼育を行えば、常に環境汚染の危険性がある。金武町は豊かな自然を有するところであり、環境汚染は、観光産業に大打撃を与えかねない。

5)日本クレアが撤退した場合、町は、残されたマーモセットの飼育とその飼育費用に膨大な負担を負うことになる。
1997年、動物用医薬品メーカー・ブルー十字血液センターが、実験用犬猫440頭を残し倒産したケースがある。このときは、犬猫であったため、地元動物保護団体が救出し、新しい飼い主を見つけることができた。しかし、マーモセットの場合、一般家庭への譲渡はまず不可能。
現に、チンパンジーについては、日本では、侵襲的実験が廃絶となったため、残されたチンパンジーたちは、製薬会社・三和科学研究所が引き取り、飼育を続けているが(2007年4月より運営が京都大学霊長類研究所に移管され、サンクチュアリになっている)、年間維持費が2億5,000万円にのぼると報道されている。
万が一、日本クレアがマーモセットを残して撤退した場合、金武町がその飼育をすることになる。マーモセットは寿命が15~20年と長く、管理費や人件費に莫大な費用がかかることは容易に推測できる。

6)動物実験に加担すれば、金武町のイメージダウンになる。
動物実験対する批判は国内外で高まっており、それに加担すれば、金武町のイメージダウンは必至で、金武町の主産業である観光へのダメージは計り知れない。

JAVAが問題点を指摘し、その計画の白紙撤回を求めて約1ヶ月後、北部広域市町村圏事務組合から「JAVAからの指摘は当組合でも懸念していることであり、実施は不可能と考えている」との回答がありました。
その後、金武町長から「計画を断念する」旨の回答がありました。JAVAは、この計画が撤回されなければ、世界各国の動物保護団体に呼びかけ、大規模な反対キャンペーンを展開する覚悟で臨み、その決意を金武町にも伝えていました。そして、計画が撤回され、多くのマーモセットの犠牲を出さずにすんだのです。協力してくれた海外の動物保護団体から、喜びや賛辞のメッセージが届きました。動物実験をなくすために、今回のような動物実験をサポートするような計画には、今後も強い反対の姿勢を示していかなければなりません。

(JAVA NEWS NO.82より)

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