ケージサイズ、出産回数などを定めた犬猫の飼養管理基準が施行される

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具体的なケージサイズ、従業員1人あたりの犬猫の頭数の上限、生涯出産回数などを定めていることから注目されている新しく策定された「犬猫の飼養管理基準」。2021年4月1日に公布され、6月1日より施行されます。ここでは、JAVAが求めてきた点やこの基準の概要などをご報告します。

犬猫を扱うすべての動物取扱業者が対象

動物愛護法が改正されたことに伴い、新しく作ることになった「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令」。この省令のうち、犬猫に係る飼養管理を具体化した基準(以下、「犬猫の飼養管理基準」)は、犬猫を取り扱う事業者全般(販売・保管・貸出・訓練・展示・競りあっせん・譲受飼養)、つまりペットショップやブリーダー、ペットホテル、ペットレンタル業、ドッグトレーナー、猫カフェ、オークション業、老犬・老猫ホームといった第一種動物取扱業、そして、動物愛護団体などの第二種動物取扱業が守るべき基準です。 これには犬猫のケージのサイズや従業員1人あたりが飼養または保管する犬猫の頭数の上限、生涯出産回数などが具体的に盛り込まれており、いわゆる「数値基準」として、高い関心を集めています。

劣悪飼育やネグレクトなどを行う悪質な動物取扱業者は多く、大きな社会問題になっていることは皆さまもご存知の通りです。JAVAは動物の商売利用そのものに反対の立場ですが、さまざまな業が認められている以上、少しでも悪質な業者を淘汰することが先決であり、基準を厳しくすることが不可欠であると考えています。そのようなことから、この「犬猫の飼養管理基準」についてもJAVAは、動物愛護法改正の活動を協働で行っているアニマルライツセンター、PEACEとともに、環境省や犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟の国会議員の方たちへの働きかけを続けてきました。

環境省のパブリックコメント

2020年10月、環境省は、この「犬猫の飼養管理基準」の案に対するパブリックコメント(国民の意見)の募集を行いました。私たち3団体では意見を統一し、環境省に提出しました。今後の犬猫以外の動物に係る基準の検討を見据えて、犬猫以外の動物にも適用させたい点も意見に盛り込みました。

<3団体が提出した意見のポイント>

  • 「犬又は猫」となっている箇所を「動物」とすることで、犬猫以外の動物にもこの基準を適用させる
  • 寝床、休息場所には動物が重要な行動ができる十分な広さ、動物の主たる活動時間内は常時運動できる広さ、重要な行動ができる設備を設置する
  • 犬猫に関して、環境省案より、広いケージサイズ、少ない出産回数にする
  • 犬猫の運動は、「1日あたり3時間以上」を「個々の動物の主たる活動時間内は常時」とする
  • 飼育動物の福祉を担保する(常時飲水を可能にする/最長6時間ごとに展示をしない時間を設ける/同居させる動物の組み合わせへの配慮/社会性を発揮できるようにする/動物のストレス行動の確認と記録、改善の取り組み/正当な理由なく顧客に動物に触れさせない等)
  • 輸送の頻度をできる限り少なくし、計画的な輸送をする
  • 第二種(動物愛護団体など)にも第一種と同様の基準を適用させる

パブリックコメントは29,012名・団体から、延べ168,036件の意見があったとのことです。皆さま、ご協力をありがとうございました。
そして2021年4月1日、この犬猫の飼養管理基準を盛り込んだ「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令」が公布されました。公布されたこの省令や犬猫の飼養管理基準の概要は下記の通りです。

第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令

犬猫の飼養管理基準の概要

6月1日のこの基準の施行までに、基準を満たす状態、満たさない状態の例示や理想的な飼養管理の考え方などを記した解説書も作成されます。
私たち3団体が提出した意見は残念ながら十分に反映されませんでしたが、今回できた「犬猫の飼養管理基準」でもきちんと運用すれば犬猫の飼育環境の改善に役立ちます。最大限活用していきましょう!

※記事の内容は2021年4月1日時点のものです。

犬猫以外の動物の飼養管理基準も!
動物愛護週間にSNSアクション

今回、新しく犬猫の飼養管理基準が策定された根拠は、動物愛護法の改正により、第21条「基準遵守義務」に第2項「動物の愛護及び適正な飼養の観点を踏まえつつ、動物の種類、習性、出生後経過した期間等を考慮して、次に掲げる事項について定めるものとする」が新たに追加されたことにあります。この第21条で基準を定める対象は、動物取扱業者が取り扱う「動物」となっています。つまり犬猫以外の哺乳類、鳥類、爬虫類も対象になるわけです。ところが、検討・議論の中心は犬猫で、2020年8月末に公表された新しい飼養管理基準のとりまとめ報告では、犬猫のみについてしか書かれていませんでした。そのため、JAVA、アニマルライツセンター、PEACEの3団体は、犬猫以外の哺乳類や鳥類、爬虫類についてもきちんと基準をつくってほしいと、環境省に要望書を提出したり、面会して直接申し入れをするなど力を注いできました。また、犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟の国会議員の方たちにも訴えてきました。

2020年の動物愛護週間(9月20~26日)には、3団体のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で犬猫以外の動物の劣悪飼育例について画像投稿を行い、「今の動物取扱業者の基準ではこの状況を改善させることができません。だからもっと厳しく具体的にする必要があるのです。犬猫以外の動物についてもきちんと基準をつくってほしいと環境省に声を届けてください!」と犬猫以外の動物の飼養管理基準策定の重要性をアピールし、環境省へのアクションを呼びかけました。環境省に皆さまが声を届けてくださったおかげで、その後公表された「犬猫の飼養管理基準」の案には、「犬猫以外の哺乳類、鳥類及び爬虫類に係る基準についても、今後検討を進めるものとする。」と明記されたのです。

SNSへ投稿した劣悪飼育例

体の向きを変えることもできない狭いケースに入れられたカメ。小さな食品用のパックに閉じ込められたトカゲたち。展示即売会では、こんな劣悪な販売が行われている。
三重にあったクマ牧場。このクマは20年以上、陽も当たらない、外を見ることもできないコンクリート製の高い塀に囲まれた施設に閉じ込められ、一生を終えた。
短いリューシュに(係留紐)つながれ、移動したり飛ぶこともできない状態で展示される鳥たち。
休憩中も夜間も生態は無視され、ずっとこの拘束が続く・・・

犬猫以外の動物の基準についての検討はこれから始まります。劣悪な環境で苦しむ犬猫以外の哺乳類、鳥類や爬虫類の置かれている状況を改善できる基準をつくるために、これからも皆さまのご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

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