JAVA:NPO法人 動物実験の廃止を求める会(Japan Anti-Vivisection Association)

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お知らせ

動物実験代替法の国際会議と学会大会

アジア初の代替法国際会議「Asian Congress 2016」と「日本動物実験代替法学会第29回大会」が合同開催

動物実験代替法に関するアジア地域の国際会議、アジアンコングレス(Asian Congress 2016 on Alternatives and Animal Use in the Life Sciences)。初大会となる今回は、日本動物実験代替法学会第29回大会と合同で、11月15~18日、佐賀県唐津市および福岡・九州大学にて開催されました。前半の唐津開催だけで、韓国、中国、タイ、インドネシア、インドなどのアジア諸国のほか、米国、カナダ、ヨーロッパなど世界18か国から代替法の研究者ら約200名が参加しました。
アジアンコングレスに続き、11月16~18日、日本動物実験代替法学会 第29回大会が福岡・九州大学で開かれました。地方開催であるにもかかわらず、国内外から500名以上の参加者があり、代替法への関心の高さをうかがうことができました。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

<アジアンコングレス>

犬の農薬実験、時代遅れ

唐津での2日間のプログラムは、3Rの原則(以下3R。*1)をめぐるアジア各国の動向、各国の化粧品規制、農薬の動物実験と代替法、血液製剤やワクチンなど生物材料における3R、そしてAOPs(*2)など注目される新たなアプローチなど3Rの将来展望、というように、盛りだくさんの内容で展開されました。
農薬のセッションでは、犬を使った1年間の慢性毒性試験は必要ないという研究結果の報告を受けて、すでに米国、EU、ブラジル、カナダでは法的な義務付けが解除されたこの試験が、日本と韓国ではなぜまだ存続しているのかという問題提起がなされました。この実験は、ビーグル犬に1年間、農薬の混入した餌を食べさせるというもので、除草や昆虫駆除を目的にした成分を1年ものあいだ体内に取り込み続けることの苦しみは想像に難くありません。JAVAは農林水産省に対して再三にわたりこの試験の削除を求めています。

動物実験からの脱却を!

国際的なNGO、Humane Society International(HSI) のトロイ・サイドル氏の講演では、1960年代に確立した動物実験という試験の枠組みが、いまなお使われ続けていることが多くの疾患の治療法の確立を妨げてきたと指摘。これからの時代は、人間への影響を直接調べることのできる、ヒト生物学に基づいたモデルやツールを活用していく新たな枠組みが必要であり、動物愛護という観点を抜きにしても、動物実験という古い枠組みから脱却することが、結果的に人間の保健衛生の向上へとつながる、という力強いプレゼンテーションでした。
HSIは、世界最大の動物保護団体のひとつHSUS(Humane Society of the United States; 全米人道協会)のいわば姉妹団体で、動物保護団体でありながら専門的見地から動物実験の過ちとそれに代わる科学の確立を訴えており、またアジアンコングレスを後援するなど豊富な資金を駆使してこのような国際会議の開催をバックアップしています。

アジア圏での開発競争へ

アジアンコングレスは今後継続していくことが決まり、2018年には中国で、2021年には韓国で開催されることが決定しました。アジア地域が、国際標準となりつつある動物実験の廃止あるいは動物福祉の徹底という考え方をベースに、技術開発で欧米に拮抗する勢力へと成長していくことが期待されます。また、アジア諸国のなかでも、日本は早くからICATM(*3)など国際社会でプレゼンスを高めていました。その主導的地位を追い抜かれないようにするためにも、日本は技術開発そのものはもちろん、制度や予算など充実化が必要だと感じます。

 

  1. *1Replacement(動物を使用しない方法への置換)、Reduction(動物使用数の削減)、Refinement(実験技術の洗練による動物の苦痛軽減)のこと。1954年、動物学者ウィリアム・ラッセルと微生物学者レックス・バーチがUFAW(Universities Federation for Animal Welfare;動物福祉のための大学連合)から人道的な実験について検討するよう依頼を受け、1959年に「人道的実験技術の原則(The Principles of Humane Experimental Technique)」を著し、その中で「3Rの原則」を提唱した。現在さまざまな国際機関で実験技術の基準として採用されている。
  2. *2Adverse Outcome Pathways 個体または群に対する化学物質の暴露から、個体レベルまたは群レベルでの最終的な有害性の発現までの事象の経路を示したもの。(独立行政法人製品評価技術基盤機構「構造活性相関に関する用語集」より)
  3. *3International Cooperation on Alternative Test Methods;代替試験法国際協力会議。化粧品規制国際調和会議(International Cooperation on Cosmetic Regulation;ICCR)において2007年に設置された、動物実験代替法推進に向けた国際間のワーキンググループ。設置時は、日米欧カナダ、その後韓国が加入。

 


 

 

 

 

 

 

