JAVA:NPO法人 動物実験の廃止を求める会(Japan Anti-Vivisection Association)

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JAVA講演報告<代替法学会大会>

【日本動物実験代替法学会第27回大会報告】

JAVA 講演
「動物に対する社会倫理の変化:賢明な取組みとは何か?」

2014年12月7日、大会3日目に開かれたシンポジウム8「生命倫理・研究倫理を考える-日本動物実験代替法学会からの発信-」において、JAVAの理事が「エシカル」をキーワードに講演しました。研究界全体を古い体質から脱却させ、動物を犠牲にしない、真に人道的で倫理的なあり方へと向かわせることが、代替法学会に望まれる社会的責任であると訴えました。


141207JAVA講演全スライド(PDF)

広がるエシカル消費
近年「エシカル」という言葉が消費社会で市民権を得てきています。”Ethical”とは「倫理的な、道徳上の」という意味の言葉ですが、ジュエリーやファッション、化粧品など、普段消費するものが、他者、とりわけ社会的弱者からの不当搾取や、社会正義に反することがないか、という点を気にかけた消費行動が、「エシカル消費」「エシカル・コンシューマリズム」と呼ばれ、広がってきています。産業革命によって大量生産大量消費を生み出した英国で誕生したこの運動は、人類の過度な欲望に対する抑制弁としての役割を担っていると言ってもよいと思います。

エシカルと動物
この運動の中心的存在である非営利組織「エシカル・コンシューマー」によれば、倫理的な企業かどうかは、①環境、②人権、③動物、④政治、⑤持続可能性の5分野に設けられている諸条件の達成度によって判断されるといいます。「動物」という分野にはさらに「動物実験」「工場畜産」「動物虐待」の3つの項目が設けられています。「工場畜産」とは動物の生態を無視した、動物の福祉に配慮のない畜産のシステムを指し、「アニマルライツ」あるいは「動物虐待」の項目は、動物に対する虐待的行為の有無、広告を通じて動物虐待を助長していないかどうかといった要件が並んでいます。
動物実験については、化粧品は当然のこと、日用品やペットフードについて、動物実験を行っていないということがエシカルと評価されるには大前提の要件とされています。

ファッションブランドが動物福祉に取り組む・動物福祉を訴える事例

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【パタゴニア】
アウトドアメーカーのpatagoniaが2014年11月末、取り扱うダウン製品に使用される羽毛が100%追跡可能なものとなったと発表。生きたガチョウから羽をむしり取る「ライブ・プラッキング」という方法で採取されたり、強制大量給餌で悪名高いフォアグラの副産物としてのダウンは、動物福祉に反するとして採用しない、とのこと。
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【ヴィヴィアン・ウェストウッド】
英国のファッションブランド、Vivienne Westwoodは、2014年の春夏コレクションで、工場式畜産を批判するキャンペーンを展開。“苦しむために生まれてくる動物がいてはならない”と訴えた。なお、MORAL OUTREGEとは「他者の行動が道理に反するものであった場合に抱かれる怒り」と定義されている。

 

いずれも動物の利用自体を否定しているものではありませんが、
消費者が今まで知らずに寄りかかってきた動物虐待システムに大きな一石を投じました。

感謝から具体的消費行動へ
私たちは日々、食べるものや使うものを、選んで購入し、それらを食べて使って暮らしている、そのなかで、確実にだれかの恩恵を受けて生きている。それを頭では分かっているがよくわからない、だからとりあえず「感謝していただきます」といって済ませてきた人が多いと思います。でも今は、その過程で、第三国の人や子供、動物など弱者からの搾取や環境破壊の有無と程度を気にかけ、それを避けようと行動する消費者が増えてきているのだと思います。

「ソーシャル」で善意の拡散
「エシカル」が広がる背景に「ソーシャル」という言葉の広がりがあります。その一つに「ソーシャルネットワークサービス(SNS)」がありますが、その代表格であるツイッターは東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が起きたときに活躍しました。
震災当日、東京都心では混乱のなか歩いて帰る人に向けて公共交通の情報や開放されているトイレの情報が拡散されました。その後、電力消費の自粛や譲り合いが市民の間で自発的・積極的に呼びかけられました。動物の被災についても、動物同伴で入れる避難所の場所や、迷子になった動物の写真や飼い主の情報、あるいは保護している動物の情報を被災地以外のユーザーが収集してハッシュタグをつけてツイートし、その情報を収斂させポスターにして現地に出入りするボランティアの方々が避難所に貼って回るといった連係プレーも行われました。
3.11は痛ましい天災/人災でしたが、SNSは、被災した人・しなかった人に関わらず、多くの市民・消費者に発信力と行動力を与え、その個人の集合体である企業の多くが、自発的に被災地の復興に貢献してきたことは論を俟ちません。

