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「獣医師の社会的役割と、その教育の今」シンポに参加

市民公開シンポジウム
「獣医師の社会的役割と、その教育の今」参加報告

【開催概要】
日時:2017年12月9日(土) 13:00~17:30
場所:東京大学弥生講堂 一条ホール
主催:全国大学獣医学関係代表者協議会 (公社)日本獣医学会
共催:(公社)日本獣医師会

【プログラム】
開会挨拶:全国大学獣医学関係代表者協議会会長 稲葉睦
(公社)日本獣医学会理事長 久和茂
(公社)日本獣医師会会長 藏内勇夫

基調講演:「新興感染症―インフルエンザならびにエボラ出血熱―」
東京大学医科学研究所教授/米国ウイスコンシン大学教授 河岡義裕

講演1:「わが国における獣医師の職域:獣医師免許と獣医学」
山口大学共同獣医学部教授 佐藤晃一

講演2:「わが国における獣医学教育改善:国際水準化に向けての現状と課題」
北海道大学大学院獣医学研究院・獣医学部教授/全国大学獣医学関係代表者協議会会長  稲葉睦

講演3:「獣医学実践教育強化の具体と公務員獣医師の確保への課題」
北里大学副学長・獣医学部教授/(特非)獣医系大学間獣医学教育支援機構理事長 髙井伸二 

講演4:「欧米における獣医学教育の現状と認証評価制度」
帯広畜産大学副学長・獣医学研究部門教授 倉園久生

講演5:「将来における獣医師への期待と獣医学教育の在り方」
東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部教授/(公社)日本獣医学会前理事長 中山裕之

パネルディスカッション

閉会挨拶:酪農学園大学理事長・(一社)日本私立獣医科大学協会会長 谷山弘行

JAVAが実験動物の飼養環境や代替法の導入を働きかけている全国大学獣医学関係代表者協議会(以下、協議会)。全国に16ある獣医系大学の教員代表者で構成される組織です。
2017年12月、この協議会が開催した獣医学教育に関するシンポジウムに参加しました。(JAVAの協議会への働きかけについてはこちら

300名ほど入る会場がほぼ満席でした。まず、主催、共催組織の3名からの開会の挨拶では、「2017年は獣医学部新設の問題で獣医学教育についてこれまでになく注目されたけれども、獣医師の役割や獣医学教育について社会にほとんど知られていないことを痛感した。その原因に自分たちがこれまで十分に説明してこなかったということもあって、このようなシンポジウムを開催した」との話がありました。
ここでは、JAVAの活動にも関係する情報が得られた講演1~5とパネルディスカッションについてご報告します。

講演1~5

内容は重複している点が多かったため、講演で得られた情報をまとめて箇条書きします。

<獣医師について>

  • 世間では、「獣医師」というと犬猫のお医者さんというイメージが強いが、産業動物の獣医師もいる。「公務員獣医師」の業務は、食品衛生監視や食肉の衛生検査、動物の伝染病の予防や発生後の鎮圧、野生動物の保護・管理、動物愛護センターでの動物福祉等、多岐にわたる。製薬会社などの企業や研究所で研究職に従事する獣医師も多い。
  • 日本は食肉検査など獣医師の仕事とされている職種が多いため、公務員獣医師や産業動物獣医師が不足している(米国では食肉検査は専門の検査師が行い、獣医師ではない)。
  • 平成26年時点で、日本には約39,000人の獣医師がいる。医師は20万人以上いるので、決して獣医師は多くはない。
  • 日本の獣医師の約25%が公務員獣医師だが、欧米では2~5%しかおらず、多くが臨床獣医師である。そのため、臨床教育に重きが置かれている。
  • 地球環境、野生動物、人と動物の健康といった地球規模の問題を、医師と獣医師が協力して取り組んでいくべきとなっている(One Healthの概念)。

<国内外の獣医学教育システム>

  • 獣医大の起源は1761年に仏・リヨンに家畜治療の大学が設立され、それが世界に波及した。
  • 日本では6年の獣医大学を卒業し、国家試験に合格して獣医師免許を取得できる。
  • 大学によって異なるが、多くの大学では1年間の教養教育課程と5年間の専門教育課程を取り入れている。
  • 諸外国の多くは、獣医大学を卒業すると国家試験なしで獣医師になれる。それは、獣医大学での教育体制を認証機関が厳格に審査し、その機関(大学)に獣医師養成機関として承認を与えているため。
  • 欧州で獣医師になるには、高校卒業後、5年以上(平均5.5年。オランダは6年)の獣医学教育を受ける。米国は、大学や大学院を卒業後、4年間獣医学教育を受け、1年間のインターン実習を受けないと獣医になれない。9年かかる。
  • 日本は欧州の体制と似ているので、欧州の大学が参考になると思われる。
  • OIE(世界動物保健機関)は、「卒業した翌日から、獣医師として活動できる教育を」と言っていて、それを各国が目指している。

