JAVA:NPO法人 動物実験の廃止を求める会(Japan Anti-Vivisection Association)

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動物実験の廃止を求める

JAVA、代替法研究費を助成

JAVA、初のアジア大会で代替法研究費を助成
韓国の若手研究者に

アジアンコングレス2016において、JAVAは若手研究者の代替法研究に15万円を助成しました。
選考の末、この「JAVA賞」を受賞したのは、韓国・ソウル大学校薬科大学のSae on KIMさんのグループ。
化粧品などのパーソナルケア用品では、アレルギーを引き起こす可能性があるかどうかのテスト(皮膚感作性試験)が行われていますが、この分野では、従来の動物実験のほか、代替法として採用されているのが、動物の苦痛軽減というRefinementに基づいた試験法であり、この試験では結局のところモルモットなど動物が使われています。
KIMさんらの研究では、動物をいっさい使わずに、ヒトの不死化角化細胞であるHaCaT ケラチノサイトを用いたアプローチを行っています。
新しい代替法の開発といっても、一朝一夕にできるものではありません。多くの時間とお金がかかります。動物実験の廃止への一助となるよう、JAVAもできる限りの研究支援を行っていきたいと考えています。

 

▼助成した研究プロジェクトの詳細▼

HaCaT ケラチノサイトにおける皮膚感作性試験代替法
生物指標としての血管内皮増殖因子(VEGF)の予備的評価
Sae on KIM

 化粧品に警告表示や安全に使用するための注意書きがあるのはなぜか、疑問に思ったことはありませんか。化粧品などには、私たちの体にとって異物となる化学物質が含まれており、その多くは、肌に触れるとアレルギー反応を誘発する可能性があるからです。化粧品や歯磨き粉、石鹸などのパーソナルケア商品に含まれる金属成分によって発疹が出る人がいることはご存じだと思います。あるいは、特定のメイクアップ用品をつけた時だけかゆみを感じたり、つけた部分が熱を持ったりした経験のある方もいるでしょう。これらは、皮膚感作性と呼ばれる症状の代表的な例です。

 皮膚感作性とは、特定の化学アレルゲン(アレルギー誘発物質)に繰り返し触れることで起きるアレルギー反応の一種で、化粧品、日焼け止め剤、家庭用品などの原材料に含まれる物質によって引き起こされることがあります。上記の商品に用いられている化学物質の多くは、使用量やそれに触れる度合い等にもよりますが、なんらかのアレルギー反応を誘発する可能性があります。アレルギー反応が起きるまでには、 感作相(かんさそう)(誘導相とも呼ばれます)と惹起相(じゃっきそう)のふたつの過程があります。感作相では、初めて化学アレルゲンと接触することで増感し、体に免疫記憶が形成されます。2番目の惹起相では、前に触れたことのある化学物質に再び触れることで、アレルギー性過敏症反応が誘発されます。

 『化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS) 』によると、皮膚感作物質の定義は、「臨床試験により、接触によるアレルギー反応誘発の可能性が証明できるもの」となっています。しかし、化学物質の皮膚感作性の有無を確認するために、動物実験が頻繁に行われています。潜在的な皮膚感作性を見極める方法として推奨され、実際に行われている方法として、局所リンパ節試験(LLNA)とモルモットマキシマイゼーション法(GPMT)があり、それぞれマウスとモルモットを使用します。動物への苦痛が軽減されてきているとはいえ、生体実験(in vivo)であることに変わりはありません。

 私たちが研究している新しい皮膚感作性試験の代替法では、物質が生体にもたらすメカニズム(作用機序)に着眼し、血管内皮増殖因子(VEGF)を生物指標(バイオマーカー)としました。血管内皮増殖因子(VEGF)は、血管形成とリンパ管形成を調整する働きがあり、サイトカイン・ネットワークのインターロイキン-8(IL-8)に関係していることが分かっています。インターロイキン-8(IL-8)は、多様な免疫細胞によって作られるケモカインで、化学物質の潜在的な皮膚感作性を調べるための試験、インターロイキン-8ルシフェラーゼアッセイで使用されています。私たちは、16の代表的な化学感作物質が、正常ヒト初代表皮細胞(NHK)内における血管内皮増殖因子(VEGF)とインターロイキン-8(IL-8)の発現にどう作用するかを調べました。そして、16の化学感作物質のうち14が、正常ヒト初代表皮細胞(NHK)内の血管内皮増殖因子(VEGF)またはインターロイキン-8(IL-8)、あるいはその両方の値を著しく増加させることを発見しました。しかし、皮膚感作性の検証に、正常ヒト初代表皮細胞(NHK)を使用する方法には、限界があります。外的刺激や毒性刺激が異なると、正常ヒト初代表皮細胞(NHK)の生物学反応も変化するからです。この変化は、予備試験用に表皮組織を提供してくれたボランティアの人たち生物学的反応の違いからくるものです。 

 この可変性を補うため、正常ヒト初代表皮細胞(NHK)の代わりに、不死化角化細胞のHaCaT細胞を使えないか調べてみました。綿密に調べた結果、HaCaT細胞が、皮膚感作性が疑われる物質と刺激物に反応し、血管内皮増殖因子(VEGF)またはインターロイキン-8(IL-8)、あるいはその両方を作り出す事実を発見しました。皮膚感作性が疑われる物質と刺激物は、報告書や文献、『OECDテストガイドライン429』、欧州式光貼付試験をもとに選びました。HaCaT ケラチノサイト内で誘発した血管内皮増殖因子(VEGF)は少なかったものの、局所リンパ節試験では陰性だったヒト感作性物質の塩化ニッケルが、血管内皮増殖因子(VEGF)とインターロイキン-8(IL-8)の発現を大きく変化させました。

 この研究により、血管内皮増殖因子(VEGF)とインターロイキン-8(IL-8)が、細胞を基盤としたモデルにおいて、化学物質が持つ潜在的な皮膚感作性の評価に、生物指標として使用できることが分かりました。私たちの研究が、科学分野の研究で使用される動物たちの苦痛の軽減(Refinement)、使用数の削減(Reduction)、そして代替法の採用(Replacement)の必要性に対する意識を高める一助になることを希望するとともに、私たちが手本を示すことで、皮膚感作性試験に、より多くの代替法が採用されることを願っています。

JAVA賞・発表スライド

発表スライドより


Preliminary Evaluation of Vascular Endothelial Growth Factor as a Biomarker for Alternative Skin Sensitization Test in HaCaT Keratinocytes
Sae on KIM

