JAVA:NPO法人 動物実験の廃止を求める会(Japan Anti-Vivisection Association)

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動物実験の廃止を求める

日本動物実験代替法学会第28回大会報告

「考・動物実験代替試験法の今とこれから」
-日本動物実験代替法学会第28回大会・横浜の報告-

2015年12月10日(木)~12日(土)/ワークピア横浜

毎年この時期に開催され、最新の代替法に関する研究が発表される大会です。
今回は、違う講演が同じ時刻に行われるということはなく、3日間をとおして、ひとつの会場にて行われました(ポスター発表公演は別会場)。これは、今大会のテーマに則し「参加者全員が講演について議論することを通して、代替試験法開発の現状と将来について考える場を提供する」ためのものでした。参加する立場からすると、やや縮小されたようにも感じられましたが、まだ小さな学会においては、同じ情報を共有することが非常に大事なことと思え、よかったように思いました。


「日本動物実験代替法学会第28回大会・横浜」のWebサイト

講演は、新規局所毒性代替法試験のバリデーション試験の現状紹介、一般毒性試験のための毒性学、ES/iPS細胞や組織工学手法、動物福祉の国際動向など40近くありましたが、以下にふたつを紹介します。

公開された毒性試験のデータベースHESSを活用
動物を使わずに反復投与毒性を予測する

一般社団法人日本化学工業協会は、LRIという化学物質の評価研究事業を日米欧の化学工業会で協力して行っており、その年間助成額は民間では最大の10億円以上にのぼるとのこと。それらの中から反復投与毒性の予測に向けた新たな取り組みについて次のような発表があった。
「化学物質の安全性評価における製品開発の効率化や動物愛護の観点から、代替法開発が強く求められている。REACH規制やEUの化粧品の実験禁止もある。しかし沢山の動物を使用し、検査項目が多く、求める結果(エンドポイント)も多彩である反復投与毒性試験に関しては、代替法の開発は全く進んでいない。反復投与毒性の標的臓器・組織が複数であること、作用機序も様々であることなどが理由として考えられる。いわゆる代替法であるin vitro試験だけでは反復投与毒性の予測は困難で、構造活性相関も反復投与毒性試験のデータの公開情報が不足していて、これもまた困難であった。これらのことから、独立行政法人製品評価技術基盤機構から最近公開されたラット反復投与毒性試験データベース(HESS-DB)を活用し、反復投与毒性を予測可能なin vitro(試験管内)/in silico(コンピュータ内) 融合型の手法の開発に取り組んでいる。この研究の特徴は、化学物質との反応性の高いタンパク質(核内受容型転写因子や薬物代謝酵素等)との化学的特徴から計算される記述子を組み合わせて、化学物質のプロファイリングを行うことである。」
HESS(有害性評価支援システム統合プラットフォーム) は、2014年6月より公開され、OECDが開発したシステムとも互換性を持っているそうだ。これらのデータベースから必要な情報を抽出し、未試験化学物質の反復投与毒性の評価を支援することが可能だとのこと。

日本の試験法(STE)がOECDのガイドラインに収載
化粧品の試験でも行われる「眼刺激性試験」

2000年から花王によって始められたSTE試験。2006年からは複数の企業による共同開発が始まり、2015年7月に日本の代替法試験が初めて「OECD TG491」として採択された。講演した花王の研究者からは、「思ったより長かった」と苦労が垣間見える感想が聞かれた。
眼への刺激性は、これまで生きたウサギの眼に、化学物質を投与して、96時間観察するドレイズテストによって調べられていた。代替法を開発するにあたり、眼に対して被験物質がさらされる時間は実際は短いと予想されること、また、眼の刺激性反応は最表面の細胞障害から引き起こされること、に着目したそうだ。
「STE試験では、ウサギ角膜由来細胞株のSIRC(サーク)細胞に被験物質を暴露させ、細胞生存率をみる。容易な技術習得性、高い施設内・間再現性、高い予測性がある、との利点がある一方、欠点は揮発性物質の偽陰性の発生頻度が高い。そのため、高揮発性物質と活性剤以外の固体の化学物質及び固体の混合物は除かなければならない。他の異なるエンドポイントに基づく代替法試験法と組み合わせて、より幅広い種類の被験物質に対する評価が可能なので、まずこの試験法にて被験物質が刺激性か非刺激性かをみて、別の試験を行うのが好ましい。」といった内容だった。
JacVAM(日本動物実験代替法評価センター)の室長からは、「重要なのはこれからで、組み合わせを前提とするのではなく使ってもらうための改善~活性剤以外の固体などには使えないといった問題を解決するなど~が必要」といった厳しい指摘がされていたが、今後を期待してのことと思われる。

動物実験代替法イメージ

動物実験代替法イメージ写真

動物の細胞も使わない試験方法を求めます

「眼刺激性試験」にはドレイズテストの代替法として、OECDに収載されているBCOP(牛摘出角膜)、ICE(ニワトリ摘出眼球) がありますが、発表されたSTE試験と同様に、いずれも動物の細胞を使用しており、完全な置き換えとはなっていません。また、HESSのようなデータを活用することで、新たな動物実験を避けたり減らすことが可能になれば喜ばしいことですが、そのベースとなるデータをいつまでも動物のものとせず、一刻も早くヒトのものに変えるよう、全力をあげるべきです。
ヒトの反応はヒトでみるのが一番ということについては、誰もが納得のいくことだと思いますので、代替法学会には、最終目標をそこに据えた研究を発展させていってほしいものです。

<米国>Good news!NIH、チンパンジーを使う実験を打ち切る

<Good News>
NIH、チンパンジーを使う実験を打ち切る(米国)

米NIH

©Chimp Haven

– NIH(米国国立衛生研究所)所長/医学博士 フランシス・S・コリンズによる発表 –

2013年6月、NIHは、公的資金の援助を受けたチンパンジーを使った生物医学研究実験を大幅に減らすことを発表し、それ以来、非営利学術機関IOM(米国医学研究所)の基準を満たさないチンパンジーの実験を段階的に減らしてきた。そのような中で、2015年6月に、FWS(米国魚類野生生物局)が飼育下にあるチンパンジーを絶滅危惧種に指定するという大きな進展があった。

NIHは2013年6月の発表に従い、2015年11月18日、ついに研究用に飼育していた50頭のチンパンジーの保有をやめる決定をしたと公表した。これにより、NIHのすべてのチンパンジーが実験から解放されることになる。チンパンジーたちはルイジアナ州キースビルにあるチンパンジー保護団体「チンプ・ヘブン」が運営する保護施設に、健康状態や集団関係などの福祉面を慎重に考慮した上で、それぞれのチンパンジーに最適なタイミングで移されることとなった。

しかし、NIHのこの決定はチンパンジーに限ったことであり、チンパンジー以外の非ヒト霊長類を用いた実験は継続される。

NIH Will No Longer Support Biomedical Research on Chimpanzees

https://awionline.org/awi-quarterly/2015-fall/last-nih-chimpanzees-be-retired

ラットを溺れさせる関西学院大の残酷実験

ラットを溺れさせ、仲間のラットが救うかを調べる
関西学院大の残酷実験

2015年5月、関西学院大学が行った「溺れたラットを仲間が助ける行動をとるかを実証する」という「ラットの援助行動」実験について、複数の報道がありました。
JAVAや多くの市民からの抗議を受けながらも、大学は実験を中止しようとしません。

 

あまりにくだらなく、残酷な実験

関西学院大学(以下、関学大)が行ったこの実験について、日経新聞は以下のように報じました。

2015年5月12日付 日本経済新聞 夕刊

ラット、溺れる仲間救う
関学大が実験 窮地に共感示す?

ラットが水に溺れる仲間を助ける行動を取ることを、関西学院大のチームが実験で示し、12日付の独科学誌電子版に発表した。ラットが窮地に立つ仲間に共感を示すことが分かったとしている。
チームの佐藤暢哉教授(神経科学)は「今後、脳のどの領域が働いているのか研究を進めることで、人が社会生活を送る上で重要な他人への共感の神経的なメカニズムや、その進化の解明につながるかもしれない」と話す。
チームは、20センチ四方の部屋が2つある箱を用意。ペアで飼育しているラットの片方を水を張った深い部屋に入れ、もう片方を水がない浅い部屋に入れると、9割以上のペアで、水に漬かっているラットを透明の壁越しに見た片方のラットが、部屋をつなぐドアを開けた。溺れていたラットは水のない部屋に移った。
ドアを開けるまでは31秒~5分で、水に漬かった経験のあるラットの方が素早く開けたという。いずれの部屋にも水を張らなかった場合にはこの行動は見られなかった。

 Science Dailyの記事

実験を行った佐藤暢哉教授の研究室のウェブサイト(データも出ています)

意図的に溺れさせられるラット。水から逃れようともがく仲間を見て、必死に助けようとするもう1匹のラット。溺れさせられたラットはもちろん、仲間への愛情を利用されるラットもまた悲惨です。
動物たちが仲間を窮地から助けようとする行動は多くみられます。私たちも、一緒に暮らす動物たちや野生動物の観察などからも発見することができます。それをわざわざラットを苦しめて再現するとは、あまりにくだらなく、残酷です。

JAVA、関学大に実験中止を要請
大学からは、呆れた回答

JAVAから、同大学長に強く抗議し、このラットを溺れさせる実験の中止と動物実験の廃止を求める文書を提出しました。JAVAのフェイスブックでこの実験を知った方々なども大学への働きかけに協力してくださいました。それに対して関学大から届いた回答文は以下のとおりで、到底納得できない呆れた内容でした。

関西学院大回答

大学等で動物実験を行う場合、文部科学省の基本指針や大学の規程によって、動物実験委員会の審査・承認を受けることになっています(JAVAはこの制度には問題があると考えています)。誰が考えても実に低俗で残酷、無意味なものであると判断できる今回の実験を、「妥当」として承認した動物実験委員会の審査は「厳正」であるとは言えません。動物実験委員会は外部からの批判をかわし、動物実験を正当化し、実験をやりやすくする役割を担っているのです。
関学大は、JAVAや皆さんからの多くの意見を受けてもなお、「動物実験委員会によって承認された実験だから」と回答してきました。意見を真摯に受け止め、今後は同様の実験は承認しない等の改善をしようという姿勢すらありません。私たちが言いたいのは、定められた手続きを踏んで行われた実験であろうとも、ルールに従って行われた実験であろうとも、あのような実験は許せない、理解できるはずがない、ということです。