企業の社会的責任
もう一つ「コーポレートソーシャルレスポンシビリティ(CSR)」という言葉があります。企業は、利益を上げるだけでなく、それが属しているコミュニティ自体が持続していくために、人道、あるいは倫理に基づいて、そのコミュニティの一構成員として責任を果たしていかなければいけない、自社だけが潤えばいいとか、株主の意見だけ聞いていればいいというものではない、というものです。
ところで、2013年4月から化粧品・医薬部外品の動物実験廃止に踏み切った資生堂が、CSR活動の一環としてこの問題に取り組みました。2010年6月から4年間、計6回にわたって「化粧品の成分の動物実験の廃止を目指す円卓会議」を開催し、JAVAもすべての回に出席しました。この招集がかかる前の年、私たちは企業名を挙げて都内でデモ行進をしたり、株主総会の会場前で抗議活動を続けていましたので、そのような動物愛護団体をよくぞ招き入れたと思いました。
もちろん、JAVAの参加が資生堂のポーズとして利用されるのではという懸念もありましたが、この円卓会議への参加を通じて、対話の重要性に気づけたことは大きな収穫でした。

代替法学会の社会的責任
対話の重要性という意味で、JAVAは1997年からこの学会の賛助会員となりましたが、代替法という概念がもともと動物実験反対運動を背景に誕生したことを踏まえて、時の執行部の方々が協議して、JAVAの入会を認めていただいたものと思います。
今年で8回目になるチャレンジコンテストや、今回の大会では学生無料参加など、社会に開かれているという意味で、代替法学会はソーシャルレスポンシビリティを、一定果たしていると思いますが、それで十分とは言えない理由は最後に示します。

pp_LUSH PRIZELUSH PRIZE
ここで、学会のウェブサイトでも募集の案内が出されている「ラッシュプライズ(LUSH PRIZE)」の話をしたいと思います。ラッシュとは、英国の化粧品メーカーで、創業以来動物実験を行っていないだけでなく、動物実験の廃止に向けて積極的な活動を展開しているユニークな企業で、2012年、動物実験代替法の研究をしている個人や団体、動物実験廃止に向けた活動に対して賞金を授与する「ラッシュプライズ」を設立しました。毎年、5つの部門で募集し、選考を経て、受賞者には全体で25万ポンド(約4300万円)の賞金が授与されます。私たちJAVAは第一回目のパブリックアウェアネス(世論喚起)部門で受賞しました(※詳細はhttp://www.usagi-o-sukue.org/java03entry.php?eid=00010)。このラッシュプライズの企画運営を行っているのが、冒頭にお話しした、エシカルコンシューマーです。

21世紀の毒性学は1R
2014年11月半ば、ラッシュプライズの3回目の授賞式がロンドンで行われました。授賞式に先駆けて、21世紀の毒性学、21st Century Toxicologyをテーマに、世界の代替法研究をけん引している方々が参加するセッションが行われました。参加した方からの報告によると、このセッションにおけるキーワードは、1R。3Rのうち、これからの毒性学においては、ReductionでもRefinementでもなく、動物を使用しないReplacementが重要である。しかしながら、これまで長らく「毒性試験には動物を使うことが当然」という環境に親しんできた研究者にとって、Replacementの本質を理解すること、Replacementが信憑性のある方法だと認識することは困難を極めている、古い体質から抜け出せない、新しい考え方を受け入れられない人が多い、ということを、どの参加者も指摘していた、ということでした。

人道的実験技術の原則
1959年、ウィリアム・ラッセルとレックス・バーチ(※注1)が、「人道的実験技術の原則」のなかで3つのRを著しました。この「人道的」という言葉は、あるいは「倫理的」とも言い換えられると思いますが、彼らはこう言っております。

もし、我々が行うべき実験を選択する基準を持とうとするならば、多分、人間性という基準が我々が作成することのできる最良のものである。科学における最も偉大な業績は常に最も人道的であり、かつ最も美的に引きつけるものであり、最も成功した時には科学の枢要である美しさと優雅さを感じさせるものである。