<日本動物実験代替法学会第29回大会>

『分子―細胞―個体の視点からの代替法』というテーマのもとに開かれた今大会。化粧品医薬品の代替法の動向、動物福祉をめぐる国内外各業界の動向という定番のセッションに加え、マイクロ流体デバイス技術などを用いた臓器や人体システムの観測という新しい技術展開、産業に応用できる化学物質の初期スクリーニング方法としての代替法技術、iPS細胞を用いた最前線の実用化研究など、単に「動物愛護意識の向上による動物実験の代替」というだけでなく、最先端科学としての動物を使わない技術開発という面が強く打ち出されてきていると感じました。「動物愛護」というと業界のモチベーションにはなかなかつながりにくいものですが、科学的側面、経済的側面からのニーズは、業界を動かす大きな原動力になるのではないでしょうか。
とはいえ、「動物愛護」「動物福祉」という観点は、「動物実験代替法」という研究分野のベースにきっちりと据え置かれなければなりません。JAVAは今後も市民団体としてしっかりとウォッチし、叱咤激励していく必要があると感じています。以下、動物福祉をテーマにしたセッション、「シンポジウム『個体の視点からの代替法』」での発表を中心にレポートします。

シンポジウム

■実験動物にも獣医学的ケアは必須
米国の場合、実験動物施設の第三者認証機関AAALACの認証を受けた研究機関では、動物実験を行う研究者とは別に、獣医師や動物看護師が立ち会い、実験動物の疾病やケガへの対処を行ったり、ときには苦しむ動物を人道的に死に至らせる役割を担っているということです。
こういった獣医学的ケアを含む具体的な「動物福祉」の担保は、日本では動物愛護法第41条で「できる限り(動物に)苦痛を与えない」と規定されているにもかかわらず、まだ日本ではまったくと言っていいほど普及していません。普及していないというどころかむしろ、「研究(動物実験)の過程で獣医にあれこれ口出しされたくない」という研究者(動物実験実施者)の意識が、獣医学的ケアを遅らせている原因ではないかと言われています。事実、動物実験推進派の意向を汲んで作られた文部科学省、厚生労働省、農林水産省の「動物実験の実施に関する指針」には、獣医師や動物看護師を実験に立ち会わせるといった条項は一切ありません。

■モノづくりが動物を救う
化粧品でもなく、医薬品でもない、「医療機器」という、動物実験が行われている分野があります。人工心臓やステントなど循環器系の人工臓器の開発にあたっての実験にはマウスやラットではなく大きな動物、主にヤギが使われています。
国立循環器病研究センター病院に併設された動物実験施設では、人工心臓の実験に年間30〜50頭のヤギが使われているとのことですが、この現場でも、動物を使わない方法の開発が模索されているとの報告がありました。
人工心臓などの医療機器の性能を評価するために開発された、「ラボハート」という心機能シミュレータ。この機械が誕生したことで、その施設で使われている動物数の約10分の1にあたる年間3〜4頭のヤギの犠牲を減らすことができたとのこと。1割弱というこの数字、少なく感じるかもしれません。でも確かに苦しまずにすんだ命があります。
人間を救うだけではなく、実験に使われてきた動物をも救う。このような、まさに「血の通った」モノづくりがもっともっと広がっていくことを心から期待します。
余談ですが、2年前に放映された阿部寛さん主演のTBSテレビドラマ「下町ロケット」の第二部ガウディ編は、人工心臓弁の開発がテーマでした。その随所にこのシミュレータが登場したのを思い出す方もいらっしゃるかもしれません。

■Refinementは究極のゴールではない
長年大会に参加していますが、折に触れて「代替法学会は動物実験が行われることを前提に3Rを普及させようという学術団体。JAVAのように動物実験廃止を訴えるのはなじまない」という批判を受けることがたびたびあります。また、Refinementの措置を行えば動物実験はどんどんやってよいといわんばかりの研究者もいます。もちろん、実験技術を改善することによって動物の苦痛を軽減するRefinement は、動物実験が行われている以上、しっかりと取り入れられていかなければならないことです。国際標準にもなりつつある獣医学的ケアの普及を妨害する動物実験推進団体などには、積極的に改善を求めていかなければなりません。でも見失ってはならないのが、究極のゴールは動物を使わないReplacementであるということです。その究極のゴールに向かう道のりのなかで必要な取り組みの一つがRefinement だと、JAVAは考えています。

ポスター発表

■インパクトより倫理を
和洋女子大学の管理栄養士養成課程に在籍する学生らによるポスター発表「動物実験実習における3R の学生評価と代替法開発の試み」が興味深かったのでレポートします。その内容は:

  1. 栄養生化学実験履修者132名を対象にアンケート調査を行い、3Rの評価と動物解剖模型やシミュレーションソフト(Rat Dissection)による教育効果について調べた。
  2.  また10名を対象として、生きたラットを殺して使う代わりに、ホルマリン代替保存液で処理されたラットの解剖についてアンケート調査を行った。
  3.  実験動物数の削減、動物の苦痛の軽減は「達成できた」「だいたい達成できた」と回答した割合はともに90%を超えた。
  4.  実験の予習としてのシミュレ―ション教材の使用は好評だったが、動物実験の代替法として考えた場合、78%が動物実験の学習効果より劣ると答えた。
  5.  ラットの解剖実験では、10名全員が、保存液処理されたラットでも、殺処分直後のラットの解剖と同等の教育効果が得られると回答。さらに実験参加のストレスが軽減するという意見が多かった。
  6.  3R教育の導入は、動物実験に対する意識と学習意欲を高めた。
  7.  殺処分直後の解剖を苦痛と感じる学生には、シミュレーション教材や保存液処理された動物の使用が実験実習の代替法として有効であると思われた。

