改正動物愛護法が成立! どう改正されたか、私たちの要望は実現したか

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この改正動物愛護法は2020年6月1日に施行されました。

(8週令規制、動物取扱業の飼養保管基準は2021年、マイクロチップについては2022年の施行予定)


JAVAが認定NPO法人アニマルライツセンター、PEACEと協働で、2016年秋から約2年半にわたって取り組んできた動物愛護法改正の活動。2019年6月12日に「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律」(以下、改正動物愛護法とします)が成立し、同月19日に公布されました。公布から1年以内に施行されます(ただし、一部は2年以内若しくは3年以内)。

私たちは、主に次の改正を求めてきました。これらを求めた請願署名には10万名を超える方たちの賛同をいただき、あらためて感謝申し上げます。

この私たちの要望に対して、どのような改正が実現したのか、また、実現しなかったかについてご報告します。私たちはほぼ全条にわたり改正案を提案してきたため、ここでは主な改正にしぼっての報告になることをご了承ください。

<私たちが求めた主な改正>

アニマエルウェルフェアの[5つの自由]を盛り込む
第一種動物取扱業の規制を強化・拡大
特定動物の飼育規制を強化
自治体による引取り・収容・殺処分の改善
繁殖制限を強化
動物実験の代替・削減を強化
虐待防止を強化、罰則を強化
畜産動物についての条項を追加

現行法と改正法の新旧対照表(JAVA作成)

実際の法文はこちらからご覧いただけます。

用語解説
附則:法律は「本則」と「附則」で構成されていて、本則の後に附則が記される。本則で定められたことに付随したことが定められており、重要な部分である。
決議:議会の意思を示したもの。通常、衆参各議院から出される。法的拘束力はないが、法を運用する省庁はこれを考慮して省令の策定等を行うため、影響力がある。

アニマルウェルフェアの [5つの自由]を盛り込む(第2条)

人の占有下にある動物のアニマルウェルフェアの国際原則である「5つの自由」のうち、前回の改正では「恐怖や抑圧からの自由」「自然に行動できる自由」が盛り込まれませんでした。私たち3団体は、これらを加える改正を求めましたが、一切の改正がありませんでした。

第一種動物取扱業の規制を強化・拡大

実験動物と畜産動物も動物取扱業への追加ならず(第10条)

私たちは、生きた動物を扱うことを業としている以上、例外なく動物取扱業の対象とし、ペットショップや動物園など他の動物取扱業と同様に規制することは当然と考えています。そのため、特に現行法で対象外となっている動物実験施設、実験動物生産業者といった実験動物を扱う者や畜産業者についてもすべて登録を義務付けるべきであると強く求めてきました。これらの業種を登録対象から除外する根拠が明確でないうえ、人間が意図的に苦痛を与えたり死に至らしめたりする動物のアニマルウェルフェアこそ、法によって守られるべきです。

しかし、実験動物と畜産動物についての検討時間は非常に短く、2018年末に公表された骨子案の段階で別紙の検討事項に回されてしまっていたことは先にご報告したとおりです。

私たちは骨子案に格上げをしてほしいと陳情を続けましたが、それはかなわず、最終的には附則の中に検討事項として残されることになりました。しかも、「施行後3年を目途として」との文言が削られ、附則の最終案までは入っていた畜産業が最後の最後でそこだけ削られてしまったのです。畜産族議員からの反対があったからと聞き及んでいます。

特に力を入れて働きかけてきた点だけに大変悔しい限りですが、附則を今後の活動に活かして、次回の改正につなげたいと考えています。

動物取扱業の対象動物の拡大ならず(第10条)

私たちは、動物取扱業の対象動物種や愛護動物を、現行の「哺乳類、鳥類、爬虫類」に両生類と魚類を加えて、「脊椎動物」としてもらいたいと要望していました。ところが、魚類についてはロビー活動において、議員の皆さんの理解や関心を得ることができず、「せめて両生類を」と切り替えて働きかけをしました。

爬虫類が対象で、両生類が対象外であることの不自然さや、両生類の劣悪な販売等の実態があることを訴え、議員の皆さんからも賛同を得られている実感があったことから、実現の期待が持てていました。結果的には、今回の改正では抜け落ちてしまいましたが、附則の検討事項には「2 国は、両生類の販売、展示等の業務の実態等を勘案し、両生類を取り扱う事業に関する規制の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」と入れることができました。

