須磨海浜水族園、アカミミガメの実験用払い下げを廃止
しかし、今後、飼育放棄の方針

奈良県立医科大学に須磨海浜水族園のミシシッピアカミミガメが解剖用に払い下げられていた件をきっかけに、この水族園の数々の驚くべき実態が発覚。さらに、2024年のリニューアルオープン後は飼育放棄するとの計画も明らかになりました。


兵庫県神戸市須磨区にある神戸市立須磨海浜水族園。1987年に開園し、「スマスイ」の愛称で知られている神戸市立の水族園ですが、2006年度から、運営は指定管理者に委託して行われています。現在、老朽化などを理由に取り壊し作業が進められていて、2024年にはリニューアルオープンする計画です。リニューアル後は、神戸市立ではなく、7つの企業からなる神戸須磨Parks + Resorts共同事業体による民営となります。

淡水ガメ収容施設「亀楽園」

須磨海浜水族園では、ミシシッピアカミミガメをはじめとした淡水ガメを収容する施設「亀楽園(きらくえん)」を2010年8月に設置しました。幼体はミドリガメとも呼ばれるミシシッピアカミミガメ(以下、アカミミガメ)は、ペットとして主に米国から輸入され、それが野外に遺棄されるなどして、「推定で野外に約800万匹生息している」(環境省2015年統計解析)と言われています。同園は、外来種であるアカミミガメを自然から少しでも減らそうと考え、そして、この施設を通じて市民にアカミミガメの繁殖問題を伝え、解決するための議論を醸成することに期待して設置したと説明しています。

淡水ガメを収容する施設「亀楽園」 ©PEACE

きっかけは大学への実験用払い下げ

2019年、この須磨海浜水族園(以下、スマスイ)が飼育しているアカミミガメを奈良県立医科大学に動物実験用に払い下げていることが発覚。きっかけはJAVAが同大学に行った医学生の解剖実習の動物実験計画承認申請書を開示請求したことでした。そこに記載されていた解剖するアカミミガメの入手先にスマスイの名前があったのです。そのため、JAVAはスマスイや神戸市に対しても事実確認や払い下げの廃止などの要望を行うことにしたのです。

須磨海浜水族園の呆れた実態

JAVAが神戸市やスマスイに対して行った、複数回に及ぶ情報開示請求や公開質問状等で明らかになった実態は以下のように驚くべきものでした。

<実態1> 市民にアカミミガメを持参させ、駆除と飼育放棄を助長

スマスイがアカミミガメを同園に導入してきたルートは主に2つです。まず、外来種に関する研究として、野生化した個体を捕獲しています。そしてもう一つは「アカミミガメパスポート」です。「アカミミガメパスポート」とは、2010年から10年間、毎年1か月弱の期間を限定して実施していた、市民が野外で捕獲したアカミミガメをスマスイに持参すれば、1匹につき1人入場無料という制度です。
当初は捕獲された個体に限定していた引取りも、ペットとして飼育されていた個体が持ち込まれることが後を絶たず、「野外に放逐されるよりは」と考えたスマスイは、飼育されていた個体も引き取るようになりました。つまり市民に駆除と飼育放棄をさせていたわけです。

【その後】
2020年8月、スマスイはアカミミガメの導入はすでにやめたとJAVAに回答しました(警察などからの引取りを除く)。

<実態2> きちんと繁殖制限をせず、過密飼育

受け入れ匹数や飼育数を隠す

受け入れ数や飼育数についてスマスイは「研究資料であり内部情報である詳細データの公表は行っていない」「飼育数に関する回答は控える」とJAVAへの回答を拒否しつづけています。公立の水族園で飼育しているカメの頭数がなぜ隠す必要のあるデータなのでしょうか?しかも、後述のとおり、収容数を公表した時もあるわけで、なぜJAVAに回答しないのかあまりに不可解です。

■匹数は不明でも過密は明らか

このようにスマスイは受け入れ数や飼育数をひた隠しにしていますが、下記のこれまでの報告書や報道から、非常に匹数が多く、過密であるのは明らかです。そのような悲惨な状況下でありながら、「アカミミガメパスポート」の企画を2010年から10年間も続けました。

  • 2010年の「アカミミガメパスポート」で持ち込まれ、収容した数:572匹(同園ウェブサイト「アカミミガメの収容数の報告」より)
  • 「神戸市立須磨海浜水族園内にある淡水ガメ保護研究施設「亀楽園(きらくえん)」には、日本の川や池で捕獲された外来種のミシシッピアカミミガメが収容されている。その数約800匹に及ぶ。」(2014年6月11日投稿 神戸新聞社のYouTubeより)

■繁殖制限は「卵の処分」のみ

飼育している動物を適正な数に保つために、繁殖制限をするのは当然のことでしょう。ところが、スマスイがアカミミガメの繁殖制限として取っていた措置は「産卵した卵の廃棄」のみで、雌雄別飼育すらしていません。雌雄を別にしない理由として「完全な雌雄判別が困難なため」と回答してきました。しかし、環境省が公園管理等を行う行政官やため池等の保全活動を行う市民の参考用に作成している「アカミミガメ防除の手引き」には、捕獲した個体の性別確認をするよう書かれていて、総排泄腔(お尻の穴)の位置などで判別できるとの説明があります。市民ができる判別をなぜ水族園の研究員たちができないのでしょうか。

■致死処置と払い下げで数を減らした?