JAVA、関学大をさらに追及

JAVAは、再度、関学大に対して抗議し、加えてこの「ラットの援助行動」実験や関学大の動物実験に関する体制等に不明な点もあることから、次の内容の公開質問状を送付しました。

公開質問状の質問項目

 【質問1】「ラットの援助行動」の動物実験計画書に記載された内容のうち、以下のA)~K)を答えよ。もしくは、動物実験計画書を添付せよ。
A)研究課題名 B)研究・実験の目的 C)この実験の実施期間 D)使用動物種 E)動物種ごとの使用動物数 F)動物を用いる必要性 G)E)の使用数を必要とする理由 H)実験操作ごとの想定される苦痛のカテゴリー I)動物種ごとの動物の苦痛軽減・排除方法 J)代替法の検討状況 K)動物種ごとの実験終了時の措置
 【質問2】これまでに使用した動物種と動物種ごとの頭数。
 【質問3】これまで実験中に死亡した頭数、実験中及び実験後に殺処分した頭数。
 【質問4】「ラットの援助行動」実験の動物実験計画を審査・承認した動物実験委員会の委員名と所属・肩書。
 【質問5】JAVAからの要望に対して明確な回答がなかったため、改めて伺う。佐藤暢哉教授のチームによる「ラットの援助行動」実験を中止するか、しないか。
 【質問6】「中止する」の場合、中止年月日。
 【質問7】「中止はしない」の場合、その理由。
 【質問8】「関西学院大学動物実験管理規程」の第25条には、「統括管理者は、本規程及び実験動物の飼養・保管状況、動物実験計画とその結果、自己点検・評価・検証等に関する情報を、少なくとも1年に1回学内外に公開すること。」とある。しかし、 ウェブサイト上で公開しているのは、申請件数と承認件数のみにとどまっている。「実験動物の飼養・保管状況」「動物実験計画とその結果」「自己点検・評価・検証等に関する情報」を公開するか、しないか。
 【質問9】「公開しない」の場合、その理由。
 【質問10】「関西学院大学動物実験管理規程」において、学外の者による検証を受けることが規定されているが、関学大が受けている外部検証の実施機関名ならびに受けた年。
 【質問11】3Rの原則に則り、動物の犠牲をできる限り少なくするために、動物実験委員会の審査基準を今より厳しくする等の見直しをする考えはあるか?
【質問12】「見直さない」の場合、その理由。
【質問13】今後、「ラットの援助行動」実験のような動物実験の計画が申請された場合、動物実験委員会は申請を却下するか、それとも承認するのか?
【質問14】「承認する」の場合、その理由。
【質問15】3Rの原則に則り、代替法利用の促進をする考えはあるか?
【質問16】「代替法利用を促進する」の場合、具体的にどのような促進をし、またそれを開始する時期について答えよ。
【質問17】「現状を維持する」の場合、その理由。

今度は無視を決め込む関学大

質問があまりに答えたくない内容だったのか、答えることでさらに多くの抗議が寄せられることを警戒してか、関学大は、7月31日の回答期限までに回答をしてきませんでした。督促しても無視し続けています。自分たちが行った実験について説明責任があるにもかかわらず、無視をするとはあまりに卑怯であり、大学とは思えない無責任極まりない態度です。
ぜひ、皆さんからも、今一度、関学大やこの実験を実施した佐藤教授に、「こんな実験、二度とやらないで!」「動物の愛情をもてあそぶ実験なんて、やめて!」といった声を届けてください。

<関西学院大学>
〒662-8501兵庫県西宮市上ケ原一番町 1-155
◆学長:村田治
電話:0798-54-6100(学長室) FAX: 0798-53-3324(同)
ご意見・お問い合わせメール(下記からメールアドレスを入力・送信すると、メールフォームのURLが届きます)
Eメール:http://www.kwansei.ac.jp/pr/pr_000271.html◆佐藤暢哉(のぶや)教授(文学部総合心理科学科)
佐藤教授紹介ページ:http://researchmap.jp/nobuyasato/
電話:0798-54-6201(文学部事務局) FAX:0798-51-0984(同)
佐藤教授メールアドレス:nsato@kwansei.ac.jp

 

STAP細胞のために命を落としていったマウスたち

世紀の発見騒動と動物実験
STAP細胞のために命を落としていったマウスたち

実験施設のマウス

©Norwegian Animal Protection Alliance(写真は理化学研究所とは関係ありません)

 

2014年1月29日、国立研究開発法人(旧独立行政法人)理化学研究所(以下、理研)の発生・再生科学総合研究センター(現多細胞システム形成研究センター/兵庫県神戸市)に在籍していた小保方晴子研究ユニットリーダーが、英国科学誌「ネイチャー」に掲載された『STAP(スタップ)細胞』の研究論文について発表し、科学界もマスコミも「世紀の発見」だと色めき立ちました。しかしその後、論文不正疑惑が取りざたされ、理研においてSTAP現象の再現検証実験まで行われた結果、同年12月19日、「STAP細胞はなかった」との報告がなされたことは、皆さまご存じのとおりです。
この一連の研究と検証実験においてたくさんのマウスが実験に使われていたことに対して、JAVAでは公開質問状を理研に送付するなどし、問題を追求しました。

JAVAの『実験動物の使用に関する公開質問』とそれに対する理研からの『2015年4月23日付回答』

※以下は、原文より抜粋および要約したものです

Q1. 平成23年(2011年)4月より26年(2014年)12月まで(筆者注:小保方氏在籍期間)に、STAP細胞の研究に使用されたすべての動物の種類とその数を答えよ。

  • A1. マウス728匹

Q2. STAP現象の有無の科学的検証実験に使用されたすべての動物の種類とその数を答えよ。

  • A2. マウス1,903匹

Q3. 貴所が公表している「動物実験実施状況等に係る自己点検・評価」によると、平成23年度~25年度の貴所全体の使用数マウス1,678,531匹、ラット23,644匹と、膨大な数だが「動物の愛護及び管理に関する法律」の第41条等にのっとり、どのように使用数削減を図っているのか。

  • A3. 3Rの原則及び医学生物学領域の動物実験に関する国際原則に基づき、実験計画を立案することとしている。立案された動物実験計画については、目的の科学的妥当性、動物実験が不可欠であるか、種類・数は最低限か、実験方法は適切か、苦痛軽減の措置は適切か等に関し、外部の専門家を含めて構成される動物実験審査委員会において審査され、適正と認められた計画を承認して実施する。STAP細胞に係る計画に関しても、1匹のマウスから苦痛度の上昇なしにできる限り多くのデータを得る等により使用数の削減に努めている。

Q4.貴所の「動物実験計画承認申請書」には、「動物使用の代替法の検討状況」という項目があるが、どのような代替法を検討したのか等は一切書かれていない。代替法の有無をどのように調べ、検討しているのか。

  • A4. コンピューターシミュレーションや培養細胞、微生物を用いたin vitroの実験系で代替できないか、系統発生学的に低位にある動物を利用できないか等について文献を検索、あるいは研究者間の情報交換等により行っている。

Q5. 貴所では、年間予算が約834億円(平成26年度)にも上る。このうち、動物実験を伴う研究、動物実験を伴わない研究の内訳を答えよ。

  • A5. 一つの研究室でも進展に応じて動物実験の要否は変わるので、内訳で算出することは困難。  

Q6.今後、3Rを図っていくにあたって、その方法等を見直す考えはあるか?ある場合は見直し方法と時期について答えよ。

  • A6. ある。毎年基本指針への適合性等について自己点検評価を行っており、それをもとに、例えば苦痛度区分については具体例を集積し、専門家の意見を踏まえた見直しや、苦痛軽減処置方法として用いる麻酔等の種類について国内外の情報を参考に使用規制等の見直しを図るなど検討を重ねている。STAP問題に関連しては、責任者に対し、基本指針及び所内規定等の再周知を行った。関連学会等の情報を入手し、随時必要な検討を実施していく。

STAP細胞研究は2008年から

小保方氏は早稲田大学大学院に在籍中に指導者の影響も受けSTAP細胞を着想、そしてハーバード大学留学中に研究を始めたと言われています。2010年には、当時理研に在籍していた現山梨大学生命環境学部生命工学科教授・若山照彦氏に、作成した細胞の万能性判定を依頼。若山氏はクローンからクローンを作ることを成功させるなど生殖工学を用いた動物繁殖技術者です。小保方氏が2011年に理研に籍を置いてからは、さらに協力関係が強まったと思われます。それぞれが所属長/動物実験責任者として申請した「動物実験計画承認」は、2011年に若山氏が出したものと2013年に小保方氏が出したものでは、研究課題名が全く同じの「生体内・生体外ストレスによる体細胞のリプログラミングおよびそのメカニズムの解明」というものでした。申請されていた実験動物数は以下です。

  • 2011年(平成23年)9月若山氏の申請/実施予定期間2011年12月~2013年3月→【マウス750匹】
  • 2013年(平成25年)11月小保方氏の申請/実施予定期間2013年12月~2015年3月→【マウス230匹】

先の理研からの回答A1.では「マウス728匹」となっていますので、使用実数は申請数よりは少なかったと思われますが、2012年には若山氏の研究であるクローンマウスの作製や細胞の初期化メカニズム解明のために、ウサギ30匹、マウス2,160匹という別の動物実験の申請がありましたので、こちらから流用されていたとすれば、もっと多くの命が奪われていたはずです。

実験の内容については、「動物実験計画承認申請書(開示請求した動物保護団体PEACE提供)」に「麻酔下で、マウスの肺または筋肉の一部に■■■(筆者注:黒塗りは開示原本のまま)、あるいは①安楽死措置したマウスより脂肪組織や筋組織など全身の組織を採取し、幹細胞の作出を行う。」といった記載がされています。開胸・開腹等の外科的処置を受ける個体については、人道的エンドポイントを記入しなければならない苦痛度区分Dであり(脊椎動物はBからE、Eが最も苦痛が大きい)「飼育中に弱ってきた症状(動作が鈍い、毛がボロボロなど)を示したら安楽死させる。」との記載があります。これは実験内容の一部ですが、読んでいるだけでその惨さが目に浮かびます。

再現性の有無を調べるためにマウスの犠牲が増加

「STAP細胞」とは、刺激惹起性多能性獲得細胞のことで、小保方氏が命名しました。細胞が酸の刺激によって初期化されて、様々な細胞へと変異するものだそうです。この万能性を確かめるため、遺伝子操作したマウスの受精卵にSTAP細胞を注入して胎児を育てます。この胎児に紫外線を当てて緑色に光ったため、万能性があると判定されました。しかし、このSTAP細胞はES細胞なのではないかと疑われたのです。

