文科省に署名を提出しました
2025年7月31日、JAVAとPEACEは、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)を担当する文科省ライフサイエンス課の倉田佳奈江課長、西山隆宏生命科学専門官、松井大地ライフサイエンス課生命科学研究係長と面会し、NBRP「ニホンザル」の廃止を求める22,730名分の署名と要望書を提出しました。
【要望事項】
- NBRP「ニホンザル」プロジェクトは、第五期をもって終了させてください。
- 第六期の公募において、ニホンザル以外の動物種に関しても、できる限り採択を減らし、動物実験ではない研究手法の発展につながるプロジェクトをサポートしてください。

私たちからは、要望書の中でも指摘した下記の4点を中心に、このプロジェクトを廃止の必要性を強く主張しました。
1.プロジェクトのサルを使った実験は残酷なものであり、国民は受け入れがたい
提供される子ザルたちは、母ザルから引き離され、長距離・長時間輸送の負担を強いられて、全国各地の研究機関に送られる。
主に脳や神経系の実験に使われているが、頭を切開して脳に電極をつけられたり、意図的に脊椎を損傷させられたり、盲目にされたり、薬物で臓器を破壊されたりといった、非常に残酷な実験手技を受けていることが研究論文からわかっている。そして、実験終了後には殺処分される。
2.情報の公表が不十分で、国民にその実態を隠しつづける、不透明なプロジェクトである
- これまでの「繁殖母群のサルの年度ごとの導入数」「繁殖母群のサルの導入元」「サルの繁殖数」「サルの提供先と提供先ごとの頭数」など、根幹となる情報すら、プロジェクトの運営機関である京都大学と生理学研究所は一切公表しない。
- 委託先「奄美野生動物研究所」で飼育するサルたちの処遇も隠し続ける。運営機関に繰り返し質問してきたが、2021年より2024年まで「検討中」との回答から進展がなかた。やっとのことで、2025年7月に京都大学NBRP「ニホンザル」のウェブサイト上で、両運営機関の敷地内において、実験に用いることなく全頭飼養することが公表された。しかし、どのような環境でサルたちが飼養されるかは不明のままである。なお、この「奄美野生動物研究所」への数千万円規模の委託金額についても公開されていない。
3.提供実績は当初の目標を大きく下回り、分担機関は繁殖・提供を終了するなど、プロジェクトが縮小傾向にある
実験に使われるニホンザルの数は減っており、NBRP「ニホンザル」の提供実績は、2012年度~2024年度平均で70頭弱と当初の目標である年間300頭を大幅に下回っている。
繁殖・提供施設も、当初、2か所あったが、2018年に京都大学だけとなり、その京都大学も全飼育頭数(繁殖群・育成群)は右肩下がりとなっている。
「動物を実験に用いることからの脱却」の国際潮流と併せて鑑みても、今後、ニホンザルの需要が増えるとは考えられず、このNBRP「ニホンザル」に将来性はない。よって、速やかに廃止するのが妥当である。
4.「動物を実験に用いることからの脱却」という世界の流れに逆行している
科学において動物の使用を避ける方向は、近年ますます強まっている。EUの化学物質の安全性評価における動物実験の段階的廃止に向けたロードマップ策定、米国の医薬品承認における動物実験を義務付けしないFDA近代化法2.0の成立や、抗体医薬品等の開発における動物実験廃止に向けたロードマップ策定など、いくつもの国で、動物を実験に用いることをやめ、動物を用いない新しい研究手法への転換が進められている。
そして、私たちは、動物実験を行っているNBRPに反対しているのであって、動物を用いなければ、その限りではない、動物を犠牲にしない観点と医療分野をはじめとした科学の発展の観点から、提供するリソースを動物ではなく、動物実験ではない研究手法の発展につながるリソースに転換させることを求めていると伝えました。
倉田課長は、「代替法だけではまだ十分とはいえないと聞いているので、現時点では、代替法か動物実験かどちらか一方という段階ではない」としながらも、「代替法の技術開発についても、しっかりやっていきたい」「改善できるところは改善していきたいと思っている」といった前向きな姿勢を示し、私たちからの指摘・意見については、関係者と共有してくれるとのことです。
奄美から移送されたサルの飼育環境
京都大学NBRP「ニホンザル」のウェブサイトにおいて、「奄美野生動物研究所」に委託飼育させてきたサルたちは、今年度から両運営機関の敷地内で実験に使うことなく飼養していくことが公表されました。しかし、どういった環境で飼われるかの説明がなく、奄美での飼育環境より良くなっているのか、それとも悪化しているのか気になっていると伝えました。
私たちは、自然の環境に近く、福祉に配慮された環境で、奄美から移送されたサルたちが余生を過ごせるようにすべきと考えることから、文科省に運営機関に対する指示を求めました。
文科省は、プロジェクトに関して、定期的に現地視察をして確認しているということです。倉田課長は、「飼育環境については改めて確認はしたいと思うが、すごく狭いところで飼っているとかは決してない」と述べ、また、「殺処分をすることもない」と明言しました。
プロジェクトの第六期について
国民の反対の声も考慮して!
現在進行中のこのプロジェクト第5期が来年度まであるため、第6期については、まだ何も決まっていないとのことでした。
「大学をはじめとした研究やイノベーションを支えるのが文科省の重要なミッションである」との主張が何度かありました。研究者たちは、ニホンザルの提供やニホンザルを使った研究は必要と言うでしょう。一方で、署名をしてくれた人たちをはじめ、多くの国民がこの「ナショナルバイオリソースプロジェクト『ニホンザル』」に反対し、廃止を望んでいることから、国民の声もきちんと聞き入れてもらいたいと強く要望しました。

文科省前で「動物実験反対!」アクション
同日、文科省庁舎前にて、JAVAとPEACEの会員たちと横断幕やプラカードを持って立ち、「ナショナルバイオリソースプロジェクト『ニホンザル』を廃止してください!」「動物実験反対!」とシュプレヒコールを上げて訴えました。また、通行人の皆さんには、このプロジェクトについて説明し、ご協力いただきたいアクションをまとめたチラシを配布しました。昼休みの時間帯を狙って実施したため、道行く人も多く、注目してもらうことができました。