動物取扱業の登録の拒否要件が強化される(第12条)

第12条の第一種動物取扱業への登録の拒否要件は、登録の取消しができる要件にもなっています。今回、次のような私たちの要望が数多く盛り込まれた改正となりました。

  • 登録取消しの行政処分を受けてから2年間は再登録ができなかったものが、5年間に延長
  • 罪状を問わず禁錮以上の刑に処された者も5年間は登録不可
  • 動物愛護法及び関連法違反で罰金以上の刑に処された場合、現在2年間登録できない規定となっているが5年に延長
  • 密輸に関連する法律として外為法違反を追加
  • 関連法違反の規定のうち、種の保存法と鳥獣保護法については対象条項が拡大され、罰金以上の刑に処された者は全て5年間登録不可
  • 暴力団排除条項と、不正または不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者を排除する、いわゆる「おそれ条項」を追加
  • 役員だけでなく使用人にも欠格要件を適用

基準で定めるべき事項が追加される(第21条)

動物取扱業者に動物の管理方法に関する基準の遵守義務があることを定める第21条に、基準にどのような事項を定めなければいけないかの規定が追加されました。その事項とは「飼養施設の構造や規模、その管理」「飼養保管をする従業者の人数」「飼養保管の環境の管理」「動物の疾病等に係る措置」「動物の展示や輸送方法」「繁殖に用いることができる回数やその方法等」です。

私たちが求めてきた下記の事項は盛り込まれませんでした。

  • 幼齢動物を親から引き離して展示しないこと
  • 固定施設の中で展示すること(移動展示・販売禁止)
  • 1日に8時間以上及び午後6時以降に展示や販売を行わないこと
  • 種類や年齢等を考慮した適切な休憩をさせること
  • 幼齢動物または社会性のある動物を正当な理由なく単独で置かないこと
  • 動物との触れあいの機会においては1種につき最低1人の指導人員を配置すること
  • 出生後2歳未満若しくは8歳以上の犬又は猫を繁殖の用に供してはならないこと

自治体がきちんと改善の成果を出せる指導ができ、一定水準以下の業者の淘汰を確実にできるようにするためにも、私たちは適切な数値等の基準は不可欠と考え、それを求めてきましたので、今回の改正は活動の成果と言えます。

なお、この第21条の施行は2年以内とされており、具体的にどのような基準にするかは今後、環境省の検討会で決められます。

対面販売の義務が強化される(第21条の4)

第21条の4で、販売業者が販売する動物を購入者に直接見せることなどが定められています。これによってインターネット販売を実質的に禁止していますが、販売業者ではない別の業者が空港で動物を受け取り購入者に渡すといった法の抜け道を利用したケースも発生していました。これを防ぐ目的で、対面販売を行う場所を販売業者の事業所に限定する改正がされました。

貸出しや展示業にも動物に関する帳簿の備付け等が義務に(第21条の5)

現行法では犬猫等販売業者だけに義務付けられていた、所有する動物について、所有日、販売日や販売先、死亡日などを記録した帳簿の備え付け義務と、所有する動物の種類や数などを毎年、自治体へ報告する義務について、貸出しや展示業者等にも拡大する改正が実現しました。

動物取扱責任者の条件が追加される(第22条)

動物取扱責任者は、事業所における責任を負うだけでなく、従業員に関係する法律や動物の適正な扱いを周知、指導するなどの重要な役割を担っています。しかし実際は知識がなく、劣悪業者での実務経験しかなくてもなれてしまうのです。

私たちは、「動物の取扱いに関連する十分な実務経験を有し、かつ、環境大臣の認定を受けた資格を有する者の中から」を条件とすることを求めてきまして、今回、「十分な技術的能力及び専門的な知識経験を有する者のうちから、」が追加される改正がなされました。今後の政省令の改正でどこまで要件を厳しくできるかが課題です。

犬猫の生後8週齢(56日齢)規制が施行(第22条の5)

前回の改正時に、本則に犬猫生後56日齢未満の販売禁止が盛り込まれましたが、附則で日数の読み替え(第一段階として45日、現在は49日)が規定されてしまっていた件については、今回の改正で附則が削除されたことで、本則の8週齢(56日齢)となりました。