 Have you ever wondered why consumer products are provided with warning labels and directions for safe use? Chances are that many of the foreign chemicals found in such items are capable of inducing an allergic reaction upon skin contact. Perhaps, you have noticed that some individuals develop rashes from metals found in personal care products, or have experienced itching and burning sensation after applying certain types of makeup. These represent some common examples of what is known specifically as skin sensitization.
 Skin sensitization is a type of allergic response that results as of repeated exposure to a particular chemical allergen, and can be induced by substances found as ingredients of cosmetics, sunscreens, household products, and more. Depending on the dose and extent of dermal exposure, many of the chemicals in use have, to some degree, the potential to induce an allergic reaction. The events leading up to this process occur in 2 phases, and comprises of sensitization (also referred to as induction) and elicitation. In the first phase, the initial contact with a chemical allergen generates a sensitization process, in which the individual develops immunological memory. Following, in the second phase, an allergic hypersensitivity response is elicited upon re-exposure to the same chemical sensitizer.
 The Globally Harmonized System for Classification and Labeling of Chemicals (GHS) defines a substance as a skin sensitizer if there is clinical evidence indicating that it has the potential to cause an allergic response upon contact. Frequently, however, the method used to evaluate a chemical’s skin sensitization potential involves animal testing. Examples of some preferred and accepted methods for the assessment of skin sensitization potential include the Local Lymph Node Assay (LLNA) and Guinea Pig Maximization Test (GPMT), which involve the use of mice and guinea pigs, respectively. Although the assays have been refined to minimize harm to animals, they are still performed under in vivo conditions.
 The main objective of our research was to discover a novel mechanism-based alternative method for testing skin sensitization using vascular endothelial growth factor (VEGF) as a biomarker. VEGF is involved in the regulation of angiogenesis and lymphangiogenesis, and is known to be associated with interleukin-8 (IL-8) in a cytokine network. IL-8 is a chemokine produced by various types of immune cells, and is used in the Interleukin-8 Luciferase assay to evaluate the skin sensitization potential of chemicals. In our study, we tested the effects of 16 referenced chemical sensitizers on the expression of VEGF and IL-8 in primary normal human keratinocytes (NHKs). We found out that 14 of the 16 chemical sensitizers significantly increased VEGF and/or IL-8 expression in NHKs. However, the use of primary human keratinocytes for skin sensitivity validation studies is limited. The biological responses of human keratinocytes to different external and toxic stimuli are generally variable, and this is due to differences in the biological responses amongst the volunteers that donate their epidermal tissue for the prevalidation studies.
 In order to compensate for the variation, we evaluated the feasibility of HaCaT cells, immortalized human keratinocytes, as an alternative to primary human keratinocytes. Following a thorough investigation, we found out that HaCaT cells produced VEGF and/or IL-8 in response to potential skin sensitizers and irritants, which were selected based on reports in literature, OECD Test Guideline 429, and Scandinavian photo patch. Although fewer sensitizers induced VEGF production in HaCaT keratinocytes, nickel chloride, a human sensitizer resulting in a negative result using the LLNA method, significantly changed VEGF and IL-8 expression.
 In this study, we found out that VEGF and IL-8 can be used as biomarkers to assess the skin sensitization potential of chemical substances in cell-based models. We hope that our work can increase awareness about the need for refinement, reduction, and replacement of animals in scientific research, and that we could possibly set an example for others to adopt more alternative methods for testing skin sensitization.

<欧米>多くの鳥も研究と実験に使われている

多くの鳥も研究と実験に使われている(欧米)

実験に使われる動物はげっ歯類や霊長類が代表的であるが、実は鳥類も数多く使用されている。米国では、鳥類は「動物福祉法」の適用外であるため統計はないが、毎年60万羽以上が使用されていると推測される。

一方、EUでは2011年に675,000羽が使用され、これはEU内の全実験動物数の5.9%にあたる。それらのほとんどが動物の基本的な性質を調べるための生物学的研究に使用された。たとえば、鳥に装置を埋め込み飛行中の呼吸器内の空気の流れを調べたり、脳の一部を損傷させて、さえずりの発達への影響を調べる研究などがあった。また、医学・獣医学用の製品と医療器具の研究、開発、品質管理にも多くの鳥が使われ、その中の89%は家禽の病気、とりわけ鳥インフルエンザの研究に使用された。

それ以外では、人間や動物用薬品、農業用物質、飼料の添加物の毒性や安全性を調べる試験には、17,000羽以上が使われた。これらの試験には、試験物質を高用量投与する急性、亜急性試験といった鳥たちに大きな苦痛を与える実験も多く含まれている。

実験に使われる鳥たち

 AV Magazine(American Anti-Vivisection Society) Issue 1, 2016: Birds in Research and Testing

子ども向け科学講座で「ブタの臓器の解剖」

<東京・渋谷区> 子ども向け科学講座で「ブタの臓器の解剖」
二度と行わないよう働きかけを!

東京都渋谷区にある「こども科学センター・ハチラボ」で7月10日(日)、ブタの臓器を解剖する講座が行われました。ハチラボは、子どもにさまざまな科学実験などを体験させる渋谷区が運営する施設です。
JAVAは実施前に中止を求めましたが、渋谷区は強行し、廃止する考えもありません。


区報に出ていた講座の告知

●ハチラボ講座「ブタの臓器・器官から読み解くヒトの体のつくり」

[用いたブタの部位]心臓、肺、腎臓、肝臓、胆のう、舌、食道、胃、小腸
[入手方法]卸問屋から購入
[部位ごとの使用数]各5組
[目的]ヒトの臓器や器官のつくりやしくみについて、ブタの臓器・器官から学ぶ。
[内容]講座や実験の概要を説明⇒各臓器を観察したり、実際に触ってみる⇒ワークシートに記入⇒各臓器を廃棄
定員 15人(抽選)

実施した解剖講座の詳細(JAVAが渋谷区から得た情報)

日時 7月10日(日) 14:00~16:30場所 こども科学センター・ハチラボ
内容 ブタの臓器や器官を観察し、呼吸や消化の仕組みを学ぶ
講師 都立小山台高校教諭 飯塚慎氏
対象 在住・在学の小学校6年生~中学生(中学生優先)
定員 15人(抽選)

死体・臓器の解剖にも問題がある

「死体・臓器の利用」であれば、その動物に痛み、苦しみ、恐怖を味わわせるといった問題はありませんが、その動物たちは寿命をまっとうしたのではなく、人間によって殺されたことをまず考えなければならないでしょう。死体を解剖するということは、その前段階において、その生き物を殺す行為(今回の場合は食用のためにと畜された)が必ず必要になるわけです。つまり、死体の解剖を良しとするなら、生き物を殺す行為をも容認することになるのです。

ましてや、小中学生のような多感な時期の子どもが、高校教師の指導で行われる区の講座に参加したら、「食べているものなんだから、感謝すれば何をしてもよい」「動物の体を解剖するのはよいこと」という誤った認識を持ちかねません。そういう認識を持ってしまったら、子どもたちは弱い立場の動物を慈しむ気持ちに蓋をするようになり、殺すことや切り刻むことに無感覚になることが懸念されます。そして、「自分でカエルや魚を捕まえて解剖してみよう」「車に轢かれた猫の死体を解剖してみよう」と考える子どもが出てくる可能性もあり、今後、どのようにエスカレートするか計り知れません。

