JAVA:NPO法人 動物実験の廃止を求める会(Japan Anti-Vivisection Association)

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お知らせ

JAVAの最新情報をお知らせするコーナーです。進行中の活動、パネル展やイベントなどのご案内、これまでの活動・成果などをご紹介していきます。

<米国>小児科医研修における動物使用が廃止

2017年2月20日

<米国>小児科医研修プログラムにおける動物の使用が廃止される

PCRMの調べによると、米国にある198のすべての小児科医研修プログラムは、動物を使用せずにヒト(モデル)などを使用する教育方法のみを採用している。最後まで動物を使用していたワシントン大学も今や、生きたネコとフェレットの使用を廃止するに至ったのである。これは数年間に及ぶPCRMの職員、会員、医師、支持者などによる努力の結果である。
2016年10月14日、ワシントン大学小児科長のゲイリー・シルヴァーマン博士はPCRMの質問に対して書面で答えた。「私たちは動物の使用をやめ、ネコたちの“里親”を探している」。これまで医療実習生たちは、気管内挿管の訓練として、生きたネコとフェレットの喉に無理やり呼吸管を押し込むことを指導されていたのである。
一方カナダにある17の小児科専門医育成コースのうち、動物を使用しているのはラヴァル大学のみとなった。PCRMは、同大学の学長ドゥニ・ブリエール博士にこのニュースを書面で伝え、廃止を促した。

Animal Use Ends at All U.S. Pediatrics Training Programs(P13)
Good Medicine Winter 2017 Vol.XXVI, No.1by Physicians Committee for Responsible Medicine

<中国>バイオ病原体研究施設

2017年2月1日

<中国>中国で承認待ちのバイオ病原体研究施設

学術誌「Nature」2017年2月号によると、中国ではバイオセーフティーレベル4(BSL-4)に指定される研究施設が間もなく操業を開始する。バイオセーフティーレベルは1~4まであり、BSL-4はSARSやエボラ出血熱といった最も危険な病原体を扱う。中国では2025年までにBSL-4研究施設を5~7つ設立する予定であり、その中には霊長類を扱う施設も含まれている。既に研究に使うための何万頭もの霊長類を収容していることや、欧米諸国より規制が少ないことから、近年では海外のウイルス研究者などの、中国で動物実験を行うことへの関心が高まっている。
致死性のある病原体の迅速同定の研究は、動物の苦しみを伴う。中国は動物の福祉についての法律が緩い、もしくは存在しない国であるため、動物を扱うBSL-4研究施設を設置することに不安がある。米国にはBSL-4研究施設がいくつかあり、霊長類は動物福祉法により守られているが、BSL-4で行われる実験は非常に侵襲的である。

AV Magazine 2017/Number 1
(American Anti-Vivisection Society)

<クロアチア>45匹のチンチラ救出!

2017年1月31日

<クロアチア>45匹のチンチラが救出される!

クロアチアの動物保護団体アニマル フレンズ クロアチア (AFC)は、クロアチアのウサギと野ウサギのシェルターMrkvicaの協力を得て、45匹のチンチラを救助することに成功した。2017年1月1日にクロアチアでの毛皮農場廃止が実行された後、生産者がAFCの訴えに耳を傾け、チンチラをシェルターに移すことに合意した。45匹のチンチラはワイヤーのケージから自由になり、毛皮にされる恐怖からも解放されて、心優しい人々に引き取られることになった。
スロベニア、クロアチアを発端に、ボスニア・ヘルツェゴビナやセルビアでも、毛皮農場禁止法を制定するよう、動き始めている。

クロアチアのチンチラ

©Animal Friends Croatia

AnimaList No.148-149
(Animal Friends Croatia)

 

 

2016年の活動をまとめました

2017年1月27日

2017年も動物たちのために尽力してまいります。
どうぞ皆さまの力をお貸しくださいますよう、お願い申し上げます。

2016年のまとめとして、1年間の活動を「活動年表」のページにまとめました。
JAVAの取り組みを知っていただければ幸いです。

<米国>妊娠した雌馬の苦悩

2017年1月20日

<米国>妊娠した雌馬の苦悩

ファイザー社(本社米国)は未だに75年も前の方法で、子宮体癌、乳癌、心臓病、卒中などを引き起こすリスクがある更年期障害緩和の薬を製造している。1940年代初期にホルモン補充療法薬として承認されたプレマリンは、妊娠した雌馬の尿(PMU)から採取された結合型エストロゲン(CEE)から作られる。

PMUの採取は秋と冬に行われる。雌馬は、11ヶ月の妊娠期間のうちの6ヶ月間は、床がコンクリートの狭いタイストールと呼ばれる「つなぎ飼い畜舎」に閉じ込められ、馬房にくくりつけられたままである。尿を採取するため紐やホルスターで尿道口を覆う道具がはめ込まれ、ほとんど動くことができない。また、固い床に立ちっぱなしのため慢性の関節炎を患うことも多い。雌馬は毎年妊娠させられ、妊娠力が落ちると食肉にされるのである。子馬の多くも同じ運命に苦しむことになる。PMU採取の業界では、馬の福祉を確保するための監視はほとんどない。

2015年に行われた、AAVS(アメリカ動物実験反対協会)とFaunalytics(米国の非営利研究機関で、動物を守る人々に有益な情報を提供しサポートしている。)の調査では、医者は、子宮体癌の危険性を高めるCEEを含まないホルモン補充薬があることを患者に伝えるべきだと、86%の米国人が考えていることが明らかになった。それにもかかわらず、ファイザー社は、以前とは異なる販売活動をしたり、新しい薬品名をつけたり、主原料の表示をあいまいにしたりして、プレマリン系薬品を再び売り込んでいる。

PMU採取を行う会社の中には、透明性も動物を守る法律もない中国に移ったものもある。

PMU採取事業は需要に左右される。したがって、一般の人々や医療関係者が、PMU採取が残酷な方法で行われることや代替の薬品が利用できることを認識することが重要である。そして、このような残酷な行為に多くの消費者が反対の声をあげる時が、この旧態依然とした業界の命運が尽きる時なのである。

妊娠馬の悲劇

Jim Craner/Equine Adovocates

妊娠していたバーバラとフィオーナは2004年、カナダのマニトバ州のPMU牧場から助け出された。バーバラは馬のサンクチュアリー「Equine Advocates」で幸せに暮らしているが、フィオーナは、以前に受けた虐待による足の痛みや呼吸器障害のため何年も苦しんだ後、2015年に死亡した。

