物議を醸す研究が批判の的に: ラットを用いた非致死的絞殺実験 <オーストラリア>

2025年1月に発表された「親密なパートナー間暴力(IPV)による脳損傷後の病態生理、血液バイオマーカー、および機能障害:救急患者と新しいラットモデルからの知見」という研究は、全国的な非営利団体であるAnimal-Free Science Advocacy(AFSA)〈1〉から倫理的および科学的批判を受け波紋を呼んでいる。この研究ではIPVに関連する絞殺や脳損傷を模倣するために、若い雌ラットを致命的ではない絞殺にかけ、損傷後の影響を評価する行動と認知テストを実施した。この研究はアルフレッド医療研究教育区動物倫理委員会の承認と、オーストラリア国立保健医療研究評議会(NHMRC)から資金提供を受けて行われたが、倫理基準の遵守と科学的妥当性についての疑問をめぐって議論を巻き起こした。

Figure 1 in Sun M, Symons GF, Spitz G, O’Brien WT, Baker TL, Fan J, Martins BD, Allen J, Giesler LP, Mychasiuk R, van Donkelaar P, Brand J, Christie B, O’Brien TJ, O’Sullivan MJ, Mitra B, Wellington C, McDonald SJ, Shultz SR 
Pathophysiology, blood biomarkers, and functional deficits after intimate partner violence-related brain injury: Insights from emergency department patients and a new rat model. より改変転載
Brain Behav Immun. doi: 10.1016/j.bbi.2024.09.030
https://doi.org/10.1016/j.bbi.2024.09.030
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0889159124006342

AFSA最高経営責任者 レイチェル・スミス氏は言う。
「この研究は、科学の名のもとに非倫理的な行為を正当化しようとしており、憂慮すべき慣行を示す例である。ラットに対して非致死的な絞殺をシミュレートすることは、倫理的に擁護できないだけでなく、人間に焦点を当てた方法が存在する以上、科学的にも冗長である。このラットの絞殺モデルは二度と繰り返されるべきではない」

懸念すべきことに、この論文はラットモデルのさらなる使用を提唱し、反復的な外傷を与えたり、意図的に追加のストレスを与えたりすることで、動物福祉への影響を悪化させるような方法でモデルを改変することまで主張している。

AFSAは以下のことを提言している。


  1. 動物倫理委員会は、IPVの動物モデルを含む今後の研究申請を却下すること。
  2. 科学誌は、動物を用いて暴力犯罪を模倣する研究に対し、より厳格な倫理基準を適用し、掲載を拒否すること。
  3. 資金提供機関は、動物を使用する研究よりも被害者に焦点を当てた、人間に関連する研究を優先すること。
  4. 公共政策立案者は、IPV被害者のための医療の改善、法的保護の強化、そして地域社会による支援の充実に向けて資源を振り向けること。

  1. *1 オーストラリアの動物保護団体。JAVA同様、OECDプログラムにおける国際動物保護委員会(ICAPO)のメンバーでもある。

Controversial Study Sparks Outrage: Simulated Non-Fatal Strangulation on Rats to Study Human Intimate Partner Violence (IPV) 
(Animal-Free Science Advocacy)

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