転機:FDAとNIH、動物実験の削減に取り組むことを表明<米国>

2025年10月31日

米国食品医薬品局(FDA)は米国国立衛生研究所(NIH)と連携し、前臨床安全性試験における動物実験削減に関するワークショップを開催。これはFDAのロードマップ公表を受けたもので、ヒトに特化した研究手法への連邦政府の関心の高まりを示している。

開会挨拶でFDA長官Martin Makary博士は、動物実験代替の目標を強調し、科学の進歩や効率化に加え、動物の尊重と保護の観点からも重要だと述べた。

Makary博士およびシニアアドバイザーのTracy Beth Høeg博士は動物実験の代替による科学的、経済的、倫理的な利点を強調し、現代科学は、ヒトの健康状態の改善と、研究や実験における動物使用の削減のために、ヒューマンバイオロジー(ヒトの生物学)に重点を置く方向に進んでいる、と指摘した。
そして、非動物試験の成功例の公開が、スポンサーや投資家の信頼を得ることに寄与し、それにより導入が促されるという指摘もあり、FDAはこれらをサポートするために、動物試験を実施しない新たなアプローチであるNAMs(New Approach Methodologies)の使用例の公開と規制方針を策定すると発表した。
さらに、多くの企業がグローバルに活動していることを認識し、国際的な取り組みをしていくことも約束した。NIHと連携して、既存のヒト臨床および非臨床データの使用を増やし、ヒトの安全性予測モデルを強化する。
また、Høeg博士は、FDAが即時廃止できる動物実験の分野として、貝類毒性試験、狂犬病およびレプトスピラ症ワクチン試験、タンパク質品質評価、発熱性物質試験、皮膚刺激性試験などを挙げた。

一方、NIHのNicole Kleinstreuer博士は、動物実験のみを対象とした研究提案の募集を停止することを明らかにした。今後は全てのNIHの資金提供の機会において、動物を使用しない、ヒト特異的な手法が明確に考慮されるようになる。この方針変更は長年イノベーションの妨げとなっていた障壁を取り除くものである。

PCRM〈*1〉は、現代的でヒト関連性の高い科学的アプローチの推進に向けたFDAとNIHのリーダーシップと取り組みを高く評価する。これらの変更は動物使用の削減とともにバイオ医薬研究および安全性試験を改革するための重要な一歩である。より倫理的でヒトの生物学的特性に合致した手法を優先することで、これらの取り組みはヒトの健康にとってより正確で効果的な成果をもたらすことが期待される。
この進展は、ヒト関連の非動物研究を支持してきたPCRMの長年の働きかけを反映している。私たちはこれを歓迎し、引き続き規制当局、研究者、政策立案者と連携しながら動物実験に代わるヒトの健康に真に役立つ科学を推進していく。


  1. *1Physicians Committee for Responsible Medicine(責任ある医療のための医師委員会)/米国

A Turning Point: FDA and NIH Commit to Reducing Animal Testing(PCRM)

TOP