 

Pregnant Mares’ Urine(p16-17)
AV magazine 2016/Number 3 by The American Anti-Vivisection Society

<オランダ>動物実験の段階的廃止へ

2017年1月18日

<オランダ>動物実験の段階的廃止へ

2025年までにすべての動物実験を禁止することを最終目標に、霊長類の実験を段階的に無くしていくという議案が2016年12月、オランダの国会で承認された。動物実験に反対する国際団体IAAPEAは何年にもわたりこのための働きかけを行ってきた。オランダにおける動物実験反対の世論は高まっている。世界で初めて動物の権利擁護を明確に掲げて発足した政党「アニマルライツ党」が、政治において、NGOや民間からの多大な支持を得て影響力のある存在となってきている。

International Animal Action Magazine/Summer 2017
(International Association Against Painful Experiments on Animals)

<米国>リングリング・ブラザーズ・サーカス団 永久閉鎖 

2017年1月15日

<米国>特報:リングリング・ブラザーズ・サーカス団
永久に閉鎖される
動物たちにとっての大いなる勝利

リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカス(以下、リングリング・ブラザーズ)の親会社であるフェルド・エンターテインメントCEOのケネス・フェルドは、「2017年5月7日をもって、ショーを止めることを決定した」と発表した。

虐待や虐待による死亡は後を絶たなかった

リングリング・ブラザーズは以前より動物の福祉に問題があり、ここ数年はそれによる非難を受けていた。
残虐なトレーニングを動物に行っており、ゾウを従わせるために先が鋭くとがった大型フックを使用するなどしていた。そのため、数頭の赤ちゃんゾウが死亡している。2004年には若いライオンがうだるほどの暑さの車両内に水もない状態で放置され、死亡した。サーカス会場の裏の駐車場に置かれた狭い檻に入れられていたトラたちは、頻繁に喧嘩をしていた。
また、銃によるひどい怪我をしたゾウをサーカスから引退させるよう要望があったにもかかわらず、再び無理やりそのゾウをショーに使用した。これらは虐待のほんの一例であることを示す証拠として、このサーカス団は、1993年以降、米国農務省から50件以上もの動物福祉の問題に関して注意を受けていた。

リングリングブラザーズサーカスのゾウ

Sam Haddock (courtesy of PETA)
リングリング・ブラザーズのゾウ管理センターで「訓練」を受けさせられている子ゾウ

ゾウのショーは中止へ

残酷なトレーニングへの反発が市民の間で高まったため、2015年、リングリング・ブラザーズは、ゾウのショーを段階的に中止すると発表し、2016年5月が最後のショーとなった。

本当の解放につながるのか?

しかし、まだ動物の今後の生活には不安がつきまとう。リングリング・ブラザーズから引退したゾウたちは、信頼のおける保護施設ではなく、このサーカス本部の繁殖目的や虐待が疑われる訓練プログラムのあるフロリダゾウ保護センターへ移送される予定になっている。やっとサーカスからゾウたちを自由にさせた市民は、この決定に異議を唱えている。

25年の経験を持つアニマルトレーナーのジェイ・プラットは「リングリング・ブラザーズはトラの心身のケアをせず、精神的虐待、さらに支配的立場と動物の恐怖心を巧みに利用し、トラを操っていた」と言っている。ゾウと同じようにトラもまた虐待によってコントロールされていたのである。

リングリング・ブラザーズサーカスのトラ

Jay Pratte リング場でのトラ

 
今のところは、とにかく動物たちはやっと休息を得ることができた。最後の幕が下りた後、何が彼らに起こるか不明なところもあるが、道路脇に設置された動物園やサーカスと似たような状況に置かれている、多くのとらわれた野生動物たちにとって大きな変化の先触れである。

 

BREKING:Ringling Bros. Circus Will Shut Down Forever

<クロアチア>2017年1月1日、毛皮用チンチラ農場禁止に

決定から10年
クロアチアの毛皮用チンチラ農場禁止法がようやく施行へ

クロアチア・チンチラ農場

JAVAも加盟している毛皮に反対する国際連盟FFA(Fur Free Alliance)のクロアチアのメンバー団体、アニマル・フレンズ・クロアチアから、2017年を迎えてすぐ、グッドニュースが届きました。

クロアチアでは、2006年に毛皮用のチンチラ農場の禁止が法律で決まりましたが、10年間の長期にわたる移行期間の末やっと、この2017年1月1日からその法律が施行されたのです!

FFA(Fur Free Alliance)の関連ページ(英語)

アニマル・フレンズ・クロアチアの関連ページ(英語)

動物実験代替法の国際会議と学会大会

アジア初の代替法国際会議「Asian Congress 2016」と「日本動物実験代替法学会第29回大会」が合同開催

動物実験代替法に関するアジア地域の国際会議、アジアンコングレス(Asian Congress 2016 on Alternatives and Animal Use in the Life Sciences)。初大会となる今回は、日本動物実験代替法学会第29回大会と合同で、11月15~18日、佐賀県唐津市および福岡・九州大学にて開催されました。前半の唐津開催だけで、韓国、中国、タイ、インドネシア、インドなどのアジア諸国のほか、米国、カナダ、ヨーロッパなど世界18か国から代替法の研究者ら約200名が参加しました。
アジアンコングレスに続き、11月16~18日、日本動物実験代替法学会 第29回大会が福岡・九州大学で開かれました。地方開催であるにもかかわらず、国内外から500名以上の参加者があり、代替法への関心の高さをうかがうことができました。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

<アジアンコングレス>

犬の農薬実験、時代遅れ

唐津での2日間のプログラムは、3Rの原則(以下3R。*1)をめぐるアジア各国の動向、各国の化粧品規制、農薬の動物実験と代替法、血液製剤やワクチンなど生物材料における3R、そしてAOPs(*2)など注目される新たなアプローチなど3Rの将来展望、というように、盛りだくさんの内容で展開されました。
農薬のセッションでは、犬を使った1年間の慢性毒性試験は必要ないという研究結果の報告を受けて、すでに米国、EU、ブラジル、カナダでは法的な義務付けが解除されたこの試験が、日本と韓国ではなぜまだ存続しているのかという問題提起がなされました。この実験は、ビーグル犬に1年間、農薬の混入した餌を食べさせるというもので、除草や昆虫駆除を目的にした成分を1年ものあいだ体内に取り込み続けることの苦しみは想像に難くありません。JAVAは農林水産省に対して再三にわたりこの試験の削除を求めています。

動物実験からの脱却を!