不正の疑いのある研究論文を公表したことで、再現性を調べるため、理研のみならず、様々な国の様々な研究所にて動物実験が行われ、多くの動物が犠牲になったことは想像に難くありません。

理研は4月に、1年の間資金約1,300万円をかけて検証実験を行うと会見で発言していましたが、結局STAP現象は再現されず、予定よりも早い12月17日で打ち切りとなりました。早めに打ち切られたにもかかわらず、本編のSTAP細胞研究に使われたとされるマウス728匹より、この検証実験で命を落としたマウスは倍以上です。倫理観は皆無であるとしか言いようがありません。

問題はSTAP細胞研究に限らない

今回は、「ノーベル賞級の発見」「リケジョ(理系女子)」「改ざん・不正」「関係者の自殺」など、実に様々な視点からスキャンダラスに取り上げられました。しかし、私たちからみた本質は、科学という綺麗ごとの名目によって、またも動物の命がぞんざいに扱われたということに他なりません。それが若い研究者にも受け継がれていることを目の当たりにすることとなり、非常にショックを受けると同時に憤りを覚えました。

研究者には、技術競争や好奇心にとらわれることなく、動物を犠牲にしない研究を行ってほしいと思います。JAVAはこれからも、マウスをはじめ、どんな小さな生きものの命も実験に使われることなく、尊重される社会をつくるよう学術・研究機関、研究者に求めていきます。

<内部告発>北里大学獣医学部で、牛の無麻酔放血殺

JAVAに届いた内部告発
北里大学獣医学部で、牛の無麻酔放血殺

届いた内部告発

1月下旬、北里大学獣医学部に関する次のような内部告発文がJAVAに届きました。

  • 平成26年12月19日の午後に病牛の病理解剖が行われた。
  • その場において、大動物臨床学の教授が、その牛を食べようと言い出し、獣医病理学の准教授が同意した。

  • その牛は無麻酔放血殺させられ、苦しそうにうめきながら死んでいった。

  • 解剖中に肉も取られた。

  • 大学に訴えたがなにもない。大学外部からも訴えてほしい。

告発者の特定につながる恐れがあるため、原文掲載はできませんが、悲痛な思いが伝わってくる手紙でした。

残酷かつ不適切な「無麻酔放血殺」

「無麻酔放血殺」は、牛の意識がはっきりした状態で頸動脈を切り、放血させ、時間をかけて失血により死に至らせるという、牛に多大な苦痛・苦悶をあたえる残酷な方法です。国内の獣医大学で採用されている教科書においても、牛の安楽死の「許容できない方法」として「放血」が挙げられています。「放血」する特殊な場合には「麻酔下で行う」とも書かれていて、牛に最適な麻酔薬として「バルビツレート」が紹介されています。JAVAが2010年に、社団法人(現公益社団法人)日本獣医学会に対して、無麻酔放血殺は安楽殺か否か照会をしたところ、「安楽殺ではない」との明確な回答がありました。
動物の愛護及び管理に関する法律(以下、動物愛護法)では、「動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない」と定められており、同法に基づく「動物の殺処分方法に関する指針」においては、「殺処分方法は、化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、・・・」とあります。そして、「苦痛」の定義として、肉体的な痛みだけでなく、苦悩、恐怖、不安等も含まれると定めています。つまり、北里大学が行った無麻酔放血殺という方法は、動物愛護法に違反するといえるのです。

JAVAの取り組みで廃止の流れに

牛の無麻酔放血殺は、過去に、東京農工大学や酪農学園大学においても行われていたことがわかっていますが、いずれもJAVAの指摘を受け入れ、この方法を廃止しました。

酪農学園大学での無麻酔放血殺の実施については、2008年、その凄惨さに耐えかねた学生を含む関係者の方たちからJAVAに寄せられた内部告発によって発覚しました。同大学では、一人の女子学生が学長に、放血前に麻酔の投与を行うように直訴していましたが、学長は黙殺し、その後、その女子学生は自らの命を絶つという最悪の事態を招きました

JAVAは、当時、酪農学園大学のみならず、「全国大学獣医学関係代表者協議会」に対しても、加盟大学における牛の殺処分方法の改善を働きかけました。そして、それに対して、北里大学の柴忠義学長(当時)をはじめ、加盟全12大学(当時)の学長連名で「動物の愛護及び管理に関する法律にのっとり、できるだけ動物に苦痛を与えない方法による『安楽殺処置』を講じることにより行うことが求められるところである」との回答を得ていました。

JAVA、即刻、北里大に働きかけ

今回の北里大学において、無麻酔放血殺が行われたことは、つまり、動物愛護法にも、過去に自ら出した方針にも、背いたということです。拷問ともいえるこの残虐行為は、到底許されるものではありません。JAVAは即刻、学長に対して、徹底調査と然るべき対処をし、JAVAにその報告をすること、無麻酔放血殺を廃止すること、さらに、現行の動物実験・実習を見直し、動物を犠牲にしない方法を用いることを求めました。

北里大からの回答

後日、学長名にて、JAVAの要望書を受けたのち、特別調査委員会を立ち上げ、調査し、告発内容が事実であったこと、同大学ではすでに無麻酔放血殺は廃止されているが、今回、違反があったため、対処したことが記された回答文書が届きました。

「採取した肉は焼却処分」

大学からの最初の回答では、解剖した牛の肉を食べようとしたことについて、一切触れられておりませんでした。そのため、JAVAでは、この点についての事実関係ならびにその後の対処について、再度問いました。後日、「病理解剖において、牛の肉の一部が持ち出されたのは事実で、採取したままの状態で冷蔵庫に保管されており、獣医学部長の命により、12月24日にすべて焼却処分した(食べたり、学生等に配った事実はなかった)」との回答がありました。
今回の一連の問題にかかわった教員に対する処分は、懲戒委員会を立ち上げて、審議中とのことです。

北里大学のウェブサイトには、「北里大学獣医学部における牛の無麻酔放血殺とその対策の実施について(お詫び)」として、今回の問題の経緯と対処について掲載されています。

内部告発を活かして

無麻酔放血殺を行ったことは、牛を苦しめたということのほかに、学生たちに間違った方法を見せ、内部告発がなければ、彼らはそれが通常の方法と認識してしまうところであったことも大変大きな問題なのです。
内部告発者の方は、まず大学に訴えましたが、大学側が動いてくれる様子がないため、JAVAに助力を求めてきました。外部のJAVAから働きかけたことが、大学を動かすのに大きな後押しとなったと言えるでしょう。
ご存知のとおり、動物実験は密室の行為です。情報開示請求や第三者評価制度による審査結果を見ても、その真の実態はつかめません。そういったことからも、内部告発は動物実験廃止の活動には、重要かつ不可欠なのです。JAVAでは、ウェブサイトで「企業や学術機関など密室で行われている動物実験の実態をご存じでしたら、ぜひ情報をお寄せください。告発者の方の秘密は厳守いたします。ぜひ勇気をもってご連絡を!」と呼びかけるなど、常時内部告発を受け付ける体制をとっています。実際、多くの告発が寄せられています。今後もこの体制を継続し、内部告発という貴重な情報を生かし、動物実験の廃止につながる取り組みをしてまいります。

富山大学における遺伝子組換えラットの不正取扱い問題

自主管理と第三者評価では、動物実験はなくせない
富山大学における遺伝子組換えラットの不正取扱い問題でも明らかに

報道でご存知の方も多いと思いますが、2014年7 月に、富山大学の生命科学先端研究センター動物実験施設において、不活化(殺処分)措置をとったはずの遺伝子組換えラット3 匹が、蘇生した状態で死体一時保管冷凍庫内にて発見されたという問題がありました。

遺伝子組換え動物の使用については、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」で規制されています。富山大学では、この法律とそれに基づく大学の規則にのっとって遺伝子組換え動物を扱うことになっています。しかし、それらに違反し、遺伝子組換え動物の実験や保管等を行う「管理区域」の外で、不活化措置、ケージ間の移動が行われていたのです。
さらに、その後の大学の調査で、同動物実験施設において実施された遺伝子組換え動物の殺処分のうち、管理区域外で行われたものが平成17 年度以降に少なくとも128 件あることが判明しました。

富山大学は文部科学省による現地調査と厳重注意を受け、10月にこの一件について双方から発表がなされました。

富山大学のプレスリリース(PDF)

文部科学省の報道発表

rat-NAPA

photo/Norwegian Animal Protection Alliance
※この写真は富山大学とは関係ありません

JAVA、富山大学と国動協・公私動協に質問状を提出

そもそも、このような異様な事件が発生するのは動物を用いた非倫理的な実験を行っているからに他なりません。JAVAは実験の削減やシステムの構築が目的ではなく、動物実験廃止の実現を大前提に、研究機関における様々な事件や問題に対して追及の機会を逃すことなく対応しています。

今回の富山大学の事件に関しても、そのような方針に基づき、11月、JAVAは、事実確認と問題の追及を行い、富山大学学長あてに公開質問状を提出しました。
また、「動物実験に関する相互検証プログラム」*1 において、富山大学に訪問調査を行い、「適正」と評価していた国立大学法人動物実験施設協議会(以下、国動協という)・公私立大学実験動物施設協議会(以下、公私動協という)の検証委員会委員長あてにも公開質問状を提出しました。

  1. *1文部科学省告示「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(基本指針)」の規定に基づき、加盟している大学同士で、各大学の動物実験の実施体制が基本指針に適合しているかを訪問調査のうえ、評価するプログラム。

質問状への回答が届く

12月、富山大学からは、遠藤俊郎学長と同大学動物実験委員会の西条寿夫委員長名で、国動協・公私動協からは、「動物実験に関する相互検証プログラム」の八神健一検証委員長名で回答が届きました。

<富山大からの回答(PDF)
※PDFは、読みやすいように、富山大学からの回答にJAVAからの質問を挿入したものです。

回答から、富山大学は今回の違反を重く受け止め、再発防止ための策をいち早く講じたと言えると思います。しかしながら、「遺伝子組換え動物は管理区域内で扱う」という基本的なルールすら守られていなかったということには驚かされます。管理区域外での殺処分という違反が過去に128件もあったということは、これが常習化していた証でしょう。
殺処分とその後の死亡確認の不手際で、冷凍庫内でラットが蘇生した問題については、実施したのが留学生で日本語の理解が不十分だったから、責任者の教育が不十分だったからと、その理由を説明しています。しかし、留学生の語学力に関係なく、殺処分措置を的確に実施できない人物に任せたということ自体に問題があります。
今回の問題は遺伝子組換え動物についてのみ取り上げられたものですが、このような大学そして動物実験関係者の意識の低さを考えると、それ以外の実験動物の管理・取扱いにも多くの問題があるのではないかとの疑いを禁じ得ません。