ただし、ペット業界の抵抗が強く、施行時期は公布から2年以内となり、さらに天然記念物として指定されている犬種を繁殖業者が犬猫販売業者以外に販売する場合に限って、生後49日とする例外規定が附則に盛り込まれてしまいました。これは日本犬保存会と秋田犬保存会の強い抵抗があったからで、この例外規定なくしては法改正自体が流れる可能性もあり、法改正に尽力されていた議員の方々が苦渋の決断をした形です。

生後8週齢(56日齢)の施行は私たちとしても求めていたところですが、7週齢(49日齢)と8週齢の区別は獣医師でも難しいとされており、どうこの8週齢規制を活かしていけるのか、生体販売そのものの問題から考えてみる必要があると思います。

勧告及び命令に3か月の期限がつき、業者の公表が可能に(第23条)

自治体が悪質業者に改善勧告をして、一向に改善が見られなければ、命令をし、それに違反すれば、業務停止や登録取り消しと手続きを踏むべきところ、それがなされず指導が繰り返されるだけというケースが多くあります。

私たちは、「1か月以内の期限を定めて、勧告や命令しなければならない」とする改正を要望しました。最終的に3か月となりましたが、私たちの期間を区切ってほしいとの要望が通り、新しい条項が追加されました。

また、勧告に従わなかった者を公表できる規定も追加されました。これらの改正により、悪質業者をなくす一定の効果が出るものと期待されます。

廃業・登録取消し後に立入りや勧告・命令を行うことが可能に(第24条の2)

悪質業者であっても自治体がなかなか登録の取消しをしない理由の一つに、取消しを行ってしまうと立入りの権限が失われ、その業者の動物の状況が確認できなくなるという問題があります。私たちは、基準に満たない劣悪業者に営業をさせずに動物たちの状況確認を可能にするために、廃業後の立入り規定を求めてきました。今回、廃業後2年間、立入検査や必要な勧告・命令ができるようになりました。ただ、登録の取消し後の動物の一時保護は実現しませんでした。

なお命令に違反した場合は100万円以下の罰金、立入検査を拒んだりすると30万円以下の罰金に処されます。

犬猫譲渡団体にも帳簿の備え付けが義務に(第24条の4)

非営利の事業を行う第二種動物取扱業のうち、犬猫等の譲渡を行なうところについて、第一種動物取扱業と同様に帳簿の備え付けが義務付けられました(販売や引渡しを譲渡しと読み替える)。残念ながら、非営利団体でも不適正飼養のケースもあり、そういったことが国会での議論で取り上げられたことがこの改正につながったのではないかと考えます。

特定動物の飼育規制を強化

交雑種を含め、愛がん飼養禁止に(第25条の2~第29条)

これは私たちが求めていた改正の中でもとても大きな点です。特定動物とは、クマやライオン、毒ヘビ、大型の猛禽類といった、いわゆる危険な動物です。現行法では、こういった特定動物として指定されている動物も都道府県知事の許可をとれば誰でも飼育できる状況です。

飼育している特定動物に飼い主が噛み殺されるなどの事故が起こっています。また、もともとは野生動物であって適正に飼育することは難しく、劣悪環境になりやすいこと、災害時に同行避難は困難であるなどの問題があることを議員の皆さんに主張し、私たちは、愛がん目的での飼育は禁止するよう求めてきました。そして、展示や環境省令で定める目的で飼育する場合のみ、飼養・保管許可が出る、つまり愛がん目的での飼育には許可が出ない改正がなされました。

また、特定動物の交雑種についても規制の対象に加えられました。これも私たちの要望してきた点が実現しました。

なお、遺棄や殺処分を防ぐため、現在許可を受けて飼育されている特定動物については、附則によって、飼育を継続できることになっています。

自治体による引取り・収容・殺処分の改善

所有者不明猫の引取りが「拒否することができる」に (第35条第3項)

所有者からの犬猫の引取りに関しては、前回の改正で「拒否することができる」と改正された一方、所有者不明犬猫の引取りについては、「引き取らなければならない」ままとなっていました。これが「庭に糞をする」「ごみを荒らす」などの理由で駆除目的で持ち込まれた猫を引き取る自治体が未だにある原因の一つなのです。この不正な引取りをなくすことは殺処分の削減には不可欠です。

動物愛護法の趣旨をきちんと理解していたり、所有者不明猫には飼い主がいる可能性がゼロではなく、所有権の問題があることを認識している自治体ではすでに駆除目的の引取りはしていません。しかし、この正しい対応をする自治体が「引取りを義務付けている動物愛護法に違反している」との指摘を受けることもありました。