国際的なNGO、Humane Society International(HSI) のトロイ・サイドル氏の講演では、1960年代に確立した動物実験という試験の枠組みが、いまなお使われ続けていることが多くの疾患の治療法の確立を妨げてきたと指摘。これからの時代は、人間への影響を直接調べることのできる、ヒト生物学に基づいたモデルやツールを活用していく新たな枠組みが必要であり、動物愛護という観点を抜きにしても、動物実験という古い枠組みから脱却することが、結果的に人間の保健衛生の向上へとつながる、という力強いプレゼンテーションでした。
HSIは、世界最大の動物保護団体のひとつHSUS(Humane Society of the United States; 全米人道協会)のいわば姉妹団体で、動物保護団体でありながら専門的見地から動物実験の過ちとそれに代わる科学の確立を訴えており、またアジアンコングレスを後援するなど豊富な資金を駆使してこのような国際会議の開催をバックアップしています。

アジア圏での開発競争へ

アジアンコングレスは今後継続していくことが決まり、2018年には中国で、2021年には韓国で開催されることが決定しました。アジア地域が、国際標準となりつつある動物実験の廃止あるいは動物福祉の徹底という考え方をベースに、技術開発で欧米に拮抗する勢力へと成長していくことが期待されます。また、アジア諸国のなかでも、日本は早くからICATM(*3)など国際社会でプレゼンスを高めていました。その主導的地位を追い抜かれないようにするためにも、日本は技術開発そのものはもちろん、制度や予算など充実化が必要だと感じます。

 

  1. *1Replacement(動物を使用しない方法への置換)、Reduction(動物使用数の削減)、Refinement(実験技術の洗練による動物の苦痛軽減)のこと。1954年、動物学者ウィリアム・ラッセルと微生物学者レックス・バーチがUFAW(Universities Federation for Animal Welfare;動物福祉のための大学連合)から人道的な実験について検討するよう依頼を受け、1959年に「人道的実験技術の原則(The Principles of Humane Experimental Technique)」を著し、その中で「3Rの原則」を提唱した。現在さまざまな国際機関で実験技術の基準として採用されている。
  2. *2Adverse Outcome Pathways 個体または群に対する化学物質の暴露から、個体レベルまたは群レベルでの最終的な有害性の発現までの事象の経路を示したもの。(独立行政法人製品評価技術基盤機構「構造活性相関に関する用語集」より)
  3. *3International Cooperation on Alternative Test Methods;代替試験法国際協力会議。化粧品規制国際調和会議(International Cooperation on Cosmetic Regulation;ICCR)において2007年に設置された、動物実験代替法推進に向けた国際間のワーキンググループ。設置時は、日米欧カナダ、その後韓国が加入。

 


 

 

 

 

 

 

<日本動物実験代替法学会第29回大会>

『分子―細胞―個体の視点からの代替法』というテーマのもとに開かれた今大会。化粧品医薬品の代替法の動向、動物福祉をめぐる国内外各業界の動向という定番のセッションに加え、マイクロ流体デバイス技術などを用いた臓器や人体システムの観測という新しい技術展開、産業に応用できる化学物質の初期スクリーニング方法としての代替法技術、iPS細胞を用いた最前線の実用化研究など、単に「動物愛護意識の向上による動物実験の代替」というだけでなく、最先端科学としての動物を使わない技術開発という面が強く打ち出されてきていると感じました。「動物愛護」というと業界のモチベーションにはなかなかつながりにくいものですが、科学的側面、経済的側面からのニーズは、業界を動かす大きな原動力になるのではないでしょうか。
とはいえ、「動物愛護」「動物福祉」という観点は、「動物実験代替法」という研究分野のベースにきっちりと据え置かれなければなりません。JAVAは今後も市民団体としてしっかりとウォッチし、叱咤激励していく必要があると感じています。以下、動物福祉をテーマにしたセッション、「シンポジウム『個体の視点からの代替法』」での発表を中心にレポートします。

シンポジウム

■実験動物にも獣医学的ケアは必須
米国の場合、実験動物施設の第三者認証機関AAALACの認証を受けた研究機関では、動物実験を行う研究者とは別に、獣医師や動物看護師が立ち会い、実験動物の疾病やケガへの対処を行ったり、ときには苦しむ動物を人道的に死に至らせる役割を担っているということです。
こういった獣医学的ケアを含む具体的な「動物福祉」の担保は、日本では動物愛護法第41条で「できる限り(動物に)苦痛を与えない」と規定されているにもかかわらず、まだ日本ではまったくと言っていいほど普及していません。普及していないというどころかむしろ、「研究(動物実験)の過程で獣医にあれこれ口出しされたくない」という研究者(動物実験実施者)の意識が、獣医学的ケアを遅らせている原因ではないかと言われています。事実、動物実験推進派の意向を汲んで作られた文部科学省、厚生労働省、農林水産省の「動物実験の実施に関する指針」には、獣医師や動物看護師を実験に立ち会わせるといった条項は一切ありません。

■モノづくりが動物を救う
化粧品でもなく、医薬品でもない、「医療機器」という、動物実験が行われている分野があります。人工心臓やステントなど循環器系の人工臓器の開発にあたっての実験にはマウスやラットではなく大きな動物、主にヤギが使われています。
国立循環器病研究センター病院に併設された動物実験施設では、人工心臓の実験に年間30〜50頭のヤギが使われているとのことですが、この現場でも、動物を使わない方法の開発が模索されているとの報告がありました。
人工心臓などの医療機器の性能を評価するために開発された、「ラボハート」という心機能シミュレータ。この機械が誕生したことで、その施設で使われている動物数の約10分の1にあたる年間3〜4頭のヤギの犠牲を減らすことができたとのこと。1割弱というこの数字、少なく感じるかもしれません。でも確かに苦しまずにすんだ命があります。
人間を救うだけではなく、実験に使われてきた動物をも救う。このような、まさに「血の通った」モノづくりがもっともっと広がっていくことを心から期待します。
余談ですが、2年前に放映された阿部寛さん主演のTBSテレビドラマ「下町ロケット」の第二部ガウディ編は、人工心臓弁の開発がテーマでした。その随所にこのシミュレータが登場したのを思い出す方もいらっしゃるかもしれません。