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第23回大会のシンポジウム登壇時にもお話ししたように、「人道的」という言葉を普通にとらえれば、動物の痛みを取り除くことも、犠牲になる動物の数を減らすことも、動物を実験に使わないことも、いずれも人道的だと言えますが、犠牲は多いより少ない方が良いのは当然のことですから、一般的な感覚でとらえれば「いちばん良いのは動物を使わないこと」、つまり、3RのなかでReplacementが最良、との結論に必然的にたどり着くはずです。
しかし、それをどうしても認めたくない人たちがいらっしゃる。「ラッセルとバーチは動物実験を廃止しろとはいっていない」「3Rは適正な動物実験を行うための原則」というように都合よく換言する方がたくさんいらっしゃいます。まるで「3Rをきちんと守って動物実験をどんどん推進しよう」と言わんばかりです。
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代替法学会は動物実験推進か
右のスライドは、左が代替法学会の目的、右がNPO法人動物実験関係者連絡協議会(動連協)の目的として掲げられている文章です。動連協とは、動物実験を生業とする関係者による、動物実験の推進を目的に設立されたNPO法人ですが、左右、ほとんど同じ文章です。3Rという考え方は、動物実験を持続可能(サステナブル)にするために生まれたものなのでしょうか?

過去からの脱却と未来へのキックオフ
それは違うと思います。ラッセルとバーチは、自分たちが当座言えることとしてあらわしたものであり、それ以来55年が経過した今、その考え方、人間性、人道、倫理は進歩しています。pp_attitude
つい先日発売になった写真報道雑誌、DAYS JAPANの12月号の「動物たちの感情世界」という特集のなかで、マーク・ベコフ(※注2)という動物行動学者が「だから私たちは、動物たちにとっての苦しみの現実が、私たちが感じるそれとは別物であるのだと思うふりをすることを止めなければならない」と寄稿しています。
人間性がまたベルナール(※注3)の時代に戻ることはあり得ないと思っています。
たしかに、長年寄り添ってきた習慣、慣れ親しんだ方法や考え方、いままで積み上げてきた実績を「間違っていた」「無駄だった」と言われれば、だれしもプライドが傷つくのは当然のことでしょう。
だからこそ、代替法学会には、毒性学も含めた医科学研究全体が、古い体質から脱却して、動物の犠牲を生まない、人道的で、倫理的な研究のあり方へとスムーズにシフトチェンジできるよう、そこで偉大な業績を上げられるよう、大局的観点からアプローチしていっていただきたいのです。
それがまさに、代替法学会に望まれる社会的責任であると言えます。

(了)

  1. *注1 ウィリアム・ラッセル(William Russell; 動物学者)
    レックス・バーチ(Rex Burch; 微生物学者)
    ・1954年、UFAW(Universities Federation for Animal Welfare;動物福祉のための大学連合)から人道的な実験について検討するよう依頼を受け、1959年に「人道的実験技術の原則(The Principles of Humane Experimental Technique)」を著し、その中で「3Rの原則」を提唱した。現在さまざまな国際機関で実験技術の基準として採用されている。
  2. *注2マーク・ベコフ(Marc Bekoff,1945-)
    ・米コロラド大学生態・進化学部教授(有機体論生物学)。ジェーン・グードル博士が主宰する動物の生存権保護活動「根っこと新芽計画」に参画。現代アメリカで動物の生存権と環境問題をリンクさせて新しい活動を展開している注目の研究者の一人(Amazonより引用)
    邦訳済みの著書に「動物の命は人間より軽いのか – 世界最先端の動物保護思想」(中央公論社、2005)がある。
  3. *注3クロード・ベルナール(Claude Bernard, 1813-1878)
    ・フランスの医師、生理学者。晩年に著した「実験医学序説」(1865)では「人間にはヒトを用いて実験する権利はないが、動物を用いて実験する権利はある」「動物にとって苦痛であろうとも人間にとって有益である限り、動物実験は、あくまで道徳にかなっている」「生物現象を分析するためには、生体解剖(vivisection)によって行わなければならない」と述べ、近代の動物実験台頭の基礎を作った。
    ベルナールが無麻酔でイヌの実験を行っていたことに心を痛めていた彼の妻と娘は、動物実験反対運動に傾倒したことでも知られる。

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