JAVAはこの引取りを拒否できる改正を1999年の改正から求めてきて、今回3団体の要望として働きかけを続けました。そして、やっと今回「拒否することできる」との改正が実現したのです。

ただ、この改正には大きな問題があります。「周辺の生活環境が損なわれる事態が生ずるおそれがないと認められる場合」と今後、環境省が政省令で定める場合に該当すれば、引取りを拒否できるという改正なので、つまりこれらに該当しなければ、引き取らなければならないままなのです。

この「周辺の生活環境が損なわれる事態が生ずるおそれがないと認められる場合」を引取りの拒否条件とすることは次のような問題があります。

  • 生活環境が損なわれているか否かを問わず、所有者不明の猫の場合、所有者がいる可能性は否定できず、捕獲したり、引き取ることは所有権の問題が生じる。
  • 「生活環境が損なわれている事態」の判断は困難である。庭に猫が入ってきただけで苦情をいう市民もいる。
  • 「庭に糞をされた」「ゴミをあらす」等々、猫による被害があるからと引き取っていては際限がなく、殺処分数が増えるだけで本末転倒である。
  • 生活環境が損なわれることを理由に引き取ることは、駆除目的の引取りに他ならず、これは前回改正時の付帯決議第8項「駆除目的に捕獲された飼い主のいない猫の引取りは動物愛護の観点から原則として認められない」に反する。
  • 猫との共存のために官民あげて取り組んでいる「地域猫活動」の努力が無駄になってしまう。

そのため私たちは、骨子案の段階からこの「周辺の生活環境が損なわれる事態が生ずるおそれがないと認められる場合」の一文を削除することを求めましたが、それは残念ながら実現しませんでした。

その後、私たちは、少しでも不正な引取りの抑止になるような内容を衆参両院の決議に盛り込んでもらいたいという働きかけも行い、次の項目が盛り込まれました。

「九 所有者不明の犬猫の引取り拒否の要件の設定に当たっては、狂犬病予防法との整合性、当該犬猫に飼い主がいる可能性及び地域猫活動等も考慮し、地域の実情に配慮した要件を設定すること。」

決議に法的拘束力はありませんが、環境省の政省令策定に影響を与えることができます。

今後、環境省によって引取りを拒否できる具体的な条件が政省令で定められます。生活環境が損なわれているか否かを問わず、次の場合は引取りを拒否するような政省令を環境省に求めていかなければなりません(私たちは、6月25日に環境省の長田啓動物愛護管理室長に面会のうえ、これらを求める要望書を提出しています)。

  1. 負傷や衰弱をしていない成猫であって、遺棄されていたことが明らかでない場合(=所有者・占有者がいる可能性のある)
  2. 負傷や衰弱をしていない子猫であって、遺棄されたことが明らかでなく、かつ母猫がいる可能性がある場合
  3. 排除・駆除する目的で持ち込まれた可能性がある場合

収容状況の改善に関する改正はなし

自治体の収容施設によっては、子犬・子猫を真冬に暖房のない所に置いておくなど、劣悪・虐待と言わざるを得ない状況のところもあります。私たちは、自治体を対象にした収容基準を定め、収容動物にとって快適な環境にすべきと働きかけをしてきました。

今回、法改正は実現しませんでしたが、衆参両議院の決議に「十 地方自治体における動物収容施設については、収容動物に対する適切な飼養管理を図る観点から、その実態把握を踏まえ、適正な施設や管理の水準等に係る指針の策定を、第一種動物取扱業の基準に準じる形で検討すること。」と盛り込まれました。これをもって環境省が適正かつ実効性のある指針を策定するよう、働きかけていきたいと思います。

殺すときの方法に「国際的動向に十分配慮すること」が規定される(第40条)

自治体での犬猫の殺処分をはじめ、動物を殺すときの方法は「動物の殺処分方法に関する指針」に則ってできる限り苦痛のない方法にて行うと規定されていますが、依然として炭酸ガス殺を行っている自治体は多いのが現状です。今回、動物を殺さなければならない場合に関しての必要な事項を定めるにあたって「国際的動向に十分配慮すること」が規定されました。

この改正に関しては、参議院の環境委員会で質問がなされ、「動物に対して苦痛を与えるような形での殺処分は今度の改正によって今後はないものというふうに考えている」という答弁があり、今後の自治体における改善が期待されます。