<国動協・公私動協からの回答(PDF)

回答では、ラットが蘇生した問題、そのラットが管理区域外においてケージ間で移し替えられていた問題を訪問調査で見抜けなかった理由を、「動物実験に関する相互検証プログラム」の訪問調査時に「発生していなかった」「遭遇しなかった」と説明しています。
また、平成17年度以降、128件もあった管理区域外での殺処分については、「大学側の自己点検・評価の報告書への記載がなかったため」と説明しています。
つまり、これは訪問調査がいかに信頼性がないかを証明するに十分な一件であり、他の大学に対する訪問調査でも多くの問題が見落とされた可能性は大いにあると言えます。

自主管理と第三者評価の問題が露呈

動物実験者の多くは、動物実験の規制は「自主管理で十分」と主張しています。実際、大学を含め、どこの動物実験施設も自主管理を行っているわけですが、今回の富山大学の一件だけをみても、自主管理では明らかな違反であっても放置されることがわかります。

では、第三者が介入すればいいのでしょうか。「自主管理では不十分で、第三者機関による査察が必要」といった意見もあり、動物実験に反対する市民の方たちからもこういった声が多く聞かれます。しかし、国動協・公私動協による第三者評価制度「動物実験に関する相互検証プログラム」では、今回の問題が見落とされ、富山大学に対して「適正」との評価が下されていたのです。

アメリカでは、AAALACインターナショナル(国際実験動物ケア評価認証協会)による施設の第三者認証が普及しており、2007年10月29日現在、622施設が認証を受けています。普及している理由には「社会的信頼が得られる」「動物実験反対活動家への牽制にもなっている」といったこともあげられているのです。しかし、アメリカでは、サルを虐待するなどの動物福祉法に反する行為をしていてもAAALACの認証を維持している施設がいくつもあるのです。

日本では、研究界の中枢組織である日本学術会議は、「動物実験に対する社会的理解を促進するために」と題した提言書を2004年に出していますが、それには「統一ガイドラインの基準が満たされていることを第三者の立場から評価・認証する機構を設けること 」と記述があります(下線はJAVA)。
ここからも、第三者評価とは、動物実験者側が、動物実験反対の声を抑えるために考えた制度であるかがお分かりいただけるでしょう。

JAVAでは以前から、第三者評価について異議を唱えてきました。第三者評価は動物実験を守るための「隠れ蓑」となる制度であり、動物実験の廃止を阻害するシステムであるからです。第三者評価制度で「査察」をうけ「認証をされた」「適正と評価された」と聞けば、「ここの研究機関は大丈夫ね」というイメージを持たれることになるでしょう。しかしながら、それはイメージだけで、現実的には動物を救うことはできないのです。第三者評価は、良くて実験動物の福祉の向上であり、今回のように法律違反すら指摘できないケースもあるわけで、動物実験を廃止できるどころか、その妨げになってしまうのです。

動物実験廃止のために最も重要なことは何かというと、それはまさに、「動物実験反対の世論を高めること」です。現に、EUにおける化粧品の動物実験廃止が実現した大きな要因は、動物実験反対の世論が高まった結果、動物を犠牲にしない研究方法が強く求められるようになり、代替法研究が発達したためと言われています。そして、日本でも化粧品最大手の資生堂やマンダム、コーセー、ポーラが国内での廃止を決定しましたが、これは法律が改正されたからでも法規制ができたからでもありません。それは私たち消費者の声で成し得たことです。これからも「動物実験反対」の声をあげ続けていきましょう。

「ヒトiPS細胞を利用した安全性薬理試験法の実現にむけて」聴講報告

第11回医薬品レギュラトリーサイエンスフォーラム
「ヒトiPS細胞を利用した安全性薬理試験法の実現にむけて」聴講報告

2014年12月9日(火) /日本薬学会長井記念館(東京)

ひとつの新薬の開発には10年を超える期間と、一千億に届くほどの資金と、膨大な数の実験動物たちの犠牲が伴っています。人間のための薬を作るために、ヒトiPS細胞を利用することは、科学的にも倫理的にも最良の道であるように思われますが、最新の研究はどのようになっているのでしょうか。
日本薬学会レギュラトリーサイエンス部会によるフォーラムでの、いくつかの発表を報告します。

ヒトiPS細胞が2007年に樹立されてから8年が経ち、再生医療、病気の解明のみならず新薬の開発にも実用できるのではないかという関心が高まっている。
新薬は、まず薬となりえる成分の発見から始まり、候補として適しているか等必要な基礎研究が2~3年行われる。次の段階では、その有効性や安全性を確認するために、以下のような非臨床試験にて3~5年の間様々な試験が行われ、そこで多数の動物が使われる。

  • 薬効薬理試験
  • 安全性薬理試験
  • 薬物動態試験 (薬が体内に取り込まれ、様々な器官を通り排出されるまでの影響)
  • 毒性試験 (一般・特殊)

これらに合格すれば人への臨床試験にすすみ、さらに3~7年の試験が行われるが、開発が中止に追い込まれたり、あるいは市販までこぎつけたものの撤退せざるを得なくなる場合が非常に多い。その原因の大半が、後になってから毒性が強いとわかることにあるという。

今回のフォーラムでは、約半分が国立医薬品食品衛生研究所薬理部からの発表だった。この機関では、医薬品、食品添加物、家庭用品に使用される化学物質の作用を研究している。

同研究所薬理部長である関野祐子氏がはじめに総括を述べた。「早い段階でヒト特異の有害作用を簡便かつ確実にスクリーニングできれば、医薬品の安全性が確保され、医薬品の開発コスト削減などの成果が期待できる」 さらに、ヒトiPS細胞にて試験を行うことについて、「動物実験の種差の問題を克服する」とした。2014年には、薬の副作用の研究にヒトiPSを利用することが国家プロジェクトとなり、そのためiPS細胞も実験手法も標準化が必須となり、産官学で安全性試験法の開発および実用化に向けた問題点を検証。心筋細胞は規格化されたものが入手可能になったことから、これを利用した試験法の標準化から着手したそうだ。

現在、安全性評価への応用が検討されている分化細胞は、【心筋細胞】【神経細胞】【肝実質細胞】とのことで、これらの研究について発表がされた。

【心筋細胞】
●医薬品の評価では、不整脈を起こさないことが重要になってくる。現在のICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)のガイドライン試験では、全ての不整脈を拾えないこともあり、FDA(米国食品医薬品局)から2013年に改訂等が提案されている。FDA 内の改訂推進派により結成された Comprehensive in vitro Proarrythmia Assay(CiPA)と共に、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた医薬品の催不整脈予測性に関する検証をすすめている。(国立医薬品食品衛生研究所)

●心血管細胞の分化誘導法を開発、再生医療への応用や細胞モデルを構築している。心筋に加え内皮細胞、血管壁細胞の3種細胞を同時に誘導することに成功。細胞シートを作製して、ラット心筋梗塞モデルに移植したところ1ヵ月以上に亘る効率的細胞生着を確認した。心疾患に対してヒトiPS細胞由来の心血管系細胞を用いた次世代医療を行うためのベンチャー企業を立ち上げた。(京都大学)

【神経細胞】
●医薬品を含む種々の化学物質は、急性・慢性神経毒性や胎児・小児に対する発達神経毒性を引き起こす可能性がある。現在は主に実験動物を用いているが、生物種差、コスト、スループット(効率)、動物愛護の観点から多くの問題を有し、より効果的な代替試験法が必要である。効率的神経分化誘導法とin vitro(いわゆる代替法)安全性薬理試験を研究している。(国立病院機構大阪医療センター)

【肝実質細胞】
●代謝酵素誘導試験では、3ドナー以上のヒト初代培養肝細胞を用いることが求められる。しかしドナー間差や安定供給に問題があるため、細胞資源としてヒトiPS細胞由来肝細胞が注目されている。これを使った薬物誘導性評価試験の開発を、今年度よりスタートした厚生労働科学研究として取り組んでいる。(国立医薬品食品衛生研究所)

●分化に適した培養基材と培養液を組み合わせることで、効率的な分化誘導方法を構築した。特に培養液については、メチオニンという必須アミノ酸がヒトES/iPS細胞の生育に重要であることを発見、効率的分化を導いた。マウスES/iPS細胞が必須とするアミノ酸とは、違うものであることが判明した。(熊本大学)

ヒトiPS細胞への期待は大きい。それゆえに関係する動物実験も容認されがちな状況が生まれている。そういった状況だからこそ、私たちはそこに異議を唱えなければならない。

日本動物実験代替法学会第27回大会報告

「過去からの脱却と未来に向けたキックオフ」
-日本動物実験代替法学会第27回大会報告-

2014年12月5日(金)~ 7日(日)/横浜国立大学

今大会は、改めて『動物実験代替法』というキーワードを社会に広く普及させるための第一ステップと位置づけ、「過去からの脱却と未来に向けたキックオフ」をテーマに開催されました。代替法の研究発表に加えて「生命倫理・研究倫理を考える」というシンポジウムや、実際に代替法を体験するという場も設けられました。
3日間の講演の中でいくつかをご紹介します。

代替法の社会的認知を

長らく資生堂という大企業の中で、動物実験代替法を研究してきた現横浜国立大学教授の板垣宏氏が大会長を務めた。「資生堂では、代替法にはもっと国の支援が必要だと感じていた。大学に籍を置き、学術研究や学生指導を行うようになると、代替法が日本学術振興会による助成事業の対象ではないことや、理工系学生にも浸透していないことを知り、まだまだ認知されていないことに改めて気づいた。代替法学会が発足した当時は、化粧品の研究が主だったが、最近は化学物質の毒性評価など難易度が高いものにシフトしている。しかしまだ発展途上であるのは、『動物実験代替法』というキーワードが社会に普及していないからだ。普及の一助となることを願い企画を立てた。」と、今大会への思いを大会長講演で述べた。