<日本の獣医学教育の課題と取り組み>

  • 日本の獣医学教育は国際水準を超えている分野(感染症、公衆衛生、サイエンス、大動物臨床、小動物臨床など)はないと言える。すべての分野ですべての学生が水準を超えるのがまず目標。
  • これまでの日本の臨床実習は見学型だったが、国際水準では、卒業後にすぐ獣医師として何ができるかが重要であるため、参加型臨床実習が必要となった。しかし、獣医師法第17条において、獣医師免許のない者の治療行為が禁じられている。これに対して平成22年6月30日付の農水省の課長通知* によって、各大学がガイドラインを策定し、その条件下なら違法性はないと示した。
  • その条件の中に学生の水準も含まれていて、どの学生でも臨床実習に参加できるわけではない。その学生の水準保証のため、獣医学共用試験を導入し、合格した学生が、スチューデントドクターとして臨床実習に参加できるというシステムとなった。
  • 医歯薬系の学部・学科では10年くらい前から共用試験システムが始まっているが、マンパワー、マネーパワーが全く違っている。日本の獣医学部は欧米と比べて教員の数が圧倒的に少ない。また、十分な大動物の診療の場を持っていない大学があるなど困難な現状もある。
  • 米国では獣医大学1校につき教員は100名以上いるのに対して日本はその半分かそれ以下。ウィーン獣医大学は国内唯一の獣医大学で学生が2,000人以上、教員は1,000人以上。種別の病院があり、魚の病院も。スキルアップ用のマネキンなどが置いてある部屋があり、学生は暇さえあればそこで練習する。
  • 近隣の獣医大学同士が協力して、教員・学生を行き来させて実習を合同で行ったりしている(例:北大と帯広畜産大、山口大と鹿児島大など。小動物の患者が多い北大と大動物の患者が多い帯広畜産大が協力して、不足を補って実習を実施)。農業共済や地域病院との連携も不可欠(北里大学では地域病院とのネットワークづくりをしている)。
  • さまざまな支援を受けて、2017年より共用試験を15大学で実施(残る日本大学は2018年より参加)。836人中831人合格。
  • 学生に臨床実習をさせることになるため、付属病院には飼い主に向けて、学生の参加への理解を求める貼り紙を掲示している。
  • 欧米の獣医大学には、EAEVE(欧州獣医教育機関協議会)とAVMA(米国獣医師会)などによる教育評価が行われている(オーストラリア・ニュージーランド、韓国にもある)。日本では平成29年度から、(公財)大学基準協会による教育評価と認定をスタートさせている。

* 農林水産省消費・安全局 畜水産安全管理課長告示「獣医学生の臨床実習における獣医師法第17条の適用について」(22消安第1514号)

パネルディスカッション

会場からの質問を受ける形で行われ、6名から質問がありました。
JAVAも、「国際水準について講演でお話があったが、欧米の大学のように生きた動物を犠牲にすることなく、代替法と臨床実習で卒業できる日本の大学はあるか?」「代替法の導入の状況や今後の計画を教えてほしい」の2点を質問しました。
協議会会長の稲葉氏から、「参加型実習の充実は動物の犠牲を減らすこととまさに表裏一体。動物の犠牲を減らすことは当然。今、このために全国の大学で取り組んでいるので理解いただきたい。そしてこの回答でもって、1つめの質問への回答にもさせてもらいたい」と回答がありました。

また、JAVAと化粧品の動物実験や動物愛護法改正の活動などで連携しているPEACEの東さちこ代表が「加計学園の問題で動物を使った実習のことが取り上げられていたが、動物実験削減のためにどのような取り組みをされているか?」といった質問をされ、それに対し中山氏からは「生きた動物を使った実習をなくしていこうということは協議会・教員の共通認識」という発言がありました。

講演の内容や質問への回答からも、日本の獣医学教育の関係者の意識やシステムが変わりつつあるのを感じました。しかし、欧米のように生きた動物を犠牲にせずに卒業できる大学ができるまでの道のりは遠いとも感じます。
全国大学獣医学関係代表者協議会がJAVAからの要望書に対し「検討委員会を設置し、代替法導入の方針と具体策検討を進める」と回答していますが、現時点ではまだこの委員会は起動していない模様です。いち早く行動に移し、できるところからでも1つ1つ代替法に切り替えていくことが重要と考えます。そのために私たちも働きかけを続けていかなくてはなりません。

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