繁殖制限を強化(第37条)

不妊去勢手術などの繁殖制限について、現行法の努力規定では弱いことから、義務規定とすることを求めていました。今回、それが実現しました。

過剰繁殖の問題は犬猫に限ったことではないため、私たちは人の所有・占有下にあるすべての脊椎動物に対象を拡大することも求めていましたが、この改正はなされませんでした。

それでも今回の改正により、自治体が繁殖制限をしない飼い主に指導をしやすくなったり、市民が不妊去勢手術の助成金制度を求める際に活用できるでしょう。

動物実験の代替・削減を強化

3Rの義務付けは実現せず(第41条)

私たちは、次のようにこの第41条の改正を強く求めてきました。

  • 2006年の改正で動物実験の3Rの原則が盛り込まれたものの、代替と使用数の削減が配慮事項にとどまっているため、この部分を含め、3Rすべてを義務とする。
  • 現行法にある「科学上の利用の目的を達することができる範囲において」の一文を削除する。
  • 代替法の開発・普及を国の責務とする。

これらの改正は、前回の改正では医系議員の抵抗によって骨子案からはずされたという経緯があります。しかし今回は、公表された超党派の「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」(以下、ゼロ議連)の骨子案には、以下の文言が入ったのです。

動物の科学上の利用の減少に向けた取組の強化
動物を教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する場合には、科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用し、及びできる限りその利用に供される動物の数を少なくすること等により動物を適切に利用しなければならないこと。

ところが、これを見た動物実験関係者が猛烈な反対のロビー活動を開始しました。そのときに利用されたのが、京都大学iPS研究所所長でありノーベル賞受賞者である山中伸弥教授も改正に反対しているという主張でした。このことについては、私たち3団体も山中伸弥教授に質問状を送り、むしろ3Rには賛同であり、改正に反対との回答をしていないことをご報告しました。また、NPO法人日本実験動物関係者連絡協議会が、全国の医学生物学系の学会など120団体が賛同団体に名を連ねた、この第41条の改正に反対する要望書を議員に提出しました。

ゼロ議連の動物愛護法改正プロジェクトチームのヒアリングで、日本実験動物医学会が「一切の改正の必要なし」と主張したこともすでにご報告したとおりです。

その後、ゼロ議連の骨子案からは、上記の文言が削除されてしまったのです。最終的には、この部分についても、附則に「検討事項」として盛り込まれるだけとなりました。附則にすら残らない可能性もありましたので、これは一定の成果ではあります。

今回も動物実験関係者の強い反対によって3Rの義務化が実現しませんでした。これを打破するには、動物実験関係者たちの反対を超える、義務化を求める大きな世論を巻き起こさないとなりません。

虐待防止を強化、罰則を強化

不適切飼養への立入が可能に(第25条)

現行法では、「多数」の動物が劣悪飼育やネグレクトされている場合に自治体が改善の勧告・命令をできる規定があります。しかし劣悪飼育やネグレクトに頭数は関係ありません。1頭の飼育でもそういった問題が全国で発生しています。私たちがこの点を強く求めた結果、1頭であろうと、自治体は勧告・命令を出すことができ、また立ち入り検査ができるようになりました。なお立入検査を拒むと20万円以下の罰金に処されます。

殺傷罪の罰則が上限懲役5年に(第44条)

私たち3団体以外にも多くの人たちが望んでいた虐待の罰則の強化。私たちの要望通り、動物殺傷罪が2年以下の懲役または200万円以下の罰金⇒5年以下の懲役または500万円以下の罰金と大幅に強化されました。その他、暴行や衰弱させるなどの動物虐待や遺棄は100万円以下の罰金⇒1年以下の懲役または100万円以下の罰金とこちらも強化されました。

虐待の定義が追加される(第44条)

虐待の定義に、「身体に外傷が生じるおそれのある暴行を加える」「身体に外傷が生じるおそれのある行為をさせる」「酷使する」「飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養若しくは保管する」が加わりました。

私たちは「苦痛を与える輸送」「闘わせる」なども含めた11項目に及ぶ定義を盛り込むことを求めていたので、それよりは少ないですが、今回の定義の追加と罰則の強化によって、虐待に対する行政指導や警察の捜査などが迅速に行われるようになることが期待されます。

自治体による一時保護や、虐待・遺棄をした場合に罰せられることになる「愛護動物」に両生類と魚類を加えることは、動物取扱業の対象動物種への追加と同様にこちらも実現しませんでした。