さらに、近頃、人間の遺体をバラバラにして棄てるといった猟奇的な犯罪が多発しています。それに関して、評論家などは、人々の道徳心が希薄になり、遺体への畏敬の念が薄れてきたため、と指摘しています。死んでいるのだから何をしてもよいという感覚は、命を軽視することに繋がるものであり、極めて危険な発想です。 渋谷区の解剖実習はつまり、そのような恐ろしい考え方を子どもたちに教えているのも同然であることを区は理解すべきなのです。

区は解剖を強行

JAVAでは、渋谷区長に対し、死体・臓器の解剖の問題点を指摘し、事前に講座の中止を求める文書を提出しました。しかし、JAVAに対する渋谷区の回答は、次のようなJAVAが指摘した問題点に答えていないばかりか、到底納得できるものではありませんでした。そして、解剖講座を強行したのです。

★渋谷区要望回答

区の回答に対するJAVAの反論

【反論①】  「学校では経験できないことを経験させる」ために解剖をさせることは、教師の信念を否定する
区長の回答は、「最近は、解剖実習を行う学校が減ってきている。だからハチラボで体験させる」と解釈できます。動物愛護意識が徐々に向上し、また教育現場で命の大切さを教えることの重要性が言われてきて、それが解剖実習の減少につながっていると考えられます。減ってきているから、あえて体験させるというのは時代錯誤もいいところです。
どのような方法で動物の体の仕組みを学ばせるかは、学校・教師が決めることができますが、なかには「子どもたちに、解剖のような行為をさせたくない」という高い倫理観をもって解剖をあえてさせていない教師もいます。そのような学校・教師の方針を、この講座は否定し、侵害するものです。

【反論②】 解剖ではない「理科離れを食い止めるための見て、触れての体験」はさまざまある
理科離れが指摘されていて、その対策として、「観察や実験に力を入れる」ことが国の方針でも出されています。
講義を受けるより、子どもたちは実際に観察・実験することに興味を示すでしょう。だからといって、解剖をさせてよい理由にはなりません。
生物分野の「観察・実験」なら、たとえばフィールド観察にて、野生動物たちがたくましく、懸命に生きる姿や植物の成長を観察させたり、人間の骨格やその動きを講座の参加者同士で動かしながらお互いに学んだり、学校では持っていないような学習ソフトや顕微鏡を使わせるなどの体験もできます。
子どもたちに解剖をさせる行為については、「解剖体験のショックから、科学の道に進もうという意欲をそぐことにもなりかねない」と指摘する論文もあり、子どもたちの理科離れを防ぐどころか、加速させてしまう恐れもあるのです。

【反論③】 解剖をして「医学・生物学分野への関心をもつきっかけになる」は疑問
高齢女性を惨殺した名古屋大学の女子学生は理学部に属していました。同級生を殺害した佐世保市の女子高生は、さまざまな小動物を解剖し、人間の解剖にも興味を持っていました。
「子ども達が医学・生物学分野への関心をもつきっかけになることへの期待を含めて開催する」と渋谷区は主張しています。子どもが「生物学の勉強をして世の中の役に立つ研究をしたい」「医者になって病気の人を助けたい」と思うきっかけは、苦しんでいる人、困っている人のことを知ったり、そういった人と接しているうちに湧いてくる熱意ではないでしょうか。解剖を体験して「生物学系・医療系に進みたい」と考えるようになった子どもの場合、「今度は生きた動物を解剖したい」「人間でやってみたい」という考えを持つ危険性を孕んでいると言っても過言ではありません。

これまでの医学研究の歴史においては、ブタは多く使われてきました。だからといって、子どもたちにブタの臓器を解剖させる必要性は全くなく、そればかりか医学研究においても動物を使用しない方法の開発・採用が進められています。
また、米国・カナダにある197の医学校すべてが生きた動物を使用したカリキュラムをなくしたなど、医学教育分野でも動物を犠牲にしない努力が進められており、この講座は時代に逆行しているとも言えます。

廃止に向けて、アクションを!

渋谷区の回答や解剖を強行したことを受けて、JAVAは区に解剖の問題点を厳しく追及をしたところ、今度は不都合な質問には答えないという対応をしてきました。これからも廃止に向けて追及を続けていきます。
皆さんからも、「動物もその死体も臓器も使う講座はやらないで」といった声を渋谷区やハチラボに届けてください。

 

<長谷部健 渋谷区長>
〒150-8010渋谷区渋谷1-18-21
区長への手紙専用FAX:03-5458-4900
区長への手紙メールフォーム

<区の担当部署>
渋谷区教育委員会 生涯学習振興課 生涯学習係
〒150-0042渋谷区宇田川町5-2 渋谷区役所 神南分庁舎
電話:03-3463-3049 FAX:03-3463-3822

<解剖を実施する施設>
こども科学センター・ハチラボ
〒150-0031渋谷区桜丘町23-21 文化総合センター大和田内
電話:03-3464-3485 FAX:03-3464-4785

<米国・カナダ>すべての医学校で生きた動物を使う実習が廃止!

アメリカとカナダのすべての医学校で生きた動物を使った実習が廃止される!

ジョンズ・ホプキンス大学医学校に続き、テネシー大学医学校も動物の使用を中止した。この結果、アメリカとカナダにあるすべての医学校の実習で、動物が使用されることがなくなった。

米国の動物実験に反対する医師・科学者の団体PCRM(責任ある医療のための医師委員会)は30年以上、医学校での実習で動物を使用することを止めさせるキャンペーンを展開してきた。1985年にPCRMが設立された当時は、ほとんどの医学校は、病気の治療法を熱心に学びたいと望んでいる学生に対し、動物の体を切り開く外科手術や、薬の反応を見るために犬たちにさまざまな薬を注射するなどの実習をやらせ、動物を殺すことを要求していた。多くの学校では、このような実習に参加しなかった学生は罰せられたり退学させられたりしていた。

今回の成果で、アメリカとカナダのすべての医学校で、学生は動物を傷つけることなく医師の資格を取ることができるようになった。

PCRM: All Medical Schools END ANIMAL USE for Trainin

The Washington Post: One last U.S. medical school still killed animals to teach surgery. But no more.

<米国>「動物実験を最小限に」―有害物質規制法改正!

「動物実験を最小限に」―有害物質規制法が改正される!
米国政府、行動を起こす!

