<ナショナルバイオリソースプロジェクト>「ニホンザル」のプロジェクト廃止などを文科省に要望

9月29日、JAVAは、化粧品の動物実験や動物愛護法の改正の活動等で連携しているPEACEとともに文部科学省研究振興局ライフサイエンス課の生命科学専門官と生命科学研究係長に面会。同省のナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)について、次の3点を要望する書面を提出しました。


(右から)文科省の辻山生命科学専門官、PEACE代表の東さん、JAVA事務局長の和崎

【要望事項】

  1. NBRP「ニホンザル」分担機関からの再委託先である奄美野生動物研究所で飼育されるニホンザルの処遇について、方針が決まり次第公表をすること。
  2. NBRP第五期の公募において、「ニホンザル」を採択しないこと。
  3. NBRP第五期の公募において、新たな動物種の採択は行わないこと。また、ニホンザル以外の既存の動物種に関しても採択を減らし、動物実験ではない研究手法の発展につながるプロジェクトをサポートすること。

ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)とは

2002年に文科省が着手した、動物、植物、微生物といったバイオリソース(生物遺伝資源)、いわゆる研究材料を整備、安定供給させるための一大プロジェクトです。動物では、ニホンザルのほか、マウス、ラット、鳥類、魚類、カエル、虫など様々扱われています(2021年10月現在)。

そのなかの「ニホンザル」のプロジェクトは、「母群1,500~2,400頭を集め毎年300頭を実験用に供給する」という繁殖・供給数が目標として掲げられ、母群とするために、過剰繁殖した動物園や野猿公苑から多くのニホンザルが集められました。そこから産まれた子ザルを実験用に提供しています。

母群とするサルを集めるにあたって、国内の3つの動物園が同プロジェトの代表機関である京都大学霊長類研究所とサルの提供で合意していましたが、うち函館市営熱帯植物園と松本市アルプス公園は、JAVAをはじめ国内外からの抗議により中止を決定。残る札幌市立円山動物園に対しては、JAVAは署名活動、文科省と札幌市役所前でのアピールアクション、文科省、動物園、札幌市との面談、住民監査請求、裁判と闘い続けましたが、最高裁がJAVAの上告を退けました。 円山動物園は2005年3月に第一陣となる15頭のサルを京大霊長研に移送し、計45頭を提供しました。

「ニホンザル」のプロジェクトは、代表機関である京都大学霊長類研究所と分担機関である自然科学研究機構生理学研究所によって運営されています。

<参考ウェブサイト>
NBRP「ニホンザル」のウェブサイト

NBRP「ニホンザル」のサルを使った実験の例(JAVAのウェブサイト)
情報開示請求でどこまで公開されるか~京都大学のあるサルの実験の場合 その1~
情報開示請求でどこまで公開されるか~京都大学のあるサルの実験の場合 その2~

情報をひた隠しにする文科省や運営機関

「ニホンザル」のプロジェクトは、現在第四期目(2017年4月~2022年3月)が終わろうとしているところであり、約20年続いていることになります。

2020年10月に出版された書籍、増補改訂版「犬が殺される―動物実験の闇を探る」(森映子著/同時代社)の中で、このNBRP「ニホンザル」について、関係者への取材で明らかになった事業縮小や余剰サルの実状が記され、このプロジェクトの問題が改めて注目されることとなりました。また、第四期の事業評価の公表や第五期の公募の時期になっています。

そのようなことから、JAVAとPEACEは、文科省、京都大学霊長類研究所、生理学研究所に対して、ニホンザルの飼養状況やこれまでの事業の結果等を確認するために質問状を送付しました。しかしながら、母群のサルの導入元、繁殖したサルの提供先などは「公表していない」とほとんど情報を明かさないのです。

奄美野生動物研究所で飼育されるニホンザルの今後

増補改訂版「犬が殺される―動物実験の闇を探る」でも指摘されていますが、分担機関である生理学研究所からNBRP事業の再委託を受けている奄美野生動物研究所では、今年の3月31日時点で172頭のニホンザルを飼育していると私たちの質問状に対して同研究所は回答しましたが、すでに繁殖は行っておらず、このサルたちをどうするかが現在課題になっています。

