第一回「化粧品の成分の動物実験廃止を目指す円卓会議」に参加

2010年6月2日

2010年3月、資生堂が公式ウェブサイトで「化粧品の動物実験廃止に向けた資生堂の取り組み」を公表して間もなく、資生堂からJAVAに対して円卓会議への参加要請がありました。当初は、「大きくなってきた動物実験反対の声を鎮めるためのポーズとしてJAVAを取り込もうとしているのではないか?」など、その真意を測りかねていましたが、円卓会議という場で改めて資生堂に私たちの主張をきちんと伝えるべきであり、またそこでの議論に世間の注目を集めていくことも動物実験廃止の実現への大きなきっかけになるのではないかと判断し、参加要請を受けることを決めました。

2010年6月2日。資生堂の汐留オフィスの会議室(東京)にて開かれた円卓会議には、資生堂の担当者およびJAVAを含め全10名がテーブルを囲みました。第1部では参加者がそれぞれの立場での考え方や取り組み内容、資生堂に求めることを話し、後半の第2部では第1部の内容を受けての意見交換が行われました。(各参加者の意見については資生堂の公式サイトをご覧ください)

参加者(敬称略)

1(司会)IIHOE 人と組織と地球のための国際研究所 代表川北 秀人
2弁護士浅野 明子
3NPO法人動物実験の廃止を求める会 理事亀倉 弘美
4日本動物実験代替法学会 元会長田中 憲穂
5日経BPコンサルティング プロデューサー中野 栄子
6社団法人日本動物福祉協会山口 千津子
7動物との共生を考える連絡会山崎 恵子
8日本トキシコロジー学会 理事長吉田 武美
9株式会社資生堂 執行役員岩井 恒彦
10株式会社資生堂 品質評価センター主幹研究員板垣 宏

「動物実験は必要」の偏見はいらない!

JAVAからは動物実験の全面的廃止を求める立場からプレゼンテーションを行ない、インターネット上で募った皆さんからの意見のすべてを載せた資料を参加者全員に配布しました。一方で、他の参加者からは「(新製品の開発力維持のためには)動物実験はやめてほしくない」「動物実験のすべてがむごいというわけではない」「現段階では全廃は難しいのでは」「消費者すべてが動物実験に反対しているわけではない」など、後ろ向きともいえる意見が相次ぎ、驚きを隠せませんでした。資生堂が自ら「廃止を目指す」と目標を掲げた会議なのだから、議論はその目標をいかにして確実に実現させるかに集中するべきではないでしょうか。また、来年の3月には「自社の動物実験施設を閉鎖する」と決まっているにもかかわらず、“動物福祉”の観点から出された「資生堂の動物実験審議会に社外から第三者を」という要望には違和感を覚えました。今この段階で必要なのは、第三者の目を入れて動物実験にお墨付きを与えることではなく、いかにして早期に犠牲をゼロにできるかを模索することです。このような「動物実験の廃止」ではなく「実験動物の福祉」を求めるという考えは、長い間社会全体が「動物実験は必要だからなくすのは難しい」という先入観に絡めとられてきた結果だと言えるでしょう。

中国へ規制緩和の外圧を

資生堂からは「中国は、他国から輸入する化粧品に対して、新規成分を含む場合に動物実験を義務付けている。全廃へのネックとなるが中国のマーケットは二桁の伸びなので無視はできない」と実情が説明されました。しかし、日本も薬事法が改正される2001年までは、今の中国と同じ状況でした。当時欧米など他国の産業界から規制緩和を求める声が起こり、過去日本で使用されたことのない成分でも他国で使われているのであれば動物実験をする必要がなくなったのです。ですから同様に中国も外圧で変わる可能性があります。この状況を変えるために企業だけでなく行政や市民団体が連携して中国に働きかけていこう、との提案もなされました。
また「動物実験廃止を実現するには代替法開発を避けて通れない、資生堂はもっと代替法開発に力を入れてほしい、代替法の存在をもっと広めるためにも円卓会議をオープンにして世間の関心を高めるべき」という意見もありました(なお、資生堂は円卓会議の直後のプレスリリースで、資生堂が持っているアレルギー試験の代替法の特許から得られるロイヤリティ収入を、代替法研究の進展のために日本動物実験代替法学会に全額寄付することを発表しています)。