■Refinementは究極のゴールではない
長年大会に参加していますが、折に触れて「代替法学会は動物実験が行われることを前提に3Rを普及させようという学術団体。JAVAのように動物実験廃止を訴えるのはなじまない」という批判を受けることがたびたびあります。また、Refinementの措置を行えば動物実験はどんどんやってよいといわんばかりの研究者もいます。もちろん、実験技術を改善することによって動物の苦痛を軽減するRefinement は、動物実験が行われている以上、しっかりと取り入れられていかなければならないことです。国際標準にもなりつつある獣医学的ケアの普及を妨害する動物実験推進団体などには、積極的に改善を求めていかなければなりません。でも見失ってはならないのが、究極のゴールは動物を使わないReplacementであるということです。その究極のゴールに向かう道のりのなかで必要な取り組みの一つがRefinement だと、JAVAは考えています。

ポスター発表

■インパクトより倫理を
和洋女子大学の管理栄養士養成課程に在籍する学生らによるポスター発表「動物実験実習における3R の学生評価と代替法開発の試み」が興味深かったのでレポートします。その内容は:

  1. 栄養生化学実験履修者132名を対象にアンケート調査を行い、3Rの評価と動物解剖模型やシミュレーションソフト(Rat Dissection)による教育効果について調べた。
  2.  また10名を対象として、生きたラットを殺して使う代わりに、ホルマリン代替保存液で処理されたラットの解剖についてアンケート調査を行った。
  3.  実験動物数の削減、動物の苦痛の軽減は「達成できた」「だいたい達成できた」と回答した割合はともに90%を超えた。
  4.  実験の予習としてのシミュレ―ション教材の使用は好評だったが、動物実験の代替法として考えた場合、78%が動物実験の学習効果より劣ると答えた。
  5.  ラットの解剖実験では、10名全員が、保存液処理されたラットでも、殺処分直後のラットの解剖と同等の教育効果が得られると回答。さらに実験参加のストレスが軽減するという意見が多かった。
  6.  3R教育の導入は、動物実験に対する意識と学習意欲を高めた。
  7.  殺処分直後の解剖を苦痛と感じる学生には、シミュレーション教材や保存液処理された動物の使用が実験実習の代替法として有効であると思われた。

発表者の学生いわく「自分たちの学年に、動物の解剖がイヤという声が多かったためシミュレーションの利用を考えた」とのことでした。指導教員によると、「シミュレーションで代替できると思っていたし学生もそう望んでいたが、結果は違った。解剖の知識はシミュレーションで学べても、さきざき栄養士になって栄養指導をすることを考えると、本物(※動物)が必要なところもあると感じた。人体実験は倫理的にできないので、脂肪のつき方などは動物で実物を見るしかない。実物はインパクトが大きく学生の反応が違う。」とのこと。一方、「この研究によって命に対する考えが変わって、ラットを丁寧に扱うようになった」ともお聞きしました。
医学部、薬学部、獣医学部など生命科学系の学部だけでなく、栄養学、家政学などにまつわる課程でも動物実験が行われているという実態があります。そんななか、動物実験代替法学会での研究発表に踏み切ってくれた指導教員と学生たちの存在に勇気づけられます。「解剖はイヤ」という率直な気持ちから始まった倫理的な検討によって、学生たちが動物を丁寧に扱うようになったという変化は、いままでは丁寧ではなかったのかという指摘はさておき、歓迎すべき変化だと思います。一方、動物の犠牲より学生へのインパクトを重視するような考察は残念です。そもそも栄養学は人間のための栄養学であって、ラットではなく、疫学的手法を用いてヒトの画像を比較検討するなどの方法を採用すべきです。ぜひとも次のステップを踏み出されることを期待します。

教育講演

■倫理は時代によって変わる
大会最終日(18日)には、会場となった九州大学大学院の笹栗俊之教授による「人体実験の倫理」と題した教育講演がありました。
戦時中には、ナチス、マンハッタン事件、九州大学生体解剖事件、七三一部隊など、非倫理的と言われる多くの人体実験が行われてきました。ナチス・ドイツの人体実験への反省からニュルンベルク綱領(*4)、ヘルシンキ宣言(*5)を経て、人を対象とした臨床試験についての研究倫理が構築されてきましたが、同氏は、著書『利己的遺伝子(Selfish Gene)』が有名な進化生物学者で動物行動学者であるリチャード・ドーキンスの「動物は苦痛を遮断する能力がない、その能力を与えなかったのだから神はいない」という言葉を引き合いに出し、したがって人間は科学の力でその苦痛を回避しなければならない、と動物実験倫理の必要性を説きました。
宗教の是非論は別として、人間も含めた動物の苦痛を回避しようという試みは、まさに現代の人間に課せられた倫理的課題です。少し前までは公然と行われていた人体実験がいまやだれもが非倫理的だと答えられることを考えると、いずれ動物実験も決して行ってはならない非倫理的なものとなるはずだと確信します。その日が一日も早く訪れるようにするためには、いま動物実験に反対する私たちが声を上げ続けていくことではないでしょうか。

  1. *41947年に、ニュルンベルク裁判の結果として提示された、研究目的の医療行為(臨床試験及び臨床研究)を行うにあたって厳守すべき10項目の基本原則のこと。(Wikipediaより)
  2. *5ナチスの人体実験の反省より生じたニュルンベルク綱領を受けて、1964年6月、フィンランドの首都ヘルシンキにおいて開かれた世界医師会第18回総会で採択された、医学研究者が自らを規制する為に採択された人体実験に対する倫理規範。正式名称は、「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」。(Wikipediaより)

学会からJAVAに感謝状

JAVAは1997年から、日本動物実験代替法学会の賛助会員に登録しています。今回、長年、同学会の運営と3Rの推進と普及に貢献したとして、大会最終日にJAVAに対して感謝状が贈られました。
理事長の代理として感謝状を受け取った事務局長の和崎聖子からは、「当会が市民団体で唯一の賛助会員。今後も、市民団体ならではの協力をさせていただきたい」と挨拶しました。

 

来る11月25日 当会理事が座長を務めて市民講座を行います!
今から予定に入れてぜひご参加ください!

