日本で生まれた感作性試験代替法<h-CLAT>

JaCVAM第3回ワークショップ h-CLATシンポジウム
-日本で生まれた感作性試験代替法の概要とその応用-

2010年1月20日 国立医薬品食品衛生研究所

感作性試験とは、動物実験が求められる場合の毒性試験のひとつで、皮膚アレルギーを調べるものである。接触によって皮膚アレルギーの原因となるのは、化粧品や香水といった香粧品、ニッケルやプラチナ等の金属、漆などが多いと言われている。
現在、感作性試験の代替法としては、LLNA法(マウス局所リンパ節増殖試験/マウスの耳に試験物質を塗布)が、2002年OECDのガイドラインに収載されている。従来のモルモットの皮膚に試験物質を塗布する実験より、短期間で実施出来ることや、動物福祉の面からは動物の外傷や使用数を少なく出来るといった利点があり、世界の規制当局に受け入れられている。しかし日本ではまだまだ認められていないと聞く。

h-CLAT(human Cell Line Activation Test/エイチクラット)は、花王、資生堂を中心に多くのメーカーが協力しあって、7年間に亘って研究開発がされてきた。その研究については早くから代替法学会等で報告を聞く機会が私たち市民にもあった。特筆すべきは、LLNA法のようなReduction、Refinementではなく、Replacementであることだ。ヒトの培養細胞であるTHP-1(ヒト単球由来株化細胞)を使用し動物は犠牲にしない方法である。また、日本で開発されたという点も非常に心強く、ぜひOECDのガイドラインに収載され世界に広まってほしいと思う。

今回は、今までの研究を総括した発表がされた。下記プログラムをご覧いただければわかるが、複数の大手メーカーが共同研究を行っている。これは海外ではあまり見られないことで、日本の良い特徴だそうだ。

  • 試験の原理と概要(花王) 
  • 具体的試験法(資生堂) 
  • 施設間再現性(ポーラ化成工業) 
  • 細胞選択条件(カネボウ化粧品) 
  • 血清選択条件(資生堂) 
  • 細胞培養条件(ライオン) 
  • 香料の評価(コーセー) 
  • 防腐剤の評価(花王) 
  • 染毛剤の評価(日本メナード化粧品) 

総括としては、それぞれの研究から施設間再現性の良好、LLNA法との高い一致性などが導き出され、h-CLATは感作性試験の代替法として有用であることが示唆されたとの報告だった。しかし、疑陰性を示すことがあると、OECDでは第二段階のスクリーニング法とされる可能性も高く、結局、h-CLATの後にLLNA法を行うことになりかねないとの危惧も聞かれた。次の段階としては、今年の7月から公的機関によるバリデーション(妥当性評価)を開始、また、ECVAM(欧州代替法評価センター)がコーディネイトするバリデーションも行っていくとのこと。それでも実用化されるには、早くても3年はかかるようだ。

代替法学会と比べると、各発表の後には活発かつ具体的な質疑応答がなされ、研究者やメーカーからのh-CLATの実用に向けた意気込みや期待が感じられた。シンポジウムに参加すると、専門的なことはほとんどわからないのだが、ひとつの確立した試験法を研究開発することの大変さを垣間見ることが出来る。高齢の研究者はじめ、まだまだ動物実験を求める声もあるそうだが、私たち市民もどのような研究がなされているのか知る努力をして、代替法開発をさらに応援していく必要がある。

※3Rの原則
Replacement:動物を使用しない方法への置き換え
Reduction:動物使用数の削減
Refinement:動物の苦痛の軽減

(JAVA NEWS No.84より)

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