2016年6月22日、新しい化学物質の安全に関する法律にバラク・オバマ大統領が署名した。動物実験に対する画期的な非難を組み入れたこの改正法を動物保護団体は称賛している。
上下両院の賛成を得てオバマ大統領が署名した改正有害物質規制法(TSCA)は、動物実験の削減をさらに促進させる次のような条項が盛り込まれている。
アメリカ連邦議会はEPA(米国環境保護庁)に対し、この法の制定日から2年後までに脊椎動物を用いた試験の削減と苦痛軽減と代替試験について、方法や戦略の開発と実施を促進する戦略計画を提出することを命じている。また、計画書作成から5年後以降、5年ごとにその計画の実施と進歩、今後の代替試験の方法と戦略の実施目標について記載した報告書を連邦議会に提出することも指示している。さらにこの法は、EPAが脊椎動物を使用した実験をするよう要求する前に、既存の毒性学の情報と代替試験を用いることによって、脊椎動物を使った実験を行わない方法をまず検討することも命じている。
動物実験は、コストが高く、試験に時間がかかり、ヒトへの影響の予測性が低いことが多い。「この改正法は、アメリカ連邦議会が動物実験を最小限に抑え、代替法の開発とその使用のための戦略を優先することを初めて明確にしたものだ。またこの改正法は、化学物資、殺虫剤、バイオサイド*、化粧品などのリスク評価あるいは安全性確認における動物使用からの脱却の動きを加速するであろう。」と米国の動物保護団体HSUS(全米人道協会)の会長兼CEOであるウエイン・パーセル氏は述べた。
*工業製品の微生物汚染を防ぐ薬剤(防腐剤、防かび剤、防虫剤など)

The Huffington Post: The U.S. Takes Action to Minimize Animal Testing
One Hundred Fourteenth Congress of the United States of America

<米国>禁酒で胎児性アルコール障害は防げる

禁酒で胎児性アルコール障害は防げる (米国)

アメリカでは、20人に1人の子どもがFASD(胎児性アルコールスペクトラム障害)児とされており、心臓や肝臓の障害、脳のダメージ、行動障害や知的障害などを発症する可能性がある。NIAAA(米国立アルコール乱用・アルコール症研究所)は、ミミズから霊長類までを使ったFASDの研究に1,500万ドル(約15億円)以上を使っているが、この実験データをヒトのFASD患者に当てはめることはできず、この複雑な病気を理解するために行われる動物実験が役立っていない。英国の医学雑誌 「ザ・ランセット」 に最近掲載された127の研究から、FASD患者は428の病気を併発し得るということが分った。
近年、APHA(米国公衆衛生協会)は、動物ではなくヒト生物学に焦点を当てていくべきだという方針を出しており、PCRM(責任ある医療のための医師委員会)も協力している。CDC(米国疾病管理予防センター)はFASDを防ぐ最適の方法は妊娠中の禁酒であるという勧告を出している。

Good Medicine (Physicians Committee for Responsible Medicine) Spring 2016/vol. xxv, No.2:
Could Human Intervention Studies Prevent Birth Defects?

市立船橋高校で、小・中学生向け解剖講座

生命を尊ぶ態度を学ぶ!?
市立船橋高校で、小・中学生向け解剖講座

夏休みには子ども向けのさまざまなイベントが開催されますが、千葉県船橋市立船橋高等学校では、小・中学生を対象にした生き物の解剖講座が行われ続けています。

動物を使った講座だらけ

2015年7月上旬、船橋市立船橋高等学校(以下、船橋高校)のウェブサイトや「広報ふなばし(7月1日号)」に、同校が7月29日~8月1日に開催を予定している下表の公開講座の案内が掲載されていることが、船橋市民の方々の通報で発覚しました。講座の内容は、魚、節足動物、イカ、ブタの臓器を使った解剖に、ミジンコ、ウミホタル、ダンゴムシを使った実習など、生き物を使ったものがほとんどです。

開催日

対象

内容

7/29

小学1~3年生

 顕微鏡でミクロの世界を探検しよう

小学4~6年生

 ミジンコやウミホタルを観察しよう

7/30

小学1~3年生

 魚のからだをしらべよう

小学1~3年生

 葉脈標本をつくろう

7/31

小学1~3年生

 ダンゴムシのひみつ

小学4~6年生

 節足動物のからだのつくり

8/1

中学1~3年生

 魚になりたかった軟体動物~イカの解剖と寄生虫~

中学1~3年生

 ブタの解剖と脳の観察~眼や耳の微細構造~

船橋高校では、これまで毎年のように同様の講座を開催しており、同校のウェブサイトには、4年前は節足動物のエビを解剖したことの報告が、3年前と一昨年は魚やイカの体を切り開く小・中学生の写真が掲載されています。
船橋高校は、「死体や臓器なら、殺すわけではないので実習に利用しても問題ない」などと考えているのでしょう。たしかに死体・臓器の利用であれば、その動物に痛み、苦しみ、恐怖を味わわせるといった問題はありません。しかしJAVAは、死体であっても、動物の体を切り刻む「解剖」という残虐行為には、子どもたちの心に悪影響を及ぼす等、多くの重大な問題点があると考えています(JAVAが主張する解剖実習を廃止すべき理由参照)。

船橋高校、聞く耳なし

JAVAはすぐさま船橋高校と、この学校を運営する船橋市に対して、解剖実習の問題点を指摘した上で動物を用いた公開講座の中止を強く要請しました。
しかし、船橋市教育委員会と船橋高校の連名で届いた回答は、「本講座は例年たいへん好評」と自画自賛し、JAVAの問題指摘に耳を傾ける姿勢すらなく、今後も解剖講座を続けるとしています。

  • 実習に際しては、動物愛護や生命尊重の理念は当然のごとく強く受講生に訴えるものであり、生命軽視や好奇心を満たす道具に供するという指摘はまったく当たらない。
  •  解剖実習が犯罪の契機になるという指摘は、動物愛護・生命尊重の精神を正しく学習した場合には考えにくく、本講座においてはまったく当たらない。

これは、動物愛護や生命尊重を正しく教えなければ、解剖は子どもに悪影響があると教育委員会と学校が認めていると読み取れます。しかし、仮に実習前に動物愛護や生命尊重など正当なことを児童生徒に教えたとしても、生き物を切り刻む解剖実習を行ってしまえば、それらはすべて打ち消されてしまうことになります。なぜなら、解剖実習は動物愛護とは正反対のものであるからです。

  •  用意される教材はすべて市場で購入できる商品であり、食用として流通しているもの。食育にも直結する本講座の内容は、まさに生命を尊ぶ態度を学ぶことを主眼として展開するもの。

内閣府の「第2次食育推進基本計画」には「基本的な取組方針」として、「『もったいない』という精神で、食事ができることに感謝の念を持つことは、食育の極めて大切な要素である。(略)動植物の命を尊ぶ機会となるような様々な体験活動や適切な情報発信等を通して、自然に感謝の念や理解が深まっていくよう配慮した施策を講じる。」と記されています。食用として売られていた魚、イカなどを解剖に用いることは、食べ物を無駄にし、粗末に扱うことになります。
そして、解剖は「生命を尊ぶ態度を学ぶ」ことになるのでしょうか。もしそうならば、保健所で殺処分された犬猫の死体を解剖させるなどすれば、生命を尊ぶ態度を学べることになってしまいます。しかし、そのようなことは決して許されることではないのです。
本当に生命を尊ぶ態度を学ばせる講座にするなら、フィールド観察にて野生動物たちがたくましく、懸命に生きる姿を見せたり、犬猫等の動物の保護施設にて世話の体験をさせるなど、方法はいろいろあります。それなのに、なぜ解剖なのか、船橋高校の命に対する感覚を疑います。