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日本動物実験代替法学会第30回大会
市民公開講座日時:2017年11月25日(土)10:15~12:15
※大会会期は11月23日(木・祝)~25日(土)
会場:大田区産業プラザ(PiO) 〒144-0035東京都大田区南蒲田1-20-20
タイトル:動物実験の1R(代替)を目指して
※大会テーマは「レギュラトリーサイエンスと3Rs」
座長:東さちこ(PEACE代表)、亀倉弘美(JAVA理事)

動物実験の代替を進めるために、行政、アカデミア、マスコミなど各界からパネリストを招いて活発な議論を展開したいと思います。市民公開講座のみ、無料でご参加いただけますのでぜひお越しください。

JAVA、代替法研究費を助成

JAVA、初のアジア大会で代替法研究費を助成
韓国の若手研究者に

アジアンコングレス2016において、JAVAは若手研究者の代替法研究に15万円を助成しました。
選考の末、この「JAVA賞」を受賞したのは、韓国・ソウル大学校薬科大学のSae on KIMさんのグループ。
化粧品などのパーソナルケア用品では、アレルギーを引き起こす可能性があるかどうかのテスト(皮膚感作性試験)が行われていますが、この分野では、従来の動物実験のほか、代替法として採用されているのが、動物の苦痛軽減というRefinementに基づいた試験法であり、この試験では結局のところモルモットなど動物が使われています。
KIMさんらの研究では、動物をいっさい使わずに、ヒトの不死化角化細胞であるHaCaT ケラチノサイトを用いたアプローチを行っています。
新しい代替法の開発といっても、一朝一夕にできるものではありません。多くの時間とお金がかかります。動物実験の廃止への一助となるよう、JAVAもできる限りの研究支援を行っていきたいと考えています。

 

▼助成した研究プロジェクトの詳細▼

HaCaT ケラチノサイトにおける皮膚感作性試験代替法
生物指標としての血管内皮増殖因子(VEGF)の予備的評価
Sae on KIM

 化粧品に警告表示や安全に使用するための注意書きがあるのはなぜか、疑問に思ったことはありませんか。化粧品などには、私たちの体にとって異物となる化学物質が含まれており、その多くは、肌に触れるとアレルギー反応を誘発する可能性があるからです。化粧品や歯磨き粉、石鹸などのパーソナルケア商品に含まれる金属成分によって発疹が出る人がいることはご存じだと思います。あるいは、特定のメイクアップ用品をつけた時だけかゆみを感じたり、つけた部分が熱を持ったりした経験のある方もいるでしょう。これらは、皮膚感作性と呼ばれる症状の代表的な例です。

 皮膚感作性とは、特定の化学アレルゲン(アレルギー誘発物質)に繰り返し触れることで起きるアレルギー反応の一種で、化粧品、日焼け止め剤、家庭用品などの原材料に含まれる物質によって引き起こされることがあります。上記の商品に用いられている化学物質の多くは、使用量やそれに触れる度合い等にもよりますが、なんらかのアレルギー反応を誘発する可能性があります。アレルギー反応が起きるまでには、 感作相(かんさそう)(誘導相とも呼ばれます)と惹起相(じゃっきそう)のふたつの過程があります。感作相では、初めて化学アレルゲンと接触することで増感し、体に免疫記憶が形成されます。2番目の惹起相では、前に触れたことのある化学物質に再び触れることで、アレルギー性過敏症反応が誘発されます。

 『化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS) 』によると、皮膚感作物質の定義は、「臨床試験により、接触によるアレルギー反応誘発の可能性が証明できるもの」となっています。しかし、化学物質の皮膚感作性の有無を確認するために、動物実験が頻繁に行われています。潜在的な皮膚感作性を見極める方法として推奨され、実際に行われている方法として、局所リンパ節試験(LLNA)とモルモットマキシマイゼーション法(GPMT)があり、それぞれマウスとモルモットを使用します。動物への苦痛が軽減されてきているとはいえ、生体実験(in vivo)であることに変わりはありません。

 私たちが研究している新しい皮膚感作性試験の代替法では、物質が生体にもたらすメカニズム(作用機序)に着眼し、血管内皮増殖因子(VEGF)を生物指標(バイオマーカー)としました。血管内皮増殖因子(VEGF)は、血管形成とリンパ管形成を調整する働きがあり、サイトカイン・ネットワークのインターロイキン-8(IL-8)に関係していることが分かっています。インターロイキン-8(IL-8)は、多様な免疫細胞によって作られるケモカインで、化学物質の潜在的な皮膚感作性を調べるための試験、インターロイキン-8ルシフェラーゼアッセイで使用されています。私たちは、16の代表的な化学感作物質が、正常ヒト初代表皮細胞(NHK)内における血管内皮増殖因子(VEGF)とインターロイキン-8(IL-8)の発現にどう作用するかを調べました。そして、16の化学感作物質のうち14が、正常ヒト初代表皮細胞(NHK)内の血管内皮増殖因子(VEGF)またはインターロイキン-8(IL-8)、あるいはその両方の値を著しく増加させることを発見しました。しかし、皮膚感作性の検証に、正常ヒト初代表皮細胞(NHK)を使用する方法には、限界があります。外的刺激や毒性刺激が異なると、正常ヒト初代表皮細胞(NHK)の生物学反応も変化するからです。この変化は、予備試験用に表皮組織を提供してくれたボランティアの人たち生物学的反応の違いからくるものです。 

 この可変性を補うため、正常ヒト初代表皮細胞(NHK)の代わりに、不死化角化細胞のHaCaT細胞を使えないか調べてみました。綿密に調べた結果、HaCaT細胞が、皮膚感作性が疑われる物質と刺激物に反応し、血管内皮増殖因子(VEGF)またはインターロイキン-8(IL-8)、あるいはその両方を作り出す事実を発見しました。皮膚感作性が疑われる物質と刺激物は、報告書や文献、『OECDテストガイドライン429』、欧州式光貼付試験をもとに選びました。HaCaT ケラチノサイト内で誘発した血管内皮増殖因子(VEGF)は少なかったものの、局所リンパ節試験では陰性だったヒト感作性物質の塩化ニッケルが、血管内皮増殖因子(VEGF)とインターロイキン-8(IL-8)の発現を大きく変化させました。

 この研究により、血管内皮増殖因子(VEGF)とインターロイキン-8(IL-8)が、細胞を基盤としたモデルにおいて、化学物質が持つ潜在的な皮膚感作性の評価に、生物指標として使用できることが分かりました。私たちの研究が、科学分野の研究で使用される動物たちの苦痛の軽減(Refinement)、使用数の削減(Reduction)、そして代替法の採用(Replacement)の必要性に対する意識を高める一助になることを希望するとともに、私たちが手本を示すことで、皮膚感作性試験に、より多くの代替法が採用されることを願っています。

JAVA賞・発表スライド

発表スライドより


Preliminary Evaluation of Vascular Endothelial Growth Factor as a Biomarker for Alternative Skin Sensitization Test in HaCaT Keratinocytes
Sae on KIM

