市民病院で、子どもがブタの心臓で医療体験

<教育プロジェクト>

子どもがブタの心臓で医療体験
横浜市立市民病院、今年から動物使用を廃止!

2014年8月23日、横浜市立市民病院(以下、市民病院)で開催された、子どもに医療の現場を体験させるイベント「一日メディカルパーク2014」のなかで「ブタの心臓に人工弁を縫合する体験コーナーがあった」と市民の方々からJAVAに通報がありました。
この様子はNHKのニュースでも流され、映像を見た方たちからは「小さな子どもたちが動物の臓器を触っている光景にゾッとした」「医療機関が命を粗末にしている」「佐世保事件を誘発させるものだと思う」といった声がありました。

医療訓練には多くの代替法がある

今回のイベントでも、本物のブタの心臓を用いる必要性はなく、模型で体験させれば十分であるにもかかわらず、あえてブタの心臓を用いたというのは、「イベントをインパクトのあるものにしよう」「子どもたちを驚かせよう」といった主催者側の軽率で安易な考えがあったとしか言いようがありません。
採血、挿管や手術をはじめとした医療技術を学ぶ方法には、生体や死体を使用する以外に、コンピュータシミュレーション、精巧なマネキンや3D模型など様々な代替法があります。これらを使って学習すれば、手技の過程を繰り返し訓練できたり、一人一人が自分のペースで行うことができるというメリットがあります。このように動物を用いない学習・訓練プログラムやキットは多数開発され、欧米の医学部や獣医学部をはじめ、医師の訓練にも利用されています。

献体制度とは明らかに異なる

獣医学生の実習において、飼い主から提供を受けた動物の死体、つまり献体を利用する方法が欧米では多くの大学で採用されています。死体という点は同じでも、この献体は、「その動物が治療を施すことができず、そのまま生かしておくことの方が苦しむことになる重大な傷病を患い、獣医学的な判断と、心からその動物を思う飼い主による判断によって、苦痛のない方法で死に至った」、つまり、安楽死となった動物や自然死した動物の遺体を飼い主の承諾のもと獣医学実習に利用しています。人間の献体システムとただ一つ違うのは、その動物の意思は確認できないので、飼い主がその代理をしている点です。
それに対して、今回利用されたのは、臨床現場の医師や医学生が実習等に用いるブタの心臓、つまり食用や実験用として殺されたブタであり、献体の状況とはまったく異なります。「どうせ処分するか腐敗する臓器を活用してやっている」「教材にすることで無駄にしないでやっている」といった感覚に陥り、死体をモノのように扱うことになり、参加した子どもたちのみならず、病院職員全体の生命軽視にもつながる恐れがあります。

JAVAの指摘で、動物使用が廃止となる!

JAVAは横浜市に対して、臓器の利用であっても、動物の体を実験・実習に利用するという行為には問題があることを指摘した上で、生体・死体を問わず、二度と動物を用いないよう求めました。しかし、市民病院の回答は、「今後開催する講座については、JAVAからの意見を踏まえ、検討していく」に留まっていました。
そのため、JAVAでは翌2015年の開催も注視していたところ、今年の告知では、動物やその臓器を用いた講座は見受けられませんでした。そして、このイベントの担当である市民病院の総務課長に確認し、「前年のJAVAの指摘を受けて、2015年より、『一日メディカルパーク』では、生体・死体(臓器を含む)を問わず、動物を一切用いないことにした」との回答を得ることができたのです。

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このようにJAVAの指摘を受け入れる機関もあれば、頑なに解剖実習に執着する教育機関もあります。子どもや社会への影響を考えた場合どうすればいいのか、これからもJAVAは主張を発信し、活動を続けていきます。

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