2020年12月付のJAVAに対する回答で、「現在の飼育数については内部情報であり、開示は致しかねるが、前指定管理者時代(JAVA注:2019年度まで)から、現在の飼育数を比較すると10%以下の状況」とスマスイは述べました。
「アカミミガメ防除の手引き」によると、アカミミガメは飼育下では40年以上飼われた個体もいるほど長生きで、年に2~3回、1回で2~23個産卵する生き物です。卵の廃棄により1匹たりとも増えなかったと仮定しても、10%以下に減った、つまり報告書等で判明している匹数から推定しただけでも500~700匹程度減ったということになります。しかし、これは異常で、後述の教育・研究目的で殺したことや実験用に払い下げたことで減少したと考えてもおかしくないのではないでしょうか。ちなみに奈良県立医科大学には、2016年~2019年までに合計313匹が解剖用に払い下げられています。

2019年5月時点の亀楽園のアカミミガメたち ©PEACE

<実態3> 研究・教育目的で冷凍殺

JAVAがアカミミガメを殺処分することがあるかを問うと、「処分目的での殺処分は行っていないけれども、研究・教育目的に限り、殺すことはある(ペット由来の個体は対象外)」との回答でした。そして、その方法は、「冷凍法」とのことでした。
殺すこと自体許されませんが、その方法も問題です。冷凍法が獣医学的に許容されるのは、液体窒素に入れて急速冷凍させることで、即時かつ不可逆的な死に至るほど小さい個体(4 g未満)である場合のみで、それ以外では低体温状態に陥らせ、じわじわと死に至らせることになるため、OIE(国際獣疫事務局)の「皮、肉、その他の製品のための爬虫類の殺害」についての動物福祉規約や米国獣医師会の安楽死ガイドラインで不適切とされている方法です。
アカミミガメにできる限り苦痛を与えずに殺処分する方法を爬虫類に詳しい獣医師に照会したところ、「水生動物用麻酔薬MS-222;Tricaine methanesulfonateを体腔内に注射して全身麻酔後、頸動脈切断によって失血させる。その前段階で吸入麻酔をかけ、体腔内に注射する痛みを防ぐことが望ましい」とのこと。獣医師のいる水族園ならこの方法の実施は可能なはずです。
実は、環境省発行の「アカミミガメ防除の手引き」では、捕獲したアカミミガメの殺し方として冷凍法を紹介しています。スマスイがこの環境省の考え方を参考にした可能性はあります。JAVAはこの環境省の手引きも不適切であるとして環境省に冷凍法の記述の削除を求めていますが、そもそもこの手引きは麻酔薬を扱うことができない市民などが野外で駆除を行う際のマニュアルであり、獣医師のいる飼育施設で行うべき方法ではないのです。

【その後】
2020年8月、スマスイから「研究・教育目的でも致死措置をすることはない」との回答を得ることができました。

<実態4> 動物実験用に払い下げ

■払い下げ先や匹数を明かさない

奈良県立医科大学への情報開示請求でアカミミガメをスマスイから入手していたことが判明したことから、スマスイに対しても「アカミミガメを奈良県立医科大学に払い下げているのは事実か」「同大学以外にどこの研究機関に払い下げているか」と問い、年間の払い下げ数や1匹当たりの金額なども尋ねたところ、研究や教育目的に限り無償譲渡することがあると認めたものの、その譲渡先や匹数については「回答を差し控える」と答えませんでした。

■払い下げた記録すらない

さらに問題なのは、神戸市に開示請求して入手したスマスイの生物の出入りの記録文書「事業報告書(生物の導入)」にアカミミガメを奈良県立医科大学へ譲渡した記録がなかったのです。導入表に記載がない理由や、アカミミガメの譲渡についてどのような文書があるかの問いにもスマスイは回答を拒否しました。そこでJAVAは神戸市に説明を求めましたが、「市は奈良県立医科大学とのやりとりに関する事業報告はスマスイから受けていない」「市が保有する公文書に奈良県立医科大学への生物の譲渡に関する記録はない」「スマスイは指定管理者による管理運営を行っており、飼育展示にかかる生物の導入については指定管理者に一定の裁量がある」とまるで市にはまったく責任はないかのような態度でした。