 Have you ever wondered why consumer products are provided with warning labels and directions for safe use? Chances are that many of the foreign chemicals found in such items are capable of inducing an allergic reaction upon skin contact. Perhaps, you have noticed that some individuals develop rashes from metals found in personal care products, or have experienced itching and burning sensation after applying certain types of makeup. These represent some common examples of what is known specifically as skin sensitization.
 Skin sensitization is a type of allergic response that results as of repeated exposure to a particular chemical allergen, and can be induced by substances found as ingredients of cosmetics, sunscreens, household products, and more. Depending on the dose and extent of dermal exposure, many of the chemicals in use have, to some degree, the potential to induce an allergic reaction. The events leading up to this process occur in 2 phases, and comprises of sensitization (also referred to as induction) and elicitation. In the first phase, the initial contact with a chemical allergen generates a sensitization process, in which the individual develops immunological memory. Following, in the second phase, an allergic hypersensitivity response is elicited upon re-exposure to the same chemical sensitizer.
 The Globally Harmonized System for Classification and Labeling of Chemicals (GHS) defines a substance as a skin sensitizer if there is clinical evidence indicating that it has the potential to cause an allergic response upon contact. Frequently, however, the method used to evaluate a chemical’s skin sensitization potential involves animal testing. Examples of some preferred and accepted methods for the assessment of skin sensitization potential include the Local Lymph Node Assay (LLNA) and Guinea Pig Maximization Test (GPMT), which involve the use of mice and guinea pigs, respectively. Although the assays have been refined to minimize harm to animals, they are still performed under in vivo conditions.
 The main objective of our research was to discover a novel mechanism-based alternative method for testing skin sensitization using vascular endothelial growth factor (VEGF) as a biomarker. VEGF is involved in the regulation of angiogenesis and lymphangiogenesis, and is known to be associated with interleukin-8 (IL-8) in a cytokine network. IL-8 is a chemokine produced by various types of immune cells, and is used in the Interleukin-8 Luciferase assay to evaluate the skin sensitization potential of chemicals. In our study, we tested the effects of 16 referenced chemical sensitizers on the expression of VEGF and IL-8 in primary normal human keratinocytes (NHKs). We found out that 14 of the 16 chemical sensitizers significantly increased VEGF and/or IL-8 expression in NHKs. However, the use of primary human keratinocytes for skin sensitivity validation studies is limited. The biological responses of human keratinocytes to different external and toxic stimuli are generally variable, and this is due to differences in the biological responses amongst the volunteers that donate their epidermal tissue for the prevalidation studies.
 In order to compensate for the variation, we evaluated the feasibility of HaCaT cells, immortalized human keratinocytes, as an alternative to primary human keratinocytes. Following a thorough investigation, we found out that HaCaT cells produced VEGF and/or IL-8 in response to potential skin sensitizers and irritants, which were selected based on reports in literature, OECD Test Guideline 429, and Scandinavian photo patch. Although fewer sensitizers induced VEGF production in HaCaT keratinocytes, nickel chloride, a human sensitizer resulting in a negative result using the LLNA method, significantly changed VEGF and IL-8 expression.
 In this study, we found out that VEGF and IL-8 can be used as biomarkers to assess the skin sensitization potential of chemical substances in cell-based models. We hope that our work can increase awareness about the need for refinement, reduction, and replacement of animals in scientific research, and that we could possibly set an example for others to adopt more alternative methods for testing skin sensitization.

記事を新しく掲載しました(2016年11月)

2016年11月11日

活動記事と海外ニュースをアップしましたので、ぜひご覧になってください。

活動記事

海外ニュース

<米国>サウスカロライナ大学 救急医療での動物の使用を廃止

2016年10月20日

<米国>サウスカロライナ大学
救急医療プログラムでの生きた動物の使用を廃止

2016年9月20日、サウスカロライナ州コロンビアにあるサウスカロライナ大学(USC)医学部は、生きた動物を使った救急医療プログラムを廃止したことを、米国の動物実験に反対する医師・科学者の団体PCRM(責任ある医療のための医師委員会)に伝えた。

USC医学部の救急医療訓練では、学生たちは生きたブタにメスを入れて喉や胸腔、静脈を切断して挿管する方法や、胸骨を切り開いて心臓の処置を行う方法を学び、その後実習の終盤に行われる気道処置訓練の前にブタたちは殺された。しかし今やUSCの学生たちは、医療シミュレータや実習用の遺体によって学べるのである。

PCRMの調べによると、米国における専門医療実習期間中の救急医療プログラムの89%(160あるうち142)が動物を使わない教育方法を採用している。その中には、今回更新されたUSCグリーンビル・プログラムや、デューク大学、サウスカロライナ医科大学、エモリ―大学でのプログラムが含まれる。

PCRMは、動物の使用をめぐってUSCを米国農務省東部地方動物保護局に告訴していたが、USCによる改善を受け告訴を取り下げることにしている。

 

Physicians Committee for Responsible Medicine:
University of South Carolina Emergency Medicine Program Ends Live Animal Use

「エシカル消費と動物への配慮を考えるシンポジウム」を主催

「エシカル消費と動物への配慮を考えるシンポジウム」を主催

エシカルシンポロゴ

エシカルシンポジウム

「エシカル消費(倫理的消費)」のムーブメントが日本でも盛り上がりつつあるなかで、その枠組みのなかに「動物への配慮」をきちんと位置付けてもらおうと、2016年10月2日、立教大学池袋キャンパスで、JAVAをはじめ国内の4つの団体がシンポジウムを開催しました。各種イベントが目白押しの時期でしたが、約250名もの方がご来場くださり、エシカル消費、アニマルウェルフェア、アニマルライツについて理解を深めていただきました。

●開催概要

エシカル消費と動物への配慮を考えるシンポジウム
日時: 2016年10月2日(日)10時開演 16時55分終了
場所: 立教大学 池袋キャンパス 5号館1階 5123教室
主催: 立教大学ESD研究所、NPO法人アニマルライツセンター、PEACE~命の搾取ではなく尊厳を、NPO法人動物実験の廃止を求める会
後援: 日本エシカル推進協議会、日本消費者教育学会、一般社団法人エシカル協会、一般社団法人全国消費者団体連絡会
特別後援:美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会
協賛: ㈱イオンフォレスト ザ・ボディショップ、㈱Control Union Japan、㈱ディーフィット/まかないこすめ、HER/COUTUME BY HER、㈱パトラコスメティック、㈱ロゴナジャパン

