欧州化学品庁の動物実験の要求に裁定委員会が反する決定<EU>

2021年6月15日

欧州化学品庁(ECHA)の裁定委員会は、数千の動物と動物実験を必要とするECHAの決定に反する判断を下した。
ジアルキルジチオリン酸亜鉛 (ZDDP)*1の企業グループは、ラットを用いた90日間反復投与毒性試験や、ラットまたはウサギを使った出生前発生毒性試験の実施を求めるECHAの決定に異を唱えていた。ECHAは、油圧作動油に使われる13の類似物質に対し、長期間の非常に不快な2種類の動物実験の実施を指示していた。実験には、動物の喉にチューブを差し込み、量を変えながら各物質を強制投与することが含まれている。13種全ての物質について試験が実施されるなら、最低でも12,600匹の動物が使用される。もしECHAの決定が実行されれば、さらなる実験で何万もの動物の犠牲が要求される可能性がある。 企業側は何度も試験をしなくとも、ある物質についての試験データを別の物質へ「リードアクロス*2」することが可能で、不要な実験から多くの動物を救うことができると主張した。また裁定委員会は、ECHAは大手の登録者だけでなく化学物質に関する全登録者に、その物質の大半についてリードアクロスの利用を主張する機会を与えるべきであったと判断した。
別の裁判で欧州連合司法裁判所が最近下した判決*3により、ZDDPの企業グループは類似物質からのデータを利用し、少なくともいくつかの実験の回避を主張することがさらに可能となるだろう。

©Cruelty Free Europe
  1. *1ジアルキルジチオリン酸亜鉛: 工業用潤滑油に含まれる添加剤
  2. *2 リードアクロス: カテゴリーアプローチやアナログアプローチにおいて、有害性の類似性に基づきデータギャップ補完を行う方法。未試験物質の有害性は試験データのある類似物質と同程度と推定される。日本では「類推」と呼ばれる。(独立行政法人製品評価技術基盤機構用語集より)
  3. *3欧州連合司法裁判所はECHAに対し、REACH(化学物質の登録・評価・認可・制限に関する規則)の下では、動物実験は他に方法がない場合の最後の手段であることを追認するよう裁定した。

Board of Appeal rules against EU Chemicals Agency in case involving thousands of animals (Cruelty Free Europe)

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