アカミミガメは公立の水族園で飼育されているわけで、つまり市民の財産です。それを外部に提供する、つまり財産の処分を行っておきながら、どこに渡したかを隠し、その記録もないとは言語道断です。その後もJAVAはスマスイへの追及を続けました。

【その後】
2020年8月、スマスイから「2020年4月1日以降払い下げはしていない、今後も行わない」との回答を得ることができました。


リニューアルオープン後はアカミミガメを飼育放棄

以上ご報告したように、スマスイにおけるアカミミガメの新たな導入、致死措置、実験用払い下げといった問題の数々が廃止されたことは喜ばしい限りです。しかし、まだ大きな問題があるのです。スマスイは今後リニューアルするのですが、新しい水族園ではアカミミガメの飼育を継続しない方針です。
アカミミガメをどうするのかJAVAが問いただしたところ、「他園やその他機関に譲渡することで検討中」と回答してきました。希少動物でもない、展示の目玉にもならないアカミミガメを欲しがる動物園、水族園があるとは思えません。実際、2020年12月1日時点で決まった譲渡先はありません。

飼育を継続しないことは動物愛護法に反する

長年行ってきた「アカミミガメパスポート」の取り組みにおいて、スマスイは市民が持ち込んだアカミミガメは亀楽園で飼育すると公言しており、市民は水族館ならば、終生、適切に飼い続けてくれるものと思い、アカミミガメを持ち込んでいた可能性もあります。しかし実際は、先述のとおり、過密飼育されたり、殺されたり、大学に実験用に払い下げられたりしていたのです。その上、同園解体後は残っているアカミミガメを継続飼育しないというのは、市民に対する大きな裏切り行為です。
また、所有する動物を終生、適切に飼養することは、「動物の愛護及び管理に関する法律」の第7条「動物の所有者又は占有者の責務等」の第4項において、「動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。」とあります。スマスイのアカミミガメは、研究目的を兼ねていたとはいえ、展示動物であり、終生飼養を行うのは当然のことです。飼育放棄するとは言語道断であり、同法に反する行為です。

譲渡先にアカミミガメの扱いの条件をつけておらず、殺される可能性がある

さらにこの譲渡計画には、譲渡先にアカミミガメの扱いについて条件はつけていないという問題もあることがわかりました。つまり、譲渡先の園や機関が、アカミミガメを殺そうが、他の動物の餌にしようが、動物実験に用いようが構わないというわけです。カメたちが譲渡先でどうなろうと知らぬ存ぜぬとはあまりに無責任です。

神戸市はウェブサイトの「須磨海浜水族園・海浜公園再整備【水族館】のFAQ(よくあるお問い合わせ)」の中で「継続して飼育されない生物は、主に爬虫類や両生類、淡水魚と聞いていますが、他園館等へ移設する場合はその処遇を市に報告するような公募条件となっており、生物が適切に取り扱われることを本市としてもしっかりと見届けていきます」と述べています。その通りならば、譲渡先に条件をつけずに譲渡するというのは決してあってはならないことです。

神戸市長に適切な環境での飼育継続を要望

2021年2月、JAVAは神戸市長に対し、次の事項を強く要望する文書を送りました。

  1. 新しく建設する水族園にアカミミガメの習性や生態にあった適切な施設を建設し、動物福祉に配慮した形で飼育を継続すること。
  2. 他園等に譲渡する場合には、「アカミミガメの習性や生態にあった適切な施設にて、研究利用など心身の苦痛を与えることなく、動物福祉に配慮し、終生飼養をすること」を条件に譲渡すること。
  3. 継続飼育をしない方針の対象となっているアカミミガメ以外の動物についても、1もしくは2の対応をとること。

これに対する神戸市からの回答は次のようなもので、新しい水族園は民設民営になるのだから市は関係ないと言っているも同然でした。

神戸市とスマスイに声を届けてください

JAVAは動物園、水族園をはじめ野生で暮らす動物を飼育することに反対の立場ですが、飼育をした以上、その動物の生態・習性に最大限の配慮をし、動物の福祉を考えた施設で最後まで責任をもって、適切に飼育するのは最低限の責任と考えます。
リニューアルオープン後にアカミミガメを継続飼育しないことは、すでに決定した方針であり、非常に厳しい状況ではありますが、ぜひ、皆さまからも神戸市やスマスイに声を届けてください。

【神戸市】
■郵便
〒650-8570 神戸市中央区加納町6丁目5-1 
神戸市役所「わたしから神戸市への提案」係

■メール
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【須磨海浜水族園】
〒654-0049 兵庫県神戸市須磨区若宮町1丁目3−5
TEL (078)731-7301 FAX (078)733-6333

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