産業動物(畜産動物)についての条項を追加(新設/第41条の4)

畜産動物については、農場やと畜場等において一般化してしまっている暴力行為をなくすことを目的として、私たちは次の3点を求めていました。

  • 産業動物の章を新たに設ける。
  • 「産業動物の飼養及び保管に関する基準」を国際基準に沿ったものに改訂し、それを遵守義務とする。
  • 「地方公共団体への情報提供等」(第41条の4)の連携機関に「家畜保健衛生所、食肉衛生検査所及び畜産振興及び家畜衛生を担当する地方公共団体の部局」を加える。

実験動物と同様に畜産動物についても十分に議論されることはありませんでしたが、3点目の連携機関の追加については、私たちの要望どおりの改正がなされました。

反対していた改正

マイクロチップの装着が義務付けられる (第39条の2~第39条の26)

今改正でマイクロチップ(以下、チップ)の装着が犬猫の販売業者に対して義務付けられました。

犬猫を取得した日(例:子犬子猫が生まれた日、購入した日等)から最長で120日以内にチップを装着することになります。ブリーダーがペットショップなど他の動物取扱業者に販売する場合、生後56日経過後に譲渡しとなるわけですから、つまり生後57日までに装着される犬猫が多くなると思われます。なお、実施に必要な準備に時間を要するため、この規定の施行は公布後3年以内となっています。

チップの装着については、改正前の法律の附則に「その装着を義務付けることに向けて検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする」とあり、前回改正以降、環境省がモデル事業を行うなどしてきました。そして、今改正では自民党どうぶつ愛護議員連盟において、最優先事項として検討されました。

チップの装着については、私たちは反対ではありませんが、その「義務付け」については以下のような問題があるとして反対し、「推進」に留めるよう求めてきました。

  • 正しい生年月日が登録される保証はなく、つまりチップによって正しい生年月日が証明できるとは限らない。
  • 現在、日本で最も登録数の多いAIPO(動物ID普及推進会議)のシステムでは、犬猫の流通経路の追跡は不可能である(トレーサビリティは担保されない)。
  • 遺棄するような飼い主は義務付けてもチップを入れないため、遺棄の防止効果は期待できない。
  • 海外では、証拠隠滅のため、チップを皮下から出して遺棄するという残虐なケースも発生している。
  • リーダーの精度が悪く、読み取れないこともある。
  • チップが読み取れても、情報が登録されていなかったり、登録されている所有者に連絡がつかず、返還できなかったといったケースも発生している。
  • 「チップがない=所有者がいない」と明確になり、野良猫や迷い猫の駆除につながる危険がある。
  • 多額の税金がかかり、不妊去勢手術助成金への影響が懸念される。
  • 今後、「譲渡される犬猫」にも対象が拡大されれば、愛護団体にとって経済的に大きな負担となる。
  • チップ装着による健康被害の報告もある。

※詳細はJAVAのウェブサイト「なぜJAVAが犬猫へのマイクロチップ装着の「義務付け」に反対するのか Q&A」を参照ください。

今回の改正作業を担ってきたゼロ議連の条文化作業の会議や、自民党どうぶつ愛護議員連盟のマイクロチッププロジェクトチームからのヒアリングを受けた際にも上記の問題点を主張しました。その成果、すべての飼い犬猫への義務付けの可能性もあったところ、義務付け対象は犬猫販売業に留めることができました。

しかし、法文にあるように、販売業以外の飼い主に対しても努力義務が課せられており、今後これが義務とならないよう、マイクロチップの問題を広く知らせ続けなければなりません。

今後について

このように良い改正がされた点も多数ありますが、残された課題も多いです。特に次回改正では、実験動物と畜産動物に関する改正、動物取扱業や愛護動物の対象動物に両生類と魚類を加えることを実現したいと考えています。

今回の改正法については、具体的な規定は施行までに環境省が策定する政省令で定められます。この政省令の内容如何で、動物たちにとって良い運用がされるかどうか大きく違ってきます。環境省の検討会などに注目していただき、パブリックコメントの募集の際にはぜひ皆さんからも意見を届けてください。

決議全文(参議院) ※衆議院も一~十三の項目の内容は同じです。


解説協力:PEACE 命の搾取ではなく尊厳を認定NPO法人アニマルライツセンター

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