3次元組織モデルをいかに作るか

富山大学大学院理工学研究部の中村真人教授からは組織モデルに関する講演がされた。「生体の細胞は生体内から取り出され、培養皿におかれると機能を失い性質が変わる。それをなるべく抑え、生体に近い組織を作れば有効な研究サンプルになる。このような3次元組織モデルは非常に期待され、様々な開発がされてきたが、複雑な組織作製には限界があり、臓器に対しては有効なモデルは確立されていない。」ここで終わりであればガッカリだが、今はコンピュータと3Dプリンターを導入した研究を行っているそうだ。組織を再現するには、細胞構築だけではなく、細胞操作技術、培養技術、計測技術が必要になるとのこと。ここに工学の観点が生きてくるのだろう。期待したい。

中村氏の3次元組織モデルの話は、似て非なるものを含めれば、数年前から耳にすることがあった。2008年の代替法学会では「マイクロチップを用いた複合的バイオアッセイシステムの開発」という発表がされ、小さなマイクロチップの中に生体機能を再現して薬剤を評価する、という内容に、難解ながらも興奮して聴講したことが思い出される。
学会からは離れるが、2014年にハーバード大学のハミルトン氏が、「臓器チップ(organ-on-a-chip)」がもたらす未来」というプレゼンテーションを、有名なTEDカンファレンス(米国にて年一回開催)にて行い、大喝采を浴びた。プレゼンではワクワクする言葉が並んだ。「創薬の試験ツールは細胞培養と動物実験だが、細胞は培養の環境は好まず、動物実験では人体で何が起こるかわからないことがある」「細胞建築家になって体外で細胞にとって心地よい環境を作る、それが『臓器チップ』で、これらを流体的に結び付け様々な臓器チップをつなげて、いわゆる仮想人体を作ることができる」「すでにデジタル製造専門の企業と連携」などなど。
日本は遅れをとっているようだが、この分野の研究は世界中で進められていて、代替法としても有望株である。

創薬における生理学的薬物速度論モデル(PBPK model)への期待

2012年の代替法学会大会長だった独立行政法人理化学研究所の杉山雄一氏からは、「薬物体内動態の予測;動物実験代替法としてのin vitro試験に基づくモデリング&シミュレーションの利用」という講演がされた。杉山氏は薬物動態研究者の第一人者で、以前から「ヒトでの薬物動態を動物実験から予測するのは容易ではない」としていたが、今回も「ヒトの生物学適用性予測は動物実験からは不可能。人のことは人でなければ分からない。」と明言した。数理モデル構築に必要となる生理解剖学的なパラメータの変化については、十分な情報が集まっていて、近年FDA(米国食品医薬品局)が中心となり、PBPKmodelによる薬物動態予測を臨床試験の必要性の判断、投与量の設定に活かそうという動きがあるそうだ。日本でもぜひ進めてほしい分野である。

実験動物で笑いを取る研究者も

実験動物学会と共催のシンポジウム「動物実験における3Rsの実践と課題」の中では、筑波大学の三輪佳宏氏から「近赤外線非侵襲蛍光イメージング技術の開発と応用」について発表された。「非侵襲」とは『生体を傷つけない』という意味で、細胞レベルの体内での動きを、近赤外光を使って解析するもの。MRIのようなものを想像するとわかりやすい。発表者が、研究に使うヘアレスマウスの毛の抜け方が面白いと揶揄し、「その顔がミッキーマウスに似ているのだが、本来マウスの耳の色は肌色。ミッキーマウスは黒だけど、本当は肌色でなきゃいけないですね」などと会場の笑いをとったり、蛍光物質を含まない餌の選定に苦労したというエピソードの中で「ある餌を与えたらどんどん体重が減ってきて死んじゃった!」など、終始生命を軽んじるトーンに強い嫌悪感を覚えた。講演後の質疑で「餌の選定のために体重減少で殺してしまうとはあまりに酷い。また、実験動物で笑いを取るようなやり方には憤りを感じる。意識を変えてもらいたい」と抗議した。

動物の犠牲がない科学を求める広告を掲載

毎年、大会参加者には要旨集が配布される。会場案内から日程、各研究の概要等が掲載され200ページ近い。3次元培養皮膚モデルの販売会社や、代替試験の受託企業などの広告も入る。今回、JAVAはシンポジウムへ登壇することもあり、動物保護団体の存在感を示すと共に、研究者に対して動物実験のない人道的科学を求めていることを表明する広告をうった。動物実験に反対する人々や団体は動物さえよければいいと、研究者からは思われている節がある。そうではなく、消費者や患者や色々な立場の人が、動物を含めた命の犠牲のない科学を求めているということを、科学界に発信しつづけていく必要があるからだ。

2014年代替法学会掲載広告

大会要旨集に掲載したJAVAの意見広告

まとめ

今大会長も述べているように、「動物実験代替法」は、市民にも、マスコミにも、学術研究界にもまだまだ浸透していない。私たちJAVAは、世間の関心が向かう後押しをもっとしなければならない。そして代替法学会には、代替法が広がらない要因を解析すると同時に、大会テーマ「過去からの脱却と未来に向けたキックオフ」とした以上、対策を実行に移すキックオフとすることを強く望む。

JAVA講演報告<代替法学会大会>

【日本動物実験代替法学会第27回大会報告】

JAVA 講演
「動物に対する社会倫理の変化:賢明な取組みとは何か?」

2014年12月7日、大会3日目に開かれたシンポジウム8「生命倫理・研究倫理を考える-日本動物実験代替法学会からの発信-」において、JAVAの理事が「エシカル」をキーワードに講演しました。研究界全体を古い体質から脱却させ、動物を犠牲にしない、真に人道的で倫理的なあり方へと向かわせることが、代替法学会に望まれる社会的責任であると訴えました。


141207JAVA講演全スライド(PDF)

広がるエシカル消費
近年「エシカル」という言葉が消費社会で市民権を得てきています。”Ethical”とは「倫理的な、道徳上の」という意味の言葉ですが、ジュエリーやファッション、化粧品など、普段消費するものが、他者、とりわけ社会的弱者からの不当搾取や、社会正義に反することがないか、という点を気にかけた消費行動が、「エシカル消費」「エシカル・コンシューマリズム」と呼ばれ、広がってきています。産業革命によって大量生産大量消費を生み出した英国で誕生したこの運動は、人類の過度な欲望に対する抑制弁としての役割を担っていると言ってもよいと思います。

エシカルと動物
この運動の中心的存在である非営利組織「エシカル・コンシューマー」によれば、倫理的な企業かどうかは、①環境、②人権、③動物、④政治、⑤持続可能性の5分野に設けられている諸条件の達成度によって判断されるといいます。「動物」という分野にはさらに「動物実験」「工場畜産」「動物虐待」の3つの項目が設けられています。「工場畜産」とは動物の生態を無視した、動物の福祉に配慮のない畜産のシステムを指し、「アニマルライツ」あるいは「動物虐待」の項目は、動物に対する虐待的行為の有無、広告を通じて動物虐待を助長していないかどうかといった要件が並んでいます。
動物実験については、化粧品は当然のこと、日用品やペットフードについて、動物実験を行っていないということがエシカルと評価されるには大前提の要件とされています。

ファッションブランドが動物福祉に取り組む・動物福祉を訴える事例

pp_patagonia
【パタゴニア】
アウトドアメーカーのpatagoniaが2014年11月末、取り扱うダウン製品に使用される羽毛が100%追跡可能なものとなったと発表。生きたガチョウから羽をむしり取る「ライブ・プラッキング」という方法で採取されたり、強制大量給餌で悪名高いフォアグラの副産物としてのダウンは、動物福祉に反するとして採用しない、とのこと。
pp_viviennewestwood
【ヴィヴィアン・ウェストウッド】
英国のファッションブランド、Vivienne Westwoodは、2014年の春夏コレクションで、工場式畜産を批判するキャンペーンを展開。“苦しむために生まれてくる動物がいてはならない”と訴えた。なお、MORAL OUTREGEとは「他者の行動が道理に反するものであった場合に抱かれる怒り」と定義されている。

 

いずれも動物の利用自体を否定しているものではありませんが、
消費者が今まで知らずに寄りかかってきた動物虐待システムに大きな一石を投じました。

感謝から具体的消費行動へ
私たちは日々、食べるものや使うものを、選んで購入し、それらを食べて使って暮らしている、そのなかで、確実にだれかの恩恵を受けて生きている。それを頭では分かっているがよくわからない、だからとりあえず「感謝していただきます」といって済ませてきた人が多いと思います。でも今は、その過程で、第三国の人や子供、動物など弱者からの搾取や環境破壊の有無と程度を気にかけ、それを避けようと行動する消費者が増えてきているのだと思います。

「ソーシャル」で善意の拡散
「エシカル」が広がる背景に「ソーシャル」という言葉の広がりがあります。その一つに「ソーシャルネットワークサービス(SNS)」がありますが、その代表格であるツイッターは東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が起きたときに活躍しました。
震災当日、東京都心では混乱のなか歩いて帰る人に向けて公共交通の情報や開放されているトイレの情報が拡散されました。その後、電力消費の自粛や譲り合いが市民の間で自発的・積極的に呼びかけられました。動物の被災についても、動物同伴で入れる避難所の場所や、迷子になった動物の写真や飼い主の情報、あるいは保護している動物の情報を被災地以外のユーザーが収集してハッシュタグをつけてツイートし、その情報を収斂させポスターにして現地に出入りするボランティアの方々が避難所に貼って回るといった連係プレーも行われました。
3.11は痛ましい天災/人災でしたが、SNSは、被災した人・しなかった人に関わらず、多くの市民・消費者に発信力と行動力を与え、その個人の集合体である企業の多くが、自発的に被災地の復興に貢献してきたことは論を俟ちません。

企業の社会的責任
もう一つ「コーポレートソーシャルレスポンシビリティ(CSR)」という言葉があります。企業は、利益を上げるだけでなく、それが属しているコミュニティ自体が持続していくために、人道、あるいは倫理に基づいて、そのコミュニティの一構成員として責任を果たしていかなければいけない、自社だけが潤えばいいとか、株主の意見だけ聞いていればいいというものではない、というものです。
ところで、2013年4月から化粧品・医薬部外品の動物実験廃止に踏み切った資生堂が、CSR活動の一環としてこの問題に取り組みました。2010年6月から4年間、計6回にわたって「化粧品の成分の動物実験の廃止を目指す円卓会議」を開催し、JAVAもすべての回に出席しました。この招集がかかる前の年、私たちは企業名を挙げて都内でデモ行進をしたり、株主総会の会場前で抗議活動を続けていましたので、そのような動物愛護団体をよくぞ招き入れたと思いました。
もちろん、JAVAの参加が資生堂のポーズとして利用されるのではという懸念もありましたが、この円卓会議への参加を通じて、対話の重要性に気づけたことは大きな収穫でした。