このほか、シンポジウム開催にあたって、ファッションジャーナリストの生駒芳子さん、株式会社大和総研 調査本部 主席研究員の河口真理子さん、フリーアナウンサーで一般社団法人エシカル協会代表の末吉里花さん、女優の杉本彩さん、日本消費者教育学会会長の西村隆男さんから、賛同のメッセージをいただきました。

●プログラム(敬称略)

第一部 エシカルとは?
1. エシカル消費と動物への配慮 日本エシカル推進協議会代表 山本良一
2. 基調講演「エシカル消費における動物への配慮の重要性」エシカル・コンシューマー主筆 ロブ・ハリスン
3. 日本における動物利用の現状と課題 アニマルライツセンター/JAVA/PEACE

第二部 現状と取り組み
1. 消費行動と動物との関わり 日本女子大学教授 細川幸一
2. 畜産動物の福祉の現状―考え方、評価法、指針― 帝京科学大学教授 佐藤衆介
3. ファッションと食―持続可能性と動物 NPO法人アニマルライツセンター代表理事 岡田千尋
4. 日本企業は動物保護をどう捉えているか 株式会社クレアンCSRコンサルタント 山口智彦
5. 「エシックス」が私たちの原動力―エシカル消費と企業の責任 株式会社ラッシュジャパン取締役 小林弥生

第三部 パネルディスカッション
「アニマル・ウェルフェアを進めていくための消費者の役割を考える」
司会  株式会社クレアンCSRコンサルタント 山口智彦
パネリスト エシカル・コンシューマー主筆 ロブ・ハリスン
サステナビリティ消費者会議代表 古谷由紀子
日本女子大学教授 細川幸一
立教大学教授 阿部治
PEACE~命の搾取ではなく尊厳を 代表 東さちこ
NPO法人動物実験の廃止を求める会理事 亀倉弘美

第一部 エシカルとは?

「エシカル消費と動物への配慮」山本良一
日本のエシカル消費運動をけん引してこられた東京大学名誉教授の山本良一氏。地球並びに複雑な生命は稀であるというレア・アース仮説に基づき、「人類文明と地球生命圏の両方を永続させていかなければならない」とし、「人類は狭い人間中心主義を乗り越えて、動物にも深く配慮していくことが必要だ」と力説。ご自身が座長を務める消費者庁の「倫理的消費」調査研究会の動向についても説明いただきました。

 

 

■基調講演■
エシカル消費における動物への配慮の重要性」ロブ・ハリスン
ロブ・ハリスン氏基調講演は、世界のエシカル消費運動の中心的存在である英国の雑誌「エシカル・コンシューマー」の創刊メンバーであり主筆を務めるロブ・ハリスン氏が登壇しました。ヨーロッパのエシカル消費運動は、①ボイコット、②調査、③エシカルな企業との連携、④認証ラベル、⑤ランキングという5つのステップを経て発展してきたとの説明があり、ケーススタディとして英国における鶏卵生産の変遷が挙げられました。1990年にはバタリーケージ生産が90%であったものが、2016年には放牧生産50%以上に移行しており、その間には生産方法の表示義務付けなどの過程がありました。ベジタリアン・ヴィーガン人口も増加しており、動物への抗生剤の利用による人体への被害なども含め、工場畜産の問題点について、わかりやすい講演でした。
質疑応答では、参加者の関心の高さをうかがわせる鋭い質問が飛び交い、「日本は水生生物の利用がより深刻ではないか」との質問には、MSCラベル(Marine Stewardship Council; 海洋管理協議会)の取り組みが紹介され、「ラベル認証では信頼性をどのように担保するのか」という質問には、NGOや消費者が監視していくことが必要との回答がありました。

「日本における動物利用の現状と課題」アニマルライツセンター、JAVA、PEACE

主催の3団体からは、化粧品の動物実験、ファッション(毛皮、ウルトラファインウール、アンゴラ、ダウン)、工場畜産(乳牛、母豚、肉用豚、ブロイラー、採卵鶏)について、動画を用いた説明を行いました。冒頭の「残酷な映像があるので退出してもかまわない」とのアナウンスにもかかわらず、ほぼ全員が最後まで退出することなく動物たちのおかれている現実を直視されました。

第二部 現状と取り組み

「消費行動と動物とのかかわり」細川幸一
消費者政策、消費者教育を専門とする日本女子大学教授、細川幸一氏からは、消費者の目線に立った動物への配慮の必要性について、具体的な事例を交えながらの講演でした。現代社会の豊かさはどこから来ているか、現代の消費社会の問題は何なのか、なぜ現在の社会が動物問題に無関心なのか、今後消費者に何ができるのか、専門に基づいた分析でありながら非常にわかりやすいお話があり、問題を身近に感じさせる30分でした。

「畜産動物の福祉の現状―考え方、評価法、指針―」佐藤衆介
動物行動学をベースにした産業動物のアニマルウェルフェアについて、日本の第一人者である帝京科学大学教授、佐藤衆介氏の講演では、動物福祉(アニマルウェルフェア)という概念の登場から現在に至るまでの流れを紹介、「5つの自由」という考え方がさらにポジティブな方向に見直されている経緯の説明とともに、EU、OIE(国際獣疫事務局)、ISO(国際標準化機構)などで動物福祉の取組みが進むなか日本政府も対応が迫られているという現状報告がありました。

「ファッションと食―持続可能性と動物」岡田千尋
ARC岡田千尋氏主催団体の一つであるアニマルライツセンター代表の岡田千尋さんからは、持続可能性という観点から、毛皮や皮革などのファッション、そして畜産が環境に及ぼしている影響についての報告がありました。毛皮産業の街、中国河北省・辛集市では公害が発生し多くの村人に健康被害が出ているという現地調査レポートや、森林破壊、地球温暖化、水や食料など資源の過剰利用など、持続可能性に多大な悪影響を及ぼしているという畜産の問題など、動物に対する感傷的な視点を排除しての客観的な問題提起がありました。

「日本企業は動物保護をどう捉えているか」山口智彦
クレアン山口氏株式会社クレアンのCSRコンサルタントである山口智彦氏からは、企業に対してCSRの取り組みをコンサルティングする立場から登壇いただきました。畜産動物の福祉について企業の取り組みを促している英国のNGO、BBFAW(Business Benchmark on Farm Animal Welfare:畜産動物福祉に関する企業のベンチマーク)が5月、英国のコラーキャピタル等合計1.5兆ポンドを運用する複数の機関投資家が畜産動物福祉の推進に署名したと発表、世界最大の機関投資家である日本の国民年金を運用しているGPIFもこの動きを無視できないのではないかとの話がありました。