発表者の学生いわく「自分たちの学年に、動物の解剖がイヤという声が多かったためシミュレーションの利用を考えた」とのことでした。指導教員によると、「シミュレーションで代替できると思っていたし学生もそう望んでいたが、結果は違った。解剖の知識はシミュレーションで学べても、さきざき栄養士になって栄養指導をすることを考えると、本物(※動物)が必要なところもあると感じた。人体実験は倫理的にできないので、脂肪のつき方などは動物で実物を見るしかない。実物はインパクトが大きく学生の反応が違う。」とのこと。一方、「この研究によって命に対する考えが変わって、ラットを丁寧に扱うようになった」ともお聞きしました。
医学部、薬学部、獣医学部など生命科学系の学部だけでなく、栄養学、家政学などにまつわる課程でも動物実験が行われているという実態があります。そんななか、動物実験代替法学会での研究発表に踏み切ってくれた指導教員と学生たちの存在に勇気づけられます。「解剖はイヤ」という率直な気持ちから始まった倫理的な検討によって、学生たちが動物を丁寧に扱うようになったという変化は、いままでは丁寧ではなかったのかという指摘はさておき、歓迎すべき変化だと思います。一方、動物の犠牲より学生へのインパクトを重視するような考察は残念です。そもそも栄養学は人間のための栄養学であって、ラットではなく、疫学的手法を用いてヒトの画像を比較検討するなどの方法を採用すべきです。ぜひとも次のステップを踏み出されることを期待します。

教育講演

■倫理は時代によって変わる
大会最終日(18日)には、会場となった九州大学大学院の笹栗俊之教授による「人体実験の倫理」と題した教育講演がありました。
戦時中には、ナチス、マンハッタン事件、九州大学生体解剖事件、七三一部隊など、非倫理的と言われる多くの人体実験が行われてきました。ナチス・ドイツの人体実験への反省からニュルンベルク綱領(*4)、ヘルシンキ宣言(*5)を経て、人を対象とした臨床試験についての研究倫理が構築されてきましたが、同氏は、著書『利己的遺伝子(Selfish Gene)』が有名な進化生物学者で動物行動学者であるリチャード・ドーキンスの「動物は苦痛を遮断する能力がない、その能力を与えなかったのだから神はいない」という言葉を引き合いに出し、したがって人間は科学の力でその苦痛を回避しなければならない、と動物実験倫理の必要性を説きました。
宗教の是非論は別として、人間も含めた動物の苦痛を回避しようという試みは、まさに現代の人間に課せられた倫理的課題です。少し前までは公然と行われていた人体実験がいまやだれもが非倫理的だと答えられることを考えると、いずれ動物実験も決して行ってはならない非倫理的なものとなるはずだと確信します。その日が一日も早く訪れるようにするためには、いま動物実験に反対する私たちが声を上げ続けていくことではないでしょうか。

  1. *41947年に、ニュルンベルク裁判の結果として提示された、研究目的の医療行為(臨床試験及び臨床研究)を行うにあたって厳守すべき10項目の基本原則のこと。(Wikipediaより)
  2. *5ナチスの人体実験の反省より生じたニュルンベルク綱領を受けて、1964年6月、フィンランドの首都ヘルシンキにおいて開かれた世界医師会第18回総会で採択された、医学研究者が自らを規制する為に採択された人体実験に対する倫理規範。正式名称は、「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」。(Wikipediaより)

学会からJAVAに感謝状

JAVAは1997年から、日本動物実験代替法学会の賛助会員に登録しています。今回、長年、同学会の運営と3Rの推進と普及に貢献したとして、大会最終日にJAVAに対して感謝状が贈られました。
理事長の代理として感謝状を受け取った事務局長の和崎聖子からは、「当会が市民団体で唯一の賛助会員。今後も、市民団体ならではの協力をさせていただきたい」と挨拶しました。

 

来る11月25日 当会理事が座長を務めて市民講座を行います!
今から予定に入れてぜひご参加ください!

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日本動物実験代替法学会第30回大会
市民公開講座日時:2017年11月25日(土)10:15~12:15
※大会会期は11月23日(木・祝)~25日(土)
会場:大田区産業プラザ(PiO) 〒144-0035東京都大田区南蒲田1-20-20
タイトル:動物実験の1R(代替)を目指して
※大会テーマは「レギュラトリーサイエンスと3Rs」
座長:東さちこ(PEACE代表)、亀倉弘美(JAVA理事)

動物実験の代替を進めるために、行政、アカデミア、マスコミなど各界からパネリストを招いて活発な議論を展開したいと思います。市民公開講座のみ、無料でご参加いただけますのでぜひお越しください。

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