代替法学会の社会的責任
対話の重要性という意味で、JAVAは1997年からこの学会の賛助会員となりましたが、代替法という概念がもともと動物実験反対運動を背景に誕生したことを踏まえて、時の執行部の方々が協議して、JAVAの入会を認めていただいたものと思います。
今年で8回目になるチャレンジコンテストや、今回の大会では学生無料参加など、社会に開かれているという意味で、代替法学会はソーシャルレスポンシビリティを、一定果たしていると思いますが、それで十分とは言えない理由は最後に示します。

pp_LUSH PRIZELUSH PRIZE
ここで、学会のウェブサイトでも募集の案内が出されている「ラッシュプライズ(LUSH PRIZE)」の話をしたいと思います。ラッシュとは、英国の化粧品メーカーで、創業以来動物実験を行っていないだけでなく、動物実験の廃止に向けて積極的な活動を展開しているユニークな企業で、2012年、動物実験代替法の研究をしている個人や団体、動物実験廃止に向けた活動に対して賞金を授与する「ラッシュプライズ」を設立しました。毎年、5つの部門で募集し、選考を経て、受賞者には全体で25万ポンド(約4300万円)の賞金が授与されます。私たちJAVAは第一回目のパブリックアウェアネス(世論喚起)部門で受賞しました(※詳細はhttp://www.usagi-o-sukue.org/java03entry.php?eid=00010)。このラッシュプライズの企画運営を行っているのが、冒頭にお話しした、エシカルコンシューマーです。

21世紀の毒性学は1R
2014年11月半ば、ラッシュプライズの3回目の授賞式がロンドンで行われました。授賞式に先駆けて、21世紀の毒性学、21st Century Toxicologyをテーマに、世界の代替法研究をけん引している方々が参加するセッションが行われました。参加した方からの報告によると、このセッションにおけるキーワードは、1R。3Rのうち、これからの毒性学においては、ReductionでもRefinementでもなく、動物を使用しないReplacementが重要である。しかしながら、これまで長らく「毒性試験には動物を使うことが当然」という環境に親しんできた研究者にとって、Replacementの本質を理解すること、Replacementが信憑性のある方法だと認識することは困難を極めている、古い体質から抜け出せない、新しい考え方を受け入れられない人が多い、ということを、どの参加者も指摘していた、ということでした。

人道的実験技術の原則
1959年、ウィリアム・ラッセルとレックス・バーチ(※注1)が、「人道的実験技術の原則」のなかで3つのRを著しました。この「人道的」という言葉は、あるいは「倫理的」とも言い換えられると思いますが、彼らはこう言っております。

もし、我々が行うべき実験を選択する基準を持とうとするならば、多分、人間性という基準が我々が作成することのできる最良のものである。科学における最も偉大な業績は常に最も人道的であり、かつ最も美的に引きつけるものであり、最も成功した時には科学の枢要である美しさと優雅さを感じさせるものである。

pp_3r
第23回大会のシンポジウム登壇時にもお話ししたように、「人道的」という言葉を普通にとらえれば、動物の痛みを取り除くことも、犠牲になる動物の数を減らすことも、動物を実験に使わないことも、いずれも人道的だと言えますが、犠牲は多いより少ない方が良いのは当然のことですから、一般的な感覚でとらえれば「いちばん良いのは動物を使わないこと」、つまり、3RのなかでReplacementが最良、との結論に必然的にたどり着くはずです。
しかし、それをどうしても認めたくない人たちがいらっしゃる。「ラッセルとバーチは動物実験を廃止しろとはいっていない」「3Rは適正な動物実験を行うための原則」というように都合よく換言する方がたくさんいらっしゃいます。まるで「3Rをきちんと守って動物実験をどんどん推進しよう」と言わんばかりです。
pp_jsaae

代替法学会は動物実験推進か
右のスライドは、左が代替法学会の目的、右がNPO法人動物実験関係者連絡協議会(動連協)の目的として掲げられている文章です。動連協とは、動物実験を生業とする関係者による、動物実験の推進を目的に設立されたNPO法人ですが、左右、ほとんど同じ文章です。3Rという考え方は、動物実験を持続可能(サステナブル)にするために生まれたものなのでしょうか?

過去からの脱却と未来へのキックオフ
それは違うと思います。ラッセルとバーチは、自分たちが当座言えることとしてあらわしたものであり、それ以来55年が経過した今、その考え方、人間性、人道、倫理は進歩しています。pp_attitude
つい先日発売になった写真報道雑誌、DAYS JAPANの12月号の「動物たちの感情世界」という特集のなかで、マーク・ベコフ(※注2)という動物行動学者が「だから私たちは、動物たちにとっての苦しみの現実が、私たちが感じるそれとは別物であるのだと思うふりをすることを止めなければならない」と寄稿しています。
人間性がまたベルナール(※注3)の時代に戻ることはあり得ないと思っています。
たしかに、長年寄り添ってきた習慣、慣れ親しんだ方法や考え方、いままで積み上げてきた実績を「間違っていた」「無駄だった」と言われれば、だれしもプライドが傷つくのは当然のことでしょう。
だからこそ、代替法学会には、毒性学も含めた医科学研究全体が、古い体質から脱却して、動物の犠牲を生まない、人道的で、倫理的な研究のあり方へとスムーズにシフトチェンジできるよう、そこで偉大な業績を上げられるよう、大局的観点からアプローチしていっていただきたいのです。
それがまさに、代替法学会に望まれる社会的責任であると言えます。

(了)

  1. *注1 ウィリアム・ラッセル(William Russell; 動物学者)
    レックス・バーチ(Rex Burch; 微生物学者)
    ・1954年、UFAW(Universities Federation for Animal Welfare;動物福祉のための大学連合)から人道的な実験について検討するよう依頼を受け、1959年に「人道的実験技術の原則(The Principles of Humane Experimental Technique)」を著し、その中で「3Rの原則」を提唱した。現在さまざまな国際機関で実験技術の基準として採用されている。
  2. *注2マーク・ベコフ(Marc Bekoff,1945-)
    ・米コロラド大学生態・進化学部教授(有機体論生物学)。ジェーン・グードル博士が主宰する動物の生存権保護活動「根っこと新芽計画」に参画。現代アメリカで動物の生存権と環境問題をリンクさせて新しい活動を展開している注目の研究者の一人(Amazonより引用)
    邦訳済みの著書に「動物の命は人間より軽いのか – 世界最先端の動物保護思想」(中央公論社、2005)がある。
  3. *注3クロード・ベルナール(Claude Bernard, 1813-1878)
    ・フランスの医師、生理学者。晩年に著した「実験医学序説」(1865)では「人間にはヒトを用いて実験する権利はないが、動物を用いて実験する権利はある」「動物にとって苦痛であろうとも人間にとって有益である限り、動物実験は、あくまで道徳にかなっている」「生物現象を分析するためには、生体解剖(vivisection)によって行わなければならない」と述べ、近代の動物実験台頭の基礎を作った。
    ベルナールが無麻酔でイヌの実験を行っていたことに心を痛めていた彼の妻と娘は、動物実験反対運動に傾倒したことでも知られる。

JAVA、2件の解剖をやめさせる

子どもたちに解剖をさせてはならない
JAVA、2件の解剖をやめさせる

青少年による凶悪犯罪やいじめなどが大きな社会問題となり、「命の大切さ」を子どもに伝えることが一層重要視されています。それにもかかわらず、大人たちが子どもに、動物を切り刻み、殺すという残虐行為「解剖」をさせることが後を絶ちません。今回、JAVAは小学生対象の2件の解剖について取り組み、やめさせることができました。

ケース1/小学校の授業でカエルの解剖

神奈川県横須賀市にある「横須賀学院小学校」で、2013年、小学6年生を対象にしたカエルの解剖授業が行われたことがわかりました。この小学校のウェブサイトには、「解剖すなわち『命を学ぶ』授業です。」「切り取っても動き続けるカエルの心臓に、子どもたちの驚きと畏敬の念の混じった眼差しがありました。」など、教師が書いたと思われる報告が出ていました。

 

ケース2/自治体の子ども向けイベントで魚の解剖

東京都新宿区(以下、区)が小学生対象イベント「神田川をしらべよう!」のなかで、神田川の水や川底にいる生き物を調べるといった企画とともに、「魚の解剖 (魚のからだのしくみについて学ぼう)」も企画され、区の広報誌やウェブサイトで参加者募集が行われました。
この企画に疑問を持ち、問い合わせた市民の方からは以下の情報が寄せられました。

  •  解剖の対象となる魚は、神田川からとるのではなく、別に入手するもの。
  •  定員20人。解剖では5人に1匹の魚が配られる。
  •  生きている魚に麻酔かなにかの薬で大人しくさせて、体を切り開き、動いている心臓など体の中を観察する。
  •  解剖の指導は、区の職員ではなく、外部の先生が指導する。
  •  企画・主催のみどり公園課みどりの係は、「命の大切さを教えることにもなる」と説明している。

解剖は義務付けられてはいない

JAVAではこれまで多くの学校の解剖実習を廃止させてきました。しかし、残念ながら、授業の一貫としてまだ実施しているところがあります。文部科学省の学習指導要領では、解剖実習は義務付けられていません。解剖をさせるか、解剖以外の方法で学ばせるかは学校や担当教師の判断で決めることができるのです。

海外では解剖を禁止する国もある

欧米では、従来は動物実験が必要不可欠と考えられていた大学の獣医学部や医学部においてさえも、「動物を殺す非人道的な教育を拒否する権利」を多くの学生たちが主張し始めた結果、動物実験を廃止して代替法を用いる学校が急増しました。すでに米国とカナダでは、獣医学校の約69%以上(32校中22校)が動物を犠牲にする実験・実習をしないで卒業できるようになっており、医学校の約99%(197校中196校)には生きた動物を用いるカリキュラムがありません。
初等中等教育での生体解剖実習については、英国、ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、デンマーク、フランスなどでは、法律で禁止するなどの規制を設けているほどです。