今後、円卓会議を真に実りあるものとするためには、資生堂にとって重要な「ステークホルダー」でもある厚生労働省やPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)にも円卓会議の場に参加するよう、資生堂は働きかけ、厚生労働省などの規制側の意識を変えさせることも必要です。

円卓会議でJAVAが訴えたこと

(プレゼンテーションからの抜粋・まとめ)
JAVAが化粧品キャンペーンを始めた1995年当時、化粧品のために動物実験が行われていること自体が国民や消費者にはほとんど知られていませんでした。JAVAは化粧品メーカーにアンケート調査を行い、動物実験していないメーカーを紹介するリストを作るなど、しばらくは動物実験していない会社を応援する形でこの問題を広げていこうというスタンスで取り組んできました。
2003年にはEUで動物実験禁止の化粧品指令が出され、2004年には完成品の実験禁止、2009年には原料の禁止に加え、日本をはじめ他国から輸入販売される化粧品とその原料も対象となりました。この動きに沿って日本の業界も自主的に動物実験を廃止せざるを得ないはずが、残念ながら現状は一向に変りませんでした。
そこで昨年、日本最大手である資生堂に対する署名運動を始め、わずか4ヶ月間で集まった45,882名もの署名を昨年の11月26日直接提出しました。しかしこの要望に対する資生堂からの回答はいつもと変わらない定型回答でした。
その後、今年3月に入って資生堂は「2011年3月」「2013年3月」というように動物実験廃止の期日を設定されましたが、化粧品の動物実験は、法律で禁止しなくても、企業の自主的な判断によって即時の廃止が可能です。読売新聞の記事にもある「新規原料の開発から従来原料の活用に軸足を移す」というコメントのとおり、代替法が確立されていなくても廃止が可能であることを、資生堂自身が述べています。ここで改めて私たちは、2013年より早期に、他社への委託も含めた動物実験の全面的廃止を求めます。欧米に「配慮」でも「追随」でも「迎合」でもなく、2013年を待たずに「動物実験完全廃止」の先陣を切ることができれば、動物実験を行っている欧米の大手メーカーに明らかに差をつけることができるはずです。
この間、資生堂が動物実験していると知った欧米の消費者たちから「日本はバーバリアン(野蛮人)だ」とのコメントがネット上に流れました。日本のトップ企業が動物実験をしていることで、日本全体が野蛮だといわれているのです。この不名誉な評価を回復するためにも、一番乗りで動物実験を完全に廃止すべきです。
日本でも、今回の読売新聞のニュースの後「結局これから3年は動物を殺し続けるのか」「どれだけの血が流れるのか」とSNSなどで言われています。多くの人々が資生堂の動向をウォッチをし、期待をしています。
以下は、インターネット上で資生堂の動物実験について意見を募集したところ届いたメッセージです。

「化粧品の動物実験のことを知ってから、私の生活は一変しました。今までこんなことも知らずに生きてきた人生を、悔みました」
「綺麗な広告や飾った商品を見ても、うわべを繕った美しさしか見えず、募るのは虚しさばかり」
「我々消費者は、動物に残酷な実験を強いてまで美しくなりたいとは微塵も思っていません」
「資生堂のCMは動物達の悲鳴にしか聞こえない!」
「資生堂さんなら本当の美とは何かわかると思います」
「日本の自慢できる日本初の動物実験完全廃止老舗の大手会社になって下さい」
「他の生物の犠牲の上に、美しい椿の花は決して咲かないと思います。どうか、椿の花に恥じない、凜とした企業理念を確立してください」
このような消費者の声に真摯に耳を傾け、2011年3月あるいはそれより早く完全廃止を実現されるよう改めて強く求めます。

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