日本とEUの経済連携協定に関するEU主催のシンポジウムに参加

2020年6月25日

1月30日、駐日欧州連合代表部(東京都港区)で開催された、EU主催のシンポジウム「Practical implementation of the TSD chapter within the EU-Japan EPA and examples of the involvement of economic and social stakeholders and other actors to contribute to sustainable trade(EUと日本の経済連携協定の中の貿易及び持続可能な開発の章の実践的な実施と、持続可能な貿易に貢献するための経済的及び社会的ステークホルダーとその他関係者の関与例)」にJAVAが招待され、参加しました。


日EU経済連携協定と動物福祉

「なぜJAVAが貿易のシンポジウムに?」と思われるかもしれません。2019年2月に発効した「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU経済連携協定;JEEPA)」は、単に関税の引き下げや撤廃を決めるものではなく、知的財産や環境、労働者の保護なども規定しています。
このJEEPAの第16章「貿易及び持続可能な開発」には、「市民社会との共同対話」の条文があり、「両締約国は、この章の規定に関する対話を行うため、両締約国の領域内に所在する市民社会の組織との共同対話を招集する」とあるからです。最近SDGs(国連が定めた持続可能な開発目標)という言葉を耳にしたことのある方も多いと思いますが、ここでも「持続可能」という言葉がキーワードとなっています。
さらに第18章「規制に関する良い慣行及び規制に関する協力」には、次のような「動物の福祉」の条文が盛り込まれていることもJAVAが招待された理由です。

第18章 規制に関する良い慣行及び規制に関する協力
第B節 動物の福祉
第18・17条 動物の福祉
1  両締約国は、それぞれの法令に関する相互理解の向上を目的として、飼養された動物に焦点を当てた動物の福祉に関する事項につき、相互の利益のために協力する。

2  このため、両締約国は、この条の規定に従って取り扱う動物の優先順位及び区分を定める作業計画を相互の同意によって採用することができるものとし、また、動物の福祉の分野における情報、専門知識及び経験を交換するため、並びに一層の協力を促進する可能性を探求するため、動物の福祉に関する技術作業部会を設置することができる。

JAVAを含め9つの団体が招待される

今回のシンポジウムのテーマは「貿易と持続可能な開発への貢献」であり、動物に特化した内容ではありませんが、参加者たちの経験を共有し、これからの協力関係をつくるために開催されました。

招待された日本の団体とEUだけの限られた参加者によるシンポジウムのため、EU側が18名(オーガナイザーなどを含む)、日本側が13名という規模でした。日本側からは9つの団体が招待され、JAVA以外の動物関係団体は、アニマルライツセンター、トラフィック、トラ・ゾウ保護基金で、その他は人権や雇用、経済、サステナビリティの団体でした。

一方、EU側からの参加者は、動物保護、環境保護、産業、貿易、労働などの団体と、そういった団体との間の協力を促進することを役割の一つとしている公式諮問機関EESC(European Economic and Social Committee)のメンバーたちです。

EU側の参加者たち

JAVAは化粧品の動物実験についてアピール

最初に自己紹介の機会があり、JAVAが団体紹介とともに、日本の化粧品の動物実験の現状や他国の禁止の動きを説明し、貿易を通じて日本政府と化粧品業界に動物実験をやめさせる働きかけにご協力いただきたいとスピーチしました。

日本側の参加者たち(左から3番目と4番目がJAVA)

日本とは格段の差 EUの市民社会の声を聴く姿勢

そのあと、貿易と持続可能な開発の専門家による、EUでは立法や政策において、市民社会の意見をどのように取り入れていくシステムがあるのか、どれだけ取り入れているかについて30分ほどの講演がありました。

この講演後、質問やディスカッションにうつり、日本側からはさまざまな質問がでましたが、特にEUがこのように市民団体と積極的に対話をしようという姿勢を持っていることに対して驚きの声が多く上がるとともに、「日本政府は市民団体の意見を聴く気がない」「明日の日本政府主催の会議に私たちが呼ばれていないことからも明らか」等々、不満が噴出しました。EU側からの回答は、「EU条約で、市民社会の声を聴かなければならないとある」「ある程度、活動内容など条件はあるが、意見を聴く市民団体は公募する」「欧州委員会には透明性を担保するための方針がある」「立法の過程で、市民はプラットフォーム上で意見を言える」等々、日本との大きな違いをまざまざと感じさせられました。

でも、これは日本に限ったことではなかったようで、EUと中米諸国や韓国との対話でも、はじめは政府側は市民側に意見を言わせない姿勢だったそうです。その後会議を重ねていくうちにEUのやり方をみて改善していったとのことですので、日本もそうなるようにしていかなければならないと感じました。

このシンポジウムへの参加は、今後、日本の動物福祉の向上にJEEPEAを活用し、積極的に関わっていく必要性があるとあらためて感じる機会となりました。

 会場となった駐日欧州連合代表部の建物ヨーロッパハウス

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