動物虐待と凶悪犯罪には深い関連性がある

『動物の愛護及び管理に関する法律』は、1999年に初めての改正がなされましたが、この改正法が早期制定に至った背景には、頻発する青少年による凶悪事件があります。幼女惨殺事件の宮崎勤元死刑囚、神戸の幼児殺人事件のA少年、さらには、佐賀のバスジャック事件の犯人の少年などが、殺人事件を犯すその前段階において、小動物の虐待を行っていたという事実が判明したからです。また、2002年の子猫を虐殺する様子をインターネットで流した事件は、犯人の厳罰を望む声が裁判所に殺到するなど大きな騒ぎとなりました。この事件の犯人においても、以前からハムスターなど小動物への虐待行為を繰り返していたことが判明しています。最近では、長崎県佐世保市で同級生を殺害した女子高生が、その前段階において繰り返し猫などを解剖しており、また人間の解剖にも興味を持っていたことが報道されています。
解剖実習がきっかけになって、小動物への虐待行為、さらには人間に対する犯罪へとエスカレートする恐れは多いにあるのです。

解剖は生命を卑しむ授業

教育基本法には、「生命を尊ぶ態度を養うこと」も教育の目標として規定されています。6年生の学習指導要領にも「理科」の目標として「生命を尊重する態度を育てる」ことが、そして、道徳の目標として「生命がかけがえのないものであることを知り、自他の生命を尊重する」ことが示されています。
解剖はこれらの目標に真っ向から反する授業です。「生き物を殺すことによって命の大切さを知る」「解剖もその学習方法の一つ」といった考えが通用するならば、動物虐待犯や動物虐殺を繰り返したうえに殺人を犯した者たちは、命の重さを知った心優しい人間ということになってしまいます。

動物を使わない学習方法が、子供たちにとって最適

動物を解剖しなくても、生き物の体の仕組みを学ぶ方法には、コンピュータを使用した学習法、ビデオ、3Dの模型など様々あります。そのような代替法を使用すれば、何回でも繰り返しでき、また児童一人一人が自分のペースで学習できるなど、多くのメリットがあります。
解剖を行った場合と代替法で学んだ場合では、その知識に差はない、むしろ、代替法で学んだ場合の方が優秀であったことが、海外の研究で証明され、論文が発表されています。つまり、子どもたちに生き物の体の仕組みを学ばせ、知識を身に付けさせたいと本気で考えるならば、こういった、動物を使わない方法で学ばせるべきなのです。

横須賀学院小学校は、「二度と行わない」と回答
新宿区は解剖を中止!

JAVAは解剖の問題点を指摘し、横須賀学院小学校には二度と解剖を行わないことを、新宿区に対しては解剖イベントを中止するよう求めました。
後日、横須賀学院小学校の校長からは「今後一切、動物の解剖授業は行わない」との回答がありました。また、この小学校の運営母体である学校法人横須賀学院に所属する中高一貫校、高等学校についても「中学・高校では解剖の授業カリキュラムはない」と確認でき、横須賀学院の児童徒たちは、これから解剖をやらされないですむのです。
また、新宿区からは、解剖イベントが行われる前に「解剖は行わない」との回答があったのです。

VICTORY!コーセーが動物実験廃止を公表!

コーセー「2013年上期より廃止」「今後も行わない」
動物実験廃止企業が新たに誕生しました!

 

去る9月10日、JAVAを含む3つの動物保護団体で構成する「美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会(CFB)」がコーセー本社を訪れ、化粧品の動物実験廃止を要望。

それに対して9月29日、コーセーより「2013年上期より動物実験を廃止しており、今後も行わない」との書面による回答が届きました。資生堂、マンダムに続く快挙です!

2014.9.10コーセーに署名提出

昨年の資生堂、マンダムに続いて、動物実験の廃止を決断・公表する企業が新たに誕生しました!
「美しさに犠牲はいらない」と声をあげ続けてくださった皆さんの思いが実を結びました!

詳しくは、ウサギを救え! 化粧品の動物実験反対キャンペーンのサイトをご覧ください!

市民病院で、子どもがブタの心臓で医療体験

<教育プロジェクト>

子どもがブタの心臓で医療体験
横浜市立市民病院、今年から動物使用を廃止!

2014年8月23日、横浜市立市民病院(以下、市民病院)で開催された、子どもに医療の現場を体験させるイベント「一日メディカルパーク2014」のなかで「ブタの心臓に人工弁を縫合する体験コーナーがあった」と市民の方々からJAVAに通報がありました。
この様子はNHKのニュースでも流され、映像を見た方たちからは「小さな子どもたちが動物の臓器を触っている光景にゾッとした」「医療機関が命を粗末にしている」「佐世保事件を誘発させるものだと思う」といった声がありました。

医療訓練には多くの代替法がある

今回のイベントでも、本物のブタの心臓を用いる必要性はなく、模型で体験させれば十分であるにもかかわらず、あえてブタの心臓を用いたというのは、「イベントをインパクトのあるものにしよう」「子どもたちを驚かせよう」といった主催者側の軽率で安易な考えがあったとしか言いようがありません。
採血、挿管や手術をはじめとした医療技術を学ぶ方法には、生体や死体を使用する以外に、コンピュータシミュレーション、精巧なマネキンや3D模型など様々な代替法があります。これらを使って学習すれば、手技の過程を繰り返し訓練できたり、一人一人が自分のペースで行うことができるというメリットがあります。このように動物を用いない学習・訓練プログラムやキットは多数開発され、欧米の医学部や獣医学部をはじめ、医師の訓練にも利用されています。

献体制度とは明らかに異なる

獣医学生の実習において、飼い主から提供を受けた動物の死体、つまり献体を利用する方法が欧米では多くの大学で採用されています。死体という点は同じでも、この献体は、「その動物が治療を施すことができず、そのまま生かしておくことの方が苦しむことになる重大な傷病を患い、獣医学的な判断と、心からその動物を思う飼い主による判断によって、苦痛のない方法で死に至った」、つまり、安楽死となった動物や自然死した動物の遺体を飼い主の承諾のもと獣医学実習に利用しています。人間の献体システムとただ一つ違うのは、その動物の意思は確認できないので、飼い主がその代理をしている点です。
それに対して、今回利用されたのは、臨床現場の医師や医学生が実習等に用いるブタの心臓、つまり食用や実験用として殺されたブタであり、献体の状況とはまったく異なります。「どうせ処分するか腐敗する臓器を活用してやっている」「教材にすることで無駄にしないでやっている」といった感覚に陥り、死体をモノのように扱うことになり、参加した子どもたちのみならず、病院職員全体の生命軽視にもつながる恐れがあります。

JAVAの指摘で、動物使用が廃止となる!

JAVAは横浜市に対して、臓器の利用であっても、動物の体を実験・実習に利用するという行為には問題があることを指摘した上で、生体・死体を問わず、二度と動物を用いないよう求めました。しかし、市民病院の回答は、「今後開催する講座については、JAVAからの意見を踏まえ、検討していく」に留まっていました。
そのため、JAVAでは翌2015年の開催も注視していたところ、今年の告知では、動物やその臓器を用いた講座は見受けられませんでした。そして、このイベントの担当である市民病院の総務課長に確認し、「前年のJAVAの指摘を受けて、2015年より、『一日メディカルパーク』では、生体・死体(臓器を含む)を問わず、動物を一切用いないことにした」との回答を得ることができたのです。

PIG
このようにJAVAの指摘を受け入れる機関もあれば、頑なに解剖実習に執着する教育機関もあります。子どもや社会への影響を考えた場合どうすればいいのか、これからもJAVAは主張を発信し、活動を続けていきます。

代替法学会第26回大会報告

日本動物実験代替法学会第26回大会報告
大会テーマは「動物実験代替法の基礎科学と新展開」

2013年12月19日(木)~21日(土) 京都テルサ(京都市)にて

第26回目の大会は、大阪歯科大学准教授の今井弘一氏を大会長に迎え、京都にて開催された。大会テーマは、「動物実験代替法の基礎科学と新展開」。ナノテクノロジーやiPSといった比較的新しい分野から、化粧品、創薬、化学物質など常にテーマとされてきた分野まで様々な研究発表が行われた。また、初めての試みとして、日本動物実験代替法学会の英文学会機関誌「AATEX」のワークショップが企画された。興味深かった発表をいくつか紹介する。

ナノ材料のために増える動物実験

「ナノ」といった言葉を耳にしたことはあるだろう。ナノテクノロジーとは、ナノメートル(10億分の1ミリメートル)といった原子や分子のレベルで物質を制御する技術で、1950年代から始まったと考えられている。米国が2000年に国家戦略として研究する分野に定めたことから活発化された。
現在、この技術はエネルギー、医療、IT、材料など様々な分野で研究利用がされている。私たちに身近なところでは車、携帯電話、化粧品、食品、繊維などがあるが、例えば、“細胞と細胞の間を通ることができるよう成分をナノサイズ化した美容液”といったものがわかりやすいだろう。しかし、サイズを小さくするだけの技術ではないうえ、知らぬ間に利用された製品は増えているのに、安全性に関しては以前から懸念する声がある。
今回の代替法学会でも、ナノに関する発表が5件あったが、現在は、ナノ材料よりも小さいサブナノマテリアルまでが開発実用化されているそうだ。だが、まだまだデータがないため、動物実験をやらざるを得ない、という言葉を複数の研究者から聞いた。ナノ物質を、麻酔をかけたラットの気管内に注入する、マウスの尾の静脈に注射して投与する、さらには試験物質の心への影響をみる「こころの安全科学」と銘うった行動実験までも行われていた。迷路試験やワイヤーハング試験(金網にしがみつかせて落ちるまでの時間を計る)といったものである。それらに対して、代替法学会に所属していない研究者のみならず学会役員の研究者からも、代替法学会の大会であるにも関わらず、動物実験を行いその報告になっていることについて謝罪が述べられた。そして、そのことに対して、使用した動物数は最低限であったことや将来的に動物の犠牲をなくしたい、といた説明がなされた。しかし、いかに弁明しようが、私たちからすれば言い訳にしか聞こえない。動物実験のデータを少しでも必要とするスタンスでいては、動物実験代替法の飛躍的な発展などありえはしないだろう。代替法学会には180度転換するような思考を強く望む。