「動物は使わない公開講座を!」の声を

高校の公開講座という機会を設け、地元の小・中学生や地域の住民が学んだり、交流を持つことは意義があることだと思います。しかし、そこにどのような講座を設定するかは講座を開催する学校側がもっと神経を使う必要があり、判断を間違えば「その講座は子どもたちに悪影響を与えかねない」という世間のそしりは免れません。船橋高校でこれまで行われた公開講座の中には、読み聞かせや、体力テスト、パソコン講習などもあります。動物を用いなくても公開講座はできるのです。「動物を使った公開講座は必要ない」、「次回からは、動物を使った講座は行わないように」と皆さんからも声を届けてください。

船橋市立船橋高等学校
校長:赤熊一英
〒273-0001千葉県船橋市市場4-5-1
TEL:047-422-5516 FAX:047-422-9129

<船橋市長 松戸徹>
〒273-8501 千葉県船橋市湊町2-10-25
TEL:047-436-2784(市民の声を聞く課)FAX:047-436-2789(同課)
市政への意見・要望メールフォーム(船橋市のサイトが開きます)

キッコーマン、動物実験を廃止!

世界でも有名な醤油メーカーである日本のキッコーマン(Kikkoman)は、醤油や豆乳など古くから日本人になじみの深い食品をはじめ、様々な食材の健康効果を証明するために、おびただしい数の動物実験を行ってきました。

キッコーマンに対し、これらの残酷な動物実験から、人道的かつ科学的にも有効な代替法への転換を求めてきた米国動物保護団体PETA(People for the Ethical Treatment of Animals; 動物の倫理的扱いを求める人々)と、協力して、JAVAでも2015年10月からキャンペーンを開始。
このキャンペーンが成功して、2016年1月、キッコーマンから動物実験廃止の回答を得ることができました!

詳細は、↓こちらのページをご覧ください。
キッコーマン:醤油や豆乳のために動物を犠牲にしないで!

Kキャンペ-ンロゴ

日本動物実験代替法学会第28回大会報告

「考・動物実験代替試験法の今とこれから」
-日本動物実験代替法学会第28回大会・横浜の報告-

2015年12月10日(木)~12日(土)/ワークピア横浜

毎年この時期に開催され、最新の代替法に関する研究が発表される大会です。
今回は、違う講演が同じ時刻に行われるということはなく、3日間をとおして、ひとつの会場にて行われました(ポスター発表公演は別会場)。これは、今大会のテーマに則し「参加者全員が講演について議論することを通して、代替試験法開発の現状と将来について考える場を提供する」ためのものでした。参加する立場からすると、やや縮小されたようにも感じられましたが、まだ小さな学会においては、同じ情報を共有することが非常に大事なことと思え、よかったように思いました。


「日本動物実験代替法学会第28回大会・横浜」のWebサイト

講演は、新規局所毒性代替法試験のバリデーション試験の現状紹介、一般毒性試験のための毒性学、ES/iPS細胞や組織工学手法、動物福祉の国際動向など40近くありましたが、以下にふたつを紹介します。

公開された毒性試験のデータベースHESSを活用
動物を使わずに反復投与毒性を予測する

一般社団法人日本化学工業協会は、LRIという化学物質の評価研究事業を日米欧の化学工業会で協力して行っており、その年間助成額は民間では最大の10億円以上にのぼるとのこと。それらの中から反復投与毒性の予測に向けた新たな取り組みについて次のような発表があった。
「化学物質の安全性評価における製品開発の効率化や動物愛護の観点から、代替法開発が強く求められている。REACH規制やEUの化粧品の実験禁止もある。しかし沢山の動物を使用し、検査項目が多く、求める結果(エンドポイント)も多彩である反復投与毒性試験に関しては、代替法の開発は全く進んでいない。反復投与毒性の標的臓器・組織が複数であること、作用機序も様々であることなどが理由として考えられる。いわゆる代替法であるin vitro試験だけでは反復投与毒性の予測は困難で、構造活性相関も反復投与毒性試験のデータの公開情報が不足していて、これもまた困難であった。これらのことから、独立行政法人製品評価技術基盤機構から最近公開されたラット反復投与毒性試験データベース(HESS-DB)を活用し、反復投与毒性を予測可能なin vitro(試験管内)/in silico(コンピュータ内) 融合型の手法の開発に取り組んでいる。この研究の特徴は、化学物質との反応性の高いタンパク質(核内受容型転写因子や薬物代謝酵素等)との化学的特徴から計算される記述子を組み合わせて、化学物質のプロファイリングを行うことである。」
HESS(有害性評価支援システム統合プラットフォーム) は、2014年6月より公開され、OECDが開発したシステムとも互換性を持っているそうだ。これらのデータベースから必要な情報を抽出し、未試験化学物質の反復投与毒性の評価を支援することが可能だとのこと。

日本の試験法(STE)がOECDのガイドラインに収載
化粧品の試験でも行われる「眼刺激性試験」

2000年から花王によって始められたSTE試験。2006年からは複数の企業による共同開発が始まり、2015年7月に日本の代替法試験が初めて「OECD TG491」として採択された。講演した花王の研究者からは、「思ったより長かった」と苦労が垣間見える感想が聞かれた。
眼への刺激性は、これまで生きたウサギの眼に、化学物質を投与して、96時間観察するドレイズテストによって調べられていた。代替法を開発するにあたり、眼に対して被験物質がさらされる時間は実際は短いと予想されること、また、眼の刺激性反応は最表面の細胞障害から引き起こされること、に着目したそうだ。
「STE試験では、ウサギ角膜由来細胞株のSIRC(サーク)細胞に被験物質を暴露させ、細胞生存率をみる。容易な技術習得性、高い施設内・間再現性、高い予測性がある、との利点がある一方、欠点は揮発性物質の偽陰性の発生頻度が高い。そのため、高揮発性物質と活性剤以外の固体の化学物質及び固体の混合物は除かなければならない。他の異なるエンドポイントに基づく代替法試験法と組み合わせて、より幅広い種類の被験物質に対する評価が可能なので、まずこの試験法にて被験物質が刺激性か非刺激性かをみて、別の試験を行うのが好ましい。」といった内容だった。
JacVAM(日本動物実験代替法評価センター)の室長からは、「重要なのはこれからで、組み合わせを前提とするのではなく使ってもらうための改善~活性剤以外の固体などには使えないといった問題を解決するなど~が必要」といった厳しい指摘がされていたが、今後を期待してのことと思われる。

