<内部告発>北里大学獣医学部で、牛の無麻酔放血殺

JAVAに届いた内部告発
北里大学獣医学部で、牛の無麻酔放血殺

届いた内部告発

1月下旬、北里大学獣医学部に関する次のような内部告発文がJAVAに届きました。

  • 平成26年12月19日の午後に病牛の病理解剖が行われた。
  • その場において、大動物臨床学の教授が、その牛を食べようと言い出し、獣医病理学の准教授が同意した。

  • その牛は無麻酔放血殺させられ、苦しそうにうめきながら死んでいった。

  • 解剖中に肉も取られた。

  • 大学に訴えたがなにもない。大学外部からも訴えてほしい。

告発者の特定につながる恐れがあるため、原文掲載はできませんが、悲痛な思いが伝わってくる手紙でした。

残酷かつ不適切な「無麻酔放血殺」

「無麻酔放血殺」は、牛の意識がはっきりした状態で頸動脈を切り、放血させ、時間をかけて失血により死に至らせるという、牛に多大な苦痛・苦悶をあたえる残酷な方法です。国内の獣医大学で採用されている教科書においても、牛の安楽死の「許容できない方法」として「放血」が挙げられています。「放血」する特殊な場合には「麻酔下で行う」とも書かれていて、牛に最適な麻酔薬として「バルビツレート」が紹介されています。JAVAが2010年に、社団法人(現公益社団法人)日本獣医学会に対して、無麻酔放血殺は安楽殺か否か照会をしたところ、「安楽殺ではない」との明確な回答がありました。
動物の愛護及び管理に関する法律(以下、動物愛護法)では、「動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない」と定められており、同法に基づく「動物の殺処分方法に関する指針」においては、「殺処分方法は、化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、・・・」とあります。そして、「苦痛」の定義として、肉体的な痛みだけでなく、苦悩、恐怖、不安等も含まれると定めています。つまり、北里大学が行った無麻酔放血殺という方法は、動物愛護法に違反するといえるのです。

JAVAの取り組みで廃止の流れに

牛の無麻酔放血殺は、過去に、東京農工大学や酪農学園大学においても行われていたことがわかっていますが、いずれもJAVAの指摘を受け入れ、この方法を廃止しました。

酪農学園大学での無麻酔放血殺の実施については、2008年、その凄惨さに耐えかねた学生を含む関係者の方たちからJAVAに寄せられた内部告発によって発覚しました。同大学では、一人の女子学生が学長に、放血前に麻酔の投与を行うように直訴していましたが、学長は黙殺し、その後、その女子学生は自らの命を絶つという最悪の事態を招きました

JAVAは、当時、酪農学園大学のみならず、「全国大学獣医学関係代表者協議会」に対しても、加盟大学における牛の殺処分方法の改善を働きかけました。そして、それに対して、北里大学の柴忠義学長(当時)をはじめ、加盟全12大学(当時)の学長連名で「動物の愛護及び管理に関する法律にのっとり、できるだけ動物に苦痛を与えない方法による『安楽殺処置』を講じることにより行うことが求められるところである」との回答を得ていました。

JAVA、即刻、北里大に働きかけ

今回の北里大学において、無麻酔放血殺が行われたことは、つまり、動物愛護法にも、過去に自ら出した方針にも、背いたということです。拷問ともいえるこの残虐行為は、到底許されるものではありません。JAVAは即刻、学長に対して、徹底調査と然るべき対処をし、JAVAにその報告をすること、無麻酔放血殺を廃止すること、さらに、現行の動物実験・実習を見直し、動物を犠牲にしない方法を用いることを求めました。

北里大からの回答

後日、学長名にて、JAVAの要望書を受けたのち、特別調査委員会を立ち上げ、調査し、告発内容が事実であったこと、同大学ではすでに無麻酔放血殺は廃止されているが、今回、違反があったため、対処したことが記された回答文書が届きました。

「採取した肉は焼却処分」

大学からの最初の回答では、解剖した牛の肉を食べようとしたことについて、一切触れられておりませんでした。そのため、JAVAでは、この点についての事実関係ならびにその後の対処について、再度問いました。後日、「病理解剖において、牛の肉の一部が持ち出されたのは事実で、採取したままの状態で冷蔵庫に保管されており、獣医学部長の命により、12月24日にすべて焼却処分した(食べたり、学生等に配った事実はなかった)」との回答がありました。
今回の一連の問題にかかわった教員に対する処分は、懲戒委員会を立ち上げて、審議中とのことです。

北里大学のウェブサイトには、「北里大学獣医学部における牛の無麻酔放血殺とその対策の実施について(お詫び)」として、今回の問題の経緯と対処について掲載されています。

内部告発を活かして

無麻酔放血殺を行ったことは、牛を苦しめたということのほかに、学生たちに間違った方法を見せ、内部告発がなければ、彼らはそれが通常の方法と認識してしまうところであったことも大変大きな問題なのです。
内部告発者の方は、まず大学に訴えましたが、大学側が動いてくれる様子がないため、JAVAに助力を求めてきました。外部のJAVAから働きかけたことが、大学を動かすのに大きな後押しとなったと言えるでしょう。
ご存知のとおり、動物実験は密室の行為です。情報開示請求や第三者評価制度による審査結果を見ても、その真の実態はつかめません。そういったことからも、内部告発は動物実験廃止の活動には、重要かつ不可欠なのです。JAVAでは、ウェブサイトで「企業や学術機関など密室で行われている動物実験の実態をご存じでしたら、ぜひ情報をお寄せください。告発者の方の秘密は厳守いたします。ぜひ勇気をもってご連絡を!」と呼びかけるなど、常時内部告発を受け付ける体制をとっています。実際、多くの告発が寄せられています。今後もこの体制を継続し、内部告発という貴重な情報を生かし、動物実験の廃止につながる取り組みをしてまいります。

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