自然の環境に近く、福祉に配慮された環境で余生を過ごさせるのが、サルを実験利用する研究者や、その実験結果から利益を得る事業者の責任ではないでしょうか。

そもそも、再委託先の民間機関が奄美野生動物研究所であることは国会質問への答弁により、2019年になってようやく文科省が認めました。随意契約により毎年巨額の予算が支払われている民間機関がどこであるか、毎年委託費がいくら支払われたかについて頑なに公表してこなかったNBRP「ニホンザル」と文科省に対し、私たちは強い不信感を抱いています。

このサルたちの処遇について、中核機関と分担機関に計3回の公開質問状で質問してきましたが、未だ検討中との回答でした。検討が終わり、方針が決まり次第、速やかにその具体的内容を公表することを両機関に対しすでに要望していますが、今回、文科省に対しても要望いたしました。

この面会で文科省は「サルを殺処分することは検討の遡上にもあがっていない」と説明しましたが、それ以上の情報は明かされませんでした。

国際的にも批判の声が高い霊長類の実験使用

認知能力も高く、社会性も強い霊長類を動物実験に用いることに対しては国際的にも批判の声が高く、規制強化の方向性にあるリソースに将来性はありません。これらのことから、京都大学霊長類研究所へも、実験供給用のニホンザルの繁殖・供給を中止することを要望し、さらにNBRP「ニホンザル」は第四期で終了とし、第五期のNBRPには応募しないことをNBRP「ニホンザル」の代表機関と分担機関に要望していますが、もし応募があった場合にも、採択しないことを今回、文科省に求めました。

科学における動物使用からの脱却を

科学において動物の使用を避ける方向は、近年ますます強まっており、例えばEUは、2010年に、加盟国に遵守義務のある「実験動物保護指令」において「動物実験の完全代替という最終目的のための重要な一歩」と明記しました。さらに今年9月15日には、欧州議会が、実験での動物の使用を積極的・段階的に廃止するための行動計画を確立するよう欧州委員会に求める決議を採択しています。今後、動物実験の廃止へ向けたロードマップを検討することになるでしょう。すでに、オランダのように、2025年までに実験動物に頼らないイノベーションの世界的リーダーになることを宣言している国もあります。

日本も、霊長類をはじめ動物の実験使用の廃止を目指すべきです。そのようなことから、NBRPにおいては、ニホンザル、そして新たな動物種について採択は行わず、既存の動物種に関しても採択を減らし、動物実験ではない研究手法の発展につながるプロジェクトをサポートすることを要望しました。

このように私たちは、NBRPそのものに反対しているわけではありません。私たちは動物実験ではない研究手法の開発に国は十分な予算をかけ全力で取り組んでほしい、そのためにNBRPで扱うリソースもヒト細胞やヒト組織など代替法に不可欠なものにしてほしいと訴えているのです。

しかしながら、今年3月30日付のナショナルバイオリソースプロジェクト推進委員会報告書「今後のバイオリソース整備の在り方について~ライフサイエンスの発展を支え、先導する事業に向けて~」の中で、「新たな研究分野のために、研究動向も見据えた新しいバイオリソース の開拓も求められてくる」とあり、注に「今後の調査が必要であるが、例えば、ターコイズキリフィッシュ、霊長類モデル、フェレット、コケ植物(蘚苔類)等があげられる」と新たな動物種に期待するようなことが書き込まれているのです。ターコイズキリフィッシュは寿命が数か月という短命な魚で老化研究モデルとされていますが、この魚と人間を比べるなんてナンセンスですし、実験使用は回避しようという世界の流れに反して霊長類モデルをあげていることにも呆れます。

さらにこの面談において文科省は、次年度の予算の概算要求は、今年度予算から約3億円増加の15億7,600万円で出していることを明らかにし、プロジェクトを縮小させる考えがないこともわかりました。しきりに3Rや基準を守っている、実験動物の福祉の向上を図っていると述べていましたが、それは動物実験を行う上で当然のことです。科学における動物使用の必要性を述べるばかりで、残念ながら、そこからの脱却を図ろうという姿勢は感じませんでした。

まずは、今回提出した要望書に対する文科省からの回答を待ち、その内容を踏まえた上で今後もこのNRBPの問題に取り組み続けていきたいと考えています。

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