動物実験代替法イメージ

動物実験代替法イメージ写真

動物の細胞も使わない試験方法を求めます

「眼刺激性試験」にはドレイズテストの代替法として、OECDに収載されているBCOP(牛摘出角膜)、ICE(ニワトリ摘出眼球) がありますが、発表されたSTE試験と同様に、いずれも動物の細胞を使用しており、完全な置き換えとはなっていません。また、HESSのようなデータを活用することで、新たな動物実験を避けたり減らすことが可能になれば喜ばしいことですが、そのベースとなるデータをいつまでも動物のものとせず、一刻も早くヒトのものに変えるよう、全力をあげるべきです。
ヒトの反応はヒトでみるのが一番ということについては、誰もが納得のいくことだと思いますので、代替法学会には、最終目標をそこに据えた研究を発展させていってほしいものです。

<米国>Good news!NIH、チンパンジーを使う実験を打ち切る

<Good News>
NIH、チンパンジーを使う実験を打ち切る(米国)

米NIH

©Chimp Haven

– NIH(米国国立衛生研究所)所長/医学博士 フランシス・S・コリンズによる発表 –

2013年6月、NIHは、公的資金の援助を受けたチンパンジーを使った生物医学研究実験を大幅に減らすことを発表し、それ以来、非営利学術機関IOM(米国医学研究所)の基準を満たさないチンパンジーの実験を段階的に減らしてきた。そのような中で、2015年6月に、FWS(米国魚類野生生物局)が飼育下にあるチンパンジーを絶滅危惧種に指定するという大きな進展があった。

NIHは2013年6月の発表に従い、2015年11月18日、ついに研究用に飼育していた50頭のチンパンジーの保有をやめる決定をしたと公表した。これにより、NIHのすべてのチンパンジーが実験から解放されることになる。チンパンジーたちはルイジアナ州キースビルにあるチンパンジー保護団体「チンプ・ヘブン」が運営する保護施設に、健康状態や集団関係などの福祉面を慎重に考慮した上で、それぞれのチンパンジーに最適なタイミングで移されることとなった。

しかし、NIHのこの決定はチンパンジーに限ったことであり、チンパンジー以外の非ヒト霊長類を用いた実験は継続される。

NIH Will No Longer Support Biomedical Research on Chimpanzees

https://awionline.org/awi-quarterly/2015-fall/last-nih-chimpanzees-be-retired

ラットを溺れさせる関西学院大の残酷実験

ラットを溺れさせ、仲間のラットが救うかを調べる
関西学院大の残酷実験

2015年5月、関西学院大学が行った「溺れたラットを仲間が助ける行動をとるかを実証する」という「ラットの援助行動」実験について、複数の報道がありました。
JAVAや多くの市民からの抗議を受けながらも、大学は実験を中止しようとしません。

 

あまりにくだらなく、残酷な実験

関西学院大学(以下、関学大)が行ったこの実験について、日経新聞は以下のように報じました。

2015年5月12日付 日本経済新聞 夕刊

ラット、溺れる仲間救う
関学大が実験 窮地に共感示す?

ラットが水に溺れる仲間を助ける行動を取ることを、関西学院大のチームが実験で示し、12日付の独科学誌電子版に発表した。ラットが窮地に立つ仲間に共感を示すことが分かったとしている。
チームの佐藤暢哉教授(神経科学)は「今後、脳のどの領域が働いているのか研究を進めることで、人が社会生活を送る上で重要な他人への共感の神経的なメカニズムや、その進化の解明につながるかもしれない」と話す。
チームは、20センチ四方の部屋が2つある箱を用意。ペアで飼育しているラットの片方を水を張った深い部屋に入れ、もう片方を水がない浅い部屋に入れると、9割以上のペアで、水に漬かっているラットを透明の壁越しに見た片方のラットが、部屋をつなぐドアを開けた。溺れていたラットは水のない部屋に移った。
ドアを開けるまでは31秒~5分で、水に漬かった経験のあるラットの方が素早く開けたという。いずれの部屋にも水を張らなかった場合にはこの行動は見られなかった。

 Science Dailyの記事

実験を行った佐藤暢哉教授の研究室のウェブサイト(データも出ています)

意図的に溺れさせられるラット。水から逃れようともがく仲間を見て、必死に助けようとするもう1匹のラット。溺れさせられたラットはもちろん、仲間への愛情を利用されるラットもまた悲惨です。
動物たちが仲間を窮地から助けようとする行動は多くみられます。私たちも、一緒に暮らす動物たちや野生動物の観察などからも発見することができます。それをわざわざラットを苦しめて再現するとは、あまりにくだらなく、残酷です。

JAVA、関学大に実験中止を要請
大学からは、呆れた回答

JAVAから、同大学長に強く抗議し、このラットを溺れさせる実験の中止と動物実験の廃止を求める文書を提出しました。JAVAのフェイスブックでこの実験を知った方々なども大学への働きかけに協力してくださいました。それに対して関学大から届いた回答文は以下のとおりで、到底納得できない呆れた内容でした。

関西学院大回答

大学等で動物実験を行う場合、文部科学省の基本指針や大学の規程によって、動物実験委員会の審査・承認を受けることになっています(JAVAはこの制度には問題があると考えています)。誰が考えても実に低俗で残酷、無意味なものであると判断できる今回の実験を、「妥当」として承認した動物実験委員会の審査は「厳正」であるとは言えません。動物実験委員会は外部からの批判をかわし、動物実験を正当化し、実験をやりやすくする役割を担っているのです。
関学大は、JAVAや皆さんからの多くの意見を受けてもなお、「動物実験委員会によって承認された実験だから」と回答してきました。意見を真摯に受け止め、今後は同様の実験は承認しない等の改善をしようという姿勢すらありません。私たちが言いたいのは、定められた手続きを踏んで行われた実験であろうとも、ルールに従って行われた実験であろうとも、あのような実験は許せない、理解できるはずがない、ということです。

JAVA、関学大をさらに追及

JAVAは、再度、関学大に対して抗議し、加えてこの「ラットの援助行動」実験や関学大の動物実験に関する体制等に不明な点もあることから、次の内容の公開質問状を送付しました。