化粧品業界の皆さん、代替法開発がアリバイの時代は終わりました

動物実験代替法の誕生は、1970年代から盛り上がった化粧品の動物実験反対運動がきっかけだ。だから、国際的にみて代替法研究は化粧品業界がリードしてきたと言ってもいい。日本の代替法学会でも毎年化粧品企業の研究発表が多くのシェアを占めるが、今大会でも化粧品業界の取組についてシンポジウムが開かれ、資生堂、ロレアル、P&G各社の取組が発表された。資生堂は、動物実験廃止に踏み切るために代替法による独自の安全性保証体制を確立させたが、その取組について具体的に報告があった。動物実験廃止に及び腰な化粧品大手各社にとってはよいケーススタディになったはずだが、各社がこの報告を真摯に受け止め自社内でフィードバックしていくことを期待したい。ロレアルは化粧品シェア世界一、P&Gは日用品シェア世界一。代替法開発をけん引するのは当然といえば当然である。世界の化粧品業界における代替法開発のリーダーシップについて喧伝するロレアルに、質疑では「傘下に収めているザ・ボディショップのキャンペーンの甲斐あって日本でも化粧品の動物実験反対の機運が高まってきた。ぜひロレアルグループ全体で廃止を決断してほしい」と迫ると「うちではやっておりませんので…」とたじろぐ発表者。公の場で噓はいけない。
ところで、この四半世紀近くにわたって粛々と進められてきた代替法開発、国に対して企業が承認申請する場面でも、2006年7月には「公的に認められた代替法なら動物実験の代わりに用いても差支えない」とされ、2011年2月にはJaCVAM(日本動物実験代替法評価センター)のウェブサイトに掲載されている情報の活用促進が謳われ、2012年4月26日以降4つの代替試験法について「ガイダンス」という名の手引書が示されてきた。つまり「代替法があるものは、動物実験ではなく代替法を用いるように」という厚生労働省の意向が、「事務連絡」という形で時期を追うごとに強く示されてきたのだが、では、これによって、動物実験は減り、代替法による申請が増えているのだろうか?この点について、日本化粧品工業連合会に加盟する企業に対してアンケート調査が行われているとの報告があった。この結果についてまもなく公表されるとみられているが、「動物実験を代替せよ」との命を、業界がどこまで本気で受け止めているのかに注目していくつもりだ。まさかとは思うが、ここまで行政側から手取り足取りのガイドを受けながら、代替法による申請が増えていなかったとしたら、化粧品業界は「無用な動物実験」を平然と続けていることになる。

動物実験反対団体が動物の福祉を遅らせている?

「実験動物福祉」をテーマに、1日目にはシンポジウムが、2日目にはランチョンセミナーが、3日目には市民公開講座が開かれた。黒澤努元学会長が主導したこれら3つの企画に共通していた裏テーマは「動物権利擁護団体が実験動物福祉の向上を遅らせている」というものだった。「実験動物福祉とは、動物実験の必要性を理解している科学者の中から出てきた取組であるから、動物実験そのものに反対する活動家が、実験動物福祉や代替法3Rの考え方を広めるのはおかしい」という“縄張り争い”に始まり、「2012年の動物愛護法改正で、実験動物福祉や3Rの向上が置き去りにされたのは、偏った動物実験反対団体がそれを主張したから(いらぬ反発を受けて改正に結びつかなかったから)だ」という責任転嫁まで行われた。ここではっきりさせておきたいのは、①3Rという原則は「すべての実験動物を代替する」という最終的なゴールにたどり着くまでの過渡的な指標であってそれ自体で完結ではない、②先の法改正で実験動物福祉や3Rなど動物実験にまつわる項目が手つかずとなったのは「動物実験、実験動物に関することはすべて自主管理でやるから何も改正してくれるな」という動物実験実施者サイドの強力なロビーイングによるものだった、ということである。ミスリードも甚だしい。
シンポジウムでは、EUの演者が“Ultimate goal is to replace the use of animals(最終的なゴールは動物の使用を置き換えることだ)”と明言したのを受けて、座長や日本の演者に「3Rを標榜する立場で目指すべき最終的なゴールはどこか」と問うたが、明確な回答は返ってこなかった。残念なことに、この「最終的なゴール」を見据えることができていない研究者が代替法学会の中にもたくさんいる。これでは「動物実験をやりやすくするために3Rを隠れ蓑にしている」といわれても仕方がない。発端に「倫理」が介在する代替法学会は、科学界全体を人道的にリードする使命を帯びているともいえる。5年10年という近視眼的なスケールで物事をみるのではなく、大局的な視野に立って科学の在り方をとらえ、数十年先を見据えて適切な進路をとる研究者が増えることを願い、叱咤激励としたい。

博物館での死体解剖イベント、中止となる!

埼玉県立自然の博物館(以下、博物館)で、2月8日(土)に、交通事故死した動物の死体を解剖するイベントが行われることが発覚しました。JAVAや多くの方からの抗議を受け、博物館は解剖の中止を決定しました。

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死体解剖イベントの内容とは

下記は、自然の博物館がホームページに掲載したこのイベントの告知です。

2月のイベント
自然史講座
2月8日(土)
筋肉の作りを知ろう
【内容】動物の体の中をのぞいてみよう。動物を解剖して、筋肉のつき方や内臓の位置を学びます。
【時間】10:00~15:00
【場所】自然の博物館 科学教室
【対象】高校生以上
【定員】10名(定員を超えた場合は抽選)
【費用】200円

この告知を見たり、博物館に問い合わせたりした市民の方々から、JAVAには次のような情報や意見が寄せられました。

  •  いくら死体だといっても命があったものなのだから、切り刻むなんて良くない。
  •  死体はモノじゃない。解剖をやめさせてほしい。
  •  高校生にそんな体験をさせるとは非常識。
  •  解剖の対象となる動物は、博物館が保管している交通事故死したタヌキやハクビシンの死体の予定。
  •  筋肉の観察がメインになるので、ある程度、皮をはいでから見る。余裕があれば内臓の観察も行う。
  •  10:00~15:00と長丁場になるのは、慣れていないとお腹にメスを入れて開くだけで午前中いっぱいかかる。あとは学芸員の解説なども1時間はかかるため。
  •  冷凍庫から出すと、固まっていた血が解けるので血は結構出る。特に打ち所が悪くて出血していた場合。
  •  臭いはかなりきつい。 

 

死体の利用=殺した行為の容認

「死体の利用」であれば、その動物に痛み、苦しみ、恐怖を味わわせるといった問題はありませんが、その動物たちは寿命をまっとうしたのではなく、人間によって殺されたことをまず考えるべきです。
死体を解剖するということは、その前段階において、生き物を殺す行為(今回の場合は車で轢き殺す)が必ずや必要になるわけです。よって、「死体なら構わないだろう」と死体の解剖をするなら、生き物を殺す行為をも容認するもの、ということになるのです。

 

犠牲になる動物をなくす努力をしなくなる

野生動物たちが車に轢かれる大きな原因は、山を開発し道路を通したこと、つまり、野生動物たちの住処を人間が荒らしたことにあるわけで、その原因はすべて人間にあります。本来なら、どうやって犠牲になる動物をなくせるかを最優先に考え、対策に全力を講じるのが人間の責任です。
不幸にも人間のせいで死に至った動物を「有効利用」しようという考えは、殺したことへの罪悪感を薄めることにもなります。それは、国民の動物愛護意識や生命尊重の念を低下させ、ひいては事故の防止に全力を傾けようとしなくなります。これでは、野生動物の交通事故は永久になくすことができないばかりか、減少させることすらできません。

 

献体制度とは明らかに異なる

獣医学生の実習において、飼い主から提供を受けた動物の死体、つまり献体を利用する方法が欧米では多くの大学で採用されています。死体という点は同じでも、この献体は、「その動物が治療を施すことができず、そのまま生かしておくことの方が苦しむことになる重大な傷病を患い、獣医学的な判断と、心からその動物を思う飼い主による判断によって、苦痛のない方法で死に至った」、つまり、安楽死となった動物の遺体を飼い主の承諾のもと獣医学実習に利用しています。人間の献体システムとただ一つ違うのは、その動物の意思は確認できないので、飼い主がその代理をしている点です。
交通事故死した動物たちを解剖することは、こういった献体利用とは異なり、「どうせ処分するか、腐敗する死体を活用してやっている」「教材や剥製にすることで無駄にしないでやっている」といった感覚に陥り、死体をモノのように扱うことになり、参加者たちの生命軽視にもつながる恐れがあります。

 

解剖では命の大切さは学べない

「動物をモノや機械として扱うことはできない」のが人間としての倫理観です。死体だからと情け容赦なく切り刻むことなどできるものではなく、また安易にすべきではありません。ましてや、不幸にも人間によって殺された動物たちの死体を教材にするとは許されることではありません。
命の大切さは、命あるもの、命あったものを丁重に扱い、尊重してこそ学べるものであって、解剖して学べることではありません。しかも、高校生のような多感な時期の青少年が、博物館の指導で行われるイベントに参加したら、「動物の体を解剖するのはよいこと」という誤った認識を持ちかねません。

 

知識を身に付けさせるなら、代替法で

生き物の体の仕組みを学ぶ方法には、生体や死体を解剖する以外にも、コンピュータを使用した学習法、ビデオ、3Dの模型など様々あります。
コンピュータを使った代替法を使用すれば、解剖の過程を何回でも繰り返しでき、また一人一人が自分のペースで解剖を行うことができるというメリットがあります。博物館が、市民に動物の体の仕組みを学ばせ、知識を身に付けさせたいと真剣に考えるのならば、こういった代替法を用いるべきです。

 

JAVA、館長に中止を要請

JAVAでは、井上尚明館長に対し、死体の解剖の問題点を指摘し、次の事項を求めました。 

  1. 2月8日に予定されている動物の解剖イベントを行わないこと
  2. 生体、死体を問わず、今後二度と、動物の解剖を市民に行わせないこと
  3. 学芸員であっても、生体の解剖は行わないこと

 

解剖の中止決定!!

後日、JAVAからの中止を求める要望書に対して、井上館長より、以下の文書回答がありました(一部抜粋)。

要望1につきましては、ご意見をいただき改めて内部で検討した結果、今回の事業では解剖は行わず、既存の博物館資料を使うなど、別の方法で動物に関する理解を深めることといたしました。

要望2につきましては、今後は、様々なご意見があることを踏まえ、解剖を目的とした講座ではなく、より総合的に生命の尊さや動物の体のしくみを学ぶことのできる事業を検討してまいります。

要望3につきましては、学芸員による動物の生体の解剖はこれまでも行っておらず、今後も実施の予定はありません。

 

世間では、「死体の解剖にまで反対するの?」「痛みや苦しみを感じないのだから、教材にして有効利用したほうがいいのでは?」といった意見もあります。しかし、JAVAは、ものを言わぬ動物たちの権利を守り、動物たちにやさしい社会にしていかなくてはならないと考えています。動物の命の尊厳を軽んじていては動物実験の廃止は実現できません。そういったことからも、「死体の解剖」についても動物たちがいかにして殺されたかを考え、そして、犠牲になる動物たちをなくすためにどうしたらよいかを最優先に考え、決して「有効利用」をすることを認めてはならないのです。

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