「『エシックス』が私たちの原動力―エシカル消費と企業の責任」小林弥生
LUSH小林氏英国発の自然派化粧品ラッシュの日本法人である株式会社ラッシュジャパンの小林弥生氏より、動物・環境・人権といった社会問題に積極的に取り組むラッシュの企業の姿勢について発表していただきました。企業規模が大きくなれば社会への影響も大きくなるという前提に立ち、倫理観を取り込んだビジネスモデルの構築から社員のモチベーションを上げるための環境づくりまで、エシカル消費社会にあるべき企業の一例を示しました。

第三部 パネルディスカッション

「アニマル・ウェルフェアを進めていくための消費者の役割を考える」

最後は、CSRコンサルタントの山口氏を司会に迎えてパネルディスカッションが行われました。

エシカルシンポディスカッション

●英国ではどうなのか
前半は、先進国とみなされている英国の状況について、さまざまな角度からハリスン氏に質問が集中しました。英国ではエシカル消費運動・動物保護運動を進めるNGOがどれも歴史がありパワフルであること、そのベースには多様な存在を包摂する市民社会があることなど、世界をリードする存在としての特徴はあるが、そのようなバックグラウンドがなくてもSNSなど最新のツールを使った運動が奏功している事例も紹介されました。
また、20年ほど前、グローバル企業であるマクドナルドへの抗議活動に対して同社が訴訟を起こすという対抗手段をとったことがあるが、イメージダウンにつながり逆効果になったというケースを引き合いに、圧力団体としてのCSO(市民社会組織)の必要性が説かれました。
一方で、消費社会における企業のランキングなどをはじめとした「情報」に対して対価を支払う感覚が日本の消費者の間で薄れていることについて懸念が呈されると、日本だけではなく英国でも同様の状況であり、ガーディアンやタイム誌などジャーナリズムの世界においても新たなビジネスモデルの構築が模索されているとの説明がありました。
細川氏からは、英国で普通参政権が付与されたのは最近であって、英国が民主主義の先進国とみなされている所以は異議申立の気風が強いからだが、これに比べて日本人は性質が極めて抑制的であり、いわば「観客民主主義」であるとの意見が出ました。

●消費されゆく動物は線引きされるのか
主催団体の一つである立教大学ESD研究所の所長で教授の阿部治氏からは、現在の環境倫理学の対象には野生動物は含まれているが、畜産動物は含まれていないことに対する問題意識が示され、今後、動物福祉を含めた持続可能性に関する教育を広げていく必要があると訴えました。

●消費者はどこまで責任を持つべきなのか
消費されゆく動物たちへの配慮について、消費者団体こそ取り組んでいくべきではないかと水を向けられたサステナビリティ消費者会議代表の古谷由紀子氏は、このような情報が消費者にきちんと届いていない現状を踏まえて「消費者に期待しすぎるべきではない」と明言、今後は具体的な問題解決を視野に入れて、動物保護団体などから消費者団体に対する情報提供・コミュニケーションが必須であり、企業も含めたさまざまなステークホルダーによる横断的な取り組みが必要であると述べました。

エシカルシンポディスカッション2

●「暮らしの手帖」消費者意識は変わったのか
9月末で終了したNHK朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のモデルとなった雑誌「暮らしの手帖」。この雑誌の創刊当初から編集に携わってこられ、現在は企業等の組織の利他行動の社会心理をリサーチする小榑雅章氏が会場より発言。消費者を変えていくには、消費者にとって具体的にどんな利得があるのかという点を明確にしていかなければいけないという助言がありました。
これに対してJAVAの亀倉弘美より、これまでは金銭的・物理的な利得だったのに対し、化粧品の動物実験反対運動にみられるように、「自らの消費が誰かを搾取している」「自分が美しくなるために動物を苦しめ命を奪っている」という罪の意識から解放されることも、現在の消費者の利得であると説明しました。
また、PEACE代表の東さちこさんからは、かつては「動物実験が新たに行われた化粧品は人体にとって未知の化学物質が使われている危険なものだ」という消費者保護の観点から
の主張もかなりなされてきたが、EUでの法的禁止を経て、日本企業も動物のために廃止を求める市民の声に耳を傾けるようになってきている、時代は変わりつつあるのではないかとの指摘がありました。

●まとめ
ハリスン氏より、「今日の会議には、来場者も含めて、政府関係者、大学教授、企業関係者、消費者団体、動物保護NGOと、すべてのステークホルダーが集結している。今日がまさに始まりの一日ではないか」との言葉をもらいました。


朝10時から夕方5時まで、長時間にわたって多くの方々が動物をめぐる濃密な議論に耳を傾けてくださいました。これまで動物をめぐるイベントには動物に関心のある層だけが集まることが多かったように思いますが、今回は、化粧品、アパレル、食品、外食産業、流通小売、商社などの企業や、各種消費者団体、動物関連の専攻のある大学、動物保護NGOなど、さまざまな関係先に開催のご案内をしたこともあって、これまでとは異なる層の方々にお聴きいただくことができ、個人として、また企業として、考えるきっかけ、行動するきっかけとなったのではないでしょうか。
また、今回のシンポジウムでは、私たちの暮らしと密接にかかわる動物たちの現状と今後についてもはや社会全体で考えていくべき課題だとして、さまざまな分野の団体・個人の方々に登壇、後援、賛同、協賛をいただくことができました。改めてこの場をお借りしてお礼申し上げます。
「エシカル消費と動物への配慮」というテーマに対する議論をこれで終わりにさせることなく、問題解決に向けて今後も積極的に取り組んでまいります。
当日の発表資料などはシンポジウムのウェブサイトをご覧ください。

消費者庁長官に「動物への配慮の拡充を!」陳情へ

シンポジウム翌日の10月3日、英国から来日されたロブ・ハリスン氏とともに、
岡村和美消費者庁長官を表敬訪問して、
シンポジウムの盛会を報告し、エシカル消費における動物への配慮の拡充を訴えました。
長官からは「組織としてきちんと取り組みたい」と審議官もお呼びいただいたうえで
「消費者庁としても、動物への配慮に関する取り組みと共にエシカル消費の推進を強く進めていく」
旨のご回答をいただきました。

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