公開質問状の質問項目

 【質問1】「ラットの援助行動」の動物実験計画書に記載された内容のうち、以下のA)~K)を答えよ。もしくは、動物実験計画書を添付せよ。
A)研究課題名 B)研究・実験の目的 C)この実験の実施期間 D)使用動物種 E)動物種ごとの使用動物数 F)動物を用いる必要性 G)E)の使用数を必要とする理由 H)実験操作ごとの想定される苦痛のカテゴリー I)動物種ごとの動物の苦痛軽減・排除方法 J)代替法の検討状況 K)動物種ごとの実験終了時の措置
 【質問2】これまでに使用した動物種と動物種ごとの頭数。
 【質問3】これまで実験中に死亡した頭数、実験中及び実験後に殺処分した頭数。
 【質問4】「ラットの援助行動」実験の動物実験計画を審査・承認した動物実験委員会の委員名と所属・肩書。
 【質問5】JAVAからの要望に対して明確な回答がなかったため、改めて伺う。佐藤暢哉教授のチームによる「ラットの援助行動」実験を中止するか、しないか。
 【質問6】「中止する」の場合、中止年月日。
 【質問7】「中止はしない」の場合、その理由。
 【質問8】「関西学院大学動物実験管理規程」の第25条には、「統括管理者は、本規程及び実験動物の飼養・保管状況、動物実験計画とその結果、自己点検・評価・検証等に関する情報を、少なくとも1年に1回学内外に公開すること。」とある。しかし、 ウェブサイト上で公開しているのは、申請件数と承認件数のみにとどまっている。「実験動物の飼養・保管状況」「動物実験計画とその結果」「自己点検・評価・検証等に関する情報」を公開するか、しないか。
 【質問9】「公開しない」の場合、その理由。
 【質問10】「関西学院大学動物実験管理規程」において、学外の者による検証を受けることが規定されているが、関学大が受けている外部検証の実施機関名ならびに受けた年。
 【質問11】3Rの原則に則り、動物の犠牲をできる限り少なくするために、動物実験委員会の審査基準を今より厳しくする等の見直しをする考えはあるか?
【質問12】「見直さない」の場合、その理由。
【質問13】今後、「ラットの援助行動」実験のような動物実験の計画が申請された場合、動物実験委員会は申請を却下するか、それとも承認するのか?
【質問14】「承認する」の場合、その理由。
【質問15】3Rの原則に則り、代替法利用の促進をする考えはあるか?
【質問16】「代替法利用を促進する」の場合、具体的にどのような促進をし、またそれを開始する時期について答えよ。
【質問17】「現状を維持する」の場合、その理由。

今度は無視を決め込む関学大

質問があまりに答えたくない内容だったのか、答えることでさらに多くの抗議が寄せられることを警戒してか、関学大は、7月31日の回答期限までに回答をしてきませんでした。督促しても無視し続けています。自分たちが行った実験について説明責任があるにもかかわらず、無視をするとはあまりに卑怯であり、大学とは思えない無責任極まりない態度です。
ぜひ、皆さんからも、今一度、関学大やこの実験を実施した佐藤教授に、「こんな実験、二度とやらないで!」「動物の愛情をもてあそぶ実験なんて、やめて!」といった声を届けてください。

<関西学院大学>
〒662-8501兵庫県西宮市上ケ原一番町 1-155
◆学長:村田治
電話:0798-54-6100(学長室) FAX: 0798-53-3324(同)
ご意見・お問い合わせメール(下記からメールアドレスを入力・送信すると、メールフォームのURLが届きます)
Eメール:http://www.kwansei.ac.jp/pr/pr_000271.html◆佐藤暢哉(のぶや)教授(文学部総合心理科学科)
佐藤教授紹介ページ:http://researchmap.jp/nobuyasato/
電話:0798-54-6201(文学部事務局) FAX:0798-51-0984(同)
佐藤教授メールアドレス:nsato@kwansei.ac.jp

 

STAP細胞のために命を落としていったマウスたち

世紀の発見騒動と動物実験
STAP細胞のために命を落としていったマウスたち

実験施設のマウス

©Norwegian Animal Protection Alliance(写真は理化学研究所とは関係ありません)

 

2014年1月29日、国立研究開発法人(旧独立行政法人)理化学研究所(以下、理研)の発生・再生科学総合研究センター(現多細胞システム形成研究センター/兵庫県神戸市)に在籍していた小保方晴子研究ユニットリーダーが、英国科学誌「ネイチャー」に掲載された『STAP(スタップ)細胞』の研究論文について発表し、科学界もマスコミも「世紀の発見」だと色めき立ちました。しかしその後、論文不正疑惑が取りざたされ、理研においてSTAP現象の再現検証実験まで行われた結果、同年12月19日、「STAP細胞はなかった」との報告がなされたことは、皆さまご存じのとおりです。
この一連の研究と検証実験においてたくさんのマウスが実験に使われていたことに対して、JAVAでは公開質問状を理研に送付するなどし、問題を追求しました。

JAVAの『実験動物の使用に関する公開質問』とそれに対する理研からの『2015年4月23日付回答』

※以下は、原文より抜粋および要約したものです

Q1. 平成23年(2011年)4月より26年(2014年)12月まで(筆者注:小保方氏在籍期間)に、STAP細胞の研究に使用されたすべての動物の種類とその数を答えよ。

  • A1. マウス728匹

Q2. STAP現象の有無の科学的検証実験に使用されたすべての動物の種類とその数を答えよ。

  • A2. マウス1,903匹

Q3. 貴所が公表している「動物実験実施状況等に係る自己点検・評価」によると、平成23年度~25年度の貴所全体の使用数マウス1,678,531匹、ラット23,644匹と、膨大な数だが「動物の愛護及び管理に関する法律」の第41条等にのっとり、どのように使用数削減を図っているのか。

  • A3. 3Rの原則及び医学生物学領域の動物実験に関する国際原則に基づき、実験計画を立案することとしている。立案された動物実験計画については、目的の科学的妥当性、動物実験が不可欠であるか、種類・数は最低限か、実験方法は適切か、苦痛軽減の措置は適切か等に関し、外部の専門家を含めて構成される動物実験審査委員会において審査され、適正と認められた計画を承認して実施する。STAP細胞に係る計画に関しても、1匹のマウスから苦痛度の上昇なしにできる限り多くのデータを得る等により使用数の削減に努めている。

Q4.貴所の「動物実験計画承認申請書」には、「動物使用の代替法の検討状況」という項目があるが、どのような代替法を検討したのか等は一切書かれていない。代替法の有無をどのように調べ、検討しているのか。

  • A4. コンピューターシミュレーションや培養細胞、微生物を用いたin vitroの実験系で代替できないか、系統発生学的に低位にある動物を利用できないか等について文献を検索、あるいは研究者間の情報交換等により行っている。

Q5. 貴所では、年間予算が約834億円(平成26年度)にも上る。このうち、動物実験を伴う研究、動物実験を伴わない研究の内訳を答えよ。

  • A5. 一つの研究室でも進展に応じて動物実験の要否は変わるので、内訳で算出することは困難。  

Q6.今後、3Rを図っていくにあたって、その方法等を見直す考えはあるか?ある場合は見直し方法と時期について答えよ。

  • A6. ある。毎年基本指針への適合性等について自己点検評価を行っており、それをもとに、例えば苦痛度区分については具体例を集積し、専門家の意見を踏まえた見直しや、苦痛軽減処置方法として用いる麻酔等の種類について国内外の情報を参考に使用規制等の見直しを図るなど検討を重ねている。STAP問題に関連しては、責任者に対し、基本指針及び所内規定等の再周知を行った。関連学会等の情報を入手し、随時必要な検討を実施していく。

STAP細胞研究は2008年から

小保方氏は早稲田大学大学院に在籍中に指導者の影響も受けSTAP細胞を着想、そしてハーバード大学留学中に研究を始めたと言われています。2010年には、当時理研に在籍していた現山梨大学生命環境学部生命工学科教授・若山照彦氏に、作成した細胞の万能性判定を依頼。若山氏はクローンからクローンを作ることを成功させるなど生殖工学を用いた動物繁殖技術者です。小保方氏が2011年に理研に籍を置いてからは、さらに協力関係が強まったと思われます。それぞれが所属長/動物実験責任者として申請した「動物実験計画承認」は、2011年に若山氏が出したものと2013年に小保方氏が出したものでは、研究課題名が全く同じの「生体内・生体外ストレスによる体細胞のリプログラミングおよびそのメカニズムの解明」というものでした。申請されていた実験動物数は以下です。

  • 2011年(平成23年)9月若山氏の申請/実施予定期間2011年12月~2013年3月→【マウス750匹】
  • 2013年(平成25年)11月小保方氏の申請/実施予定期間2013年12月~2015年3月→【マウス230匹】

先の理研からの回答A1.では「マウス728匹」となっていますので、使用実数は申請数よりは少なかったと思われますが、2012年には若山氏の研究であるクローンマウスの作製や細胞の初期化メカニズム解明のために、ウサギ30匹、マウス2,160匹という別の動物実験の申請がありましたので、こちらから流用されていたとすれば、もっと多くの命が奪われていたはずです。

実験の内容については、「動物実験計画承認申請書(開示請求した動物保護団体PEACE提供)」に「麻酔下で、マウスの肺または筋肉の一部に■■■(筆者注:黒塗りは開示原本のまま)、あるいは①安楽死措置したマウスより脂肪組織や筋組織など全身の組織を採取し、幹細胞の作出を行う。」といった記載がされています。開胸・開腹等の外科的処置を受ける個体については、人道的エンドポイントを記入しなければならない苦痛度区分Dであり(脊椎動物はBからE、Eが最も苦痛が大きい)「飼育中に弱ってきた症状(動作が鈍い、毛がボロボロなど)を示したら安楽死させる。」との記載があります。これは実験内容の一部ですが、読んでいるだけでその惨さが目に浮かびます。

再現性の有無を調べるためにマウスの犠牲が増加

「STAP細胞」とは、刺激惹起性多能性獲得細胞のことで、小保方氏が命名しました。細胞が酸の刺激によって初期化されて、様々な細胞へと変異するものだそうです。この万能性を確かめるため、遺伝子操作したマウスの受精卵にSTAP細胞を注入して胎児を育てます。この胎児に紫外線を当てて緑色に光ったため、万能性があると判定されました。しかし、このSTAP細胞はES細胞なのではないかと疑われたのです。

不正の疑いのある研究論文を公表したことで、再現性を調べるため、理研のみならず、様々な国の様々な研究所にて動物実験が行われ、多くの動物が犠牲になったことは想像に難くありません。

理研は4月に、1年の間資金約1,300万円をかけて検証実験を行うと会見で発言していましたが、結局STAP現象は再現されず、予定よりも早い12月17日で打ち切りとなりました。早めに打ち切られたにもかかわらず、本編のSTAP細胞研究に使われたとされるマウス728匹より、この検証実験で命を落としたマウスは倍以上です。倫理観は皆無であるとしか言いようがありません。

問題はSTAP細胞研究に限らない

今回は、「ノーベル賞級の発見」「リケジョ(理系女子)」「改ざん・不正」「関係者の自殺」など、実に様々な視点からスキャンダラスに取り上げられました。しかし、私たちからみた本質は、科学という綺麗ごとの名目によって、またも動物の命がぞんざいに扱われたということに他なりません。それが若い研究者にも受け継がれていることを目の当たりにすることとなり、非常にショックを受けると同時に憤りを覚えました。

研究者には、技術競争や好奇心にとらわれることなく、動物を犠牲にしない研究を行ってほしいと思います。JAVAはこれからも、マウスをはじめ、どんな小さな生きものの命も実験に使われることなく、尊重される社会をつくるよう学術・研究機関、研究者に求めていきます。

<内部告発>北里大学獣医学部で、牛の無麻酔放血殺

JAVAに届いた内部告発
北里大学獣医学部で、牛の無麻酔放血殺

届いた内部告発

1月下旬、北里大学獣医学部に関する次のような内部告発文がJAVAに届きました。

  • 平成26年12月19日の午後に病牛の病理解剖が行われた。
  • その場において、大動物臨床学の教授が、その牛を食べようと言い出し、獣医病理学の准教授が同意した。

  • その牛は無麻酔放血殺させられ、苦しそうにうめきながら死んでいった。

  • 解剖中に肉も取られた。

  • 大学に訴えたがなにもない。大学外部からも訴えてほしい。

告発者の特定につながる恐れがあるため、原文掲載はできませんが、悲痛な思いが伝わってくる手紙でした。

残酷かつ不適切な「無麻酔放血殺」

「無麻酔放血殺」は、牛の意識がはっきりした状態で頸動脈を切り、放血させ、時間をかけて失血により死に至らせるという、牛に多大な苦痛・苦悶をあたえる残酷な方法です。国内の獣医大学で採用されている教科書においても、牛の安楽死の「許容できない方法」として「放血」が挙げられています。「放血」する特殊な場合には「麻酔下で行う」とも書かれていて、牛に最適な麻酔薬として「バルビツレート」が紹介されています。JAVAが2010年に、社団法人(現公益社団法人)日本獣医学会に対して、無麻酔放血殺は安楽殺か否か照会をしたところ、「安楽殺ではない」との明確な回答がありました。
動物の愛護及び管理に関する法律(以下、動物愛護法)では、「動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない」と定められており、同法に基づく「動物の殺処分方法に関する指針」においては、「殺処分方法は、化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、・・・」とあります。そして、「苦痛」の定義として、肉体的な痛みだけでなく、苦悩、恐怖、不安等も含まれると定めています。つまり、北里大学が行った無麻酔放血殺という方法は、動物愛護法に違反するといえるのです。

JAVAの取り組みで廃止の流れに

牛の無麻酔放血殺は、過去に、東京農工大学や酪農学園大学においても行われていたことがわかっていますが、いずれもJAVAの指摘を受け入れ、この方法を廃止しました。

酪農学園大学での無麻酔放血殺の実施については、2008年、その凄惨さに耐えかねた学生を含む関係者の方たちからJAVAに寄せられた内部告発によって発覚しました。同大学では、一人の女子学生が学長に、放血前に麻酔の投与を行うように直訴していましたが、学長は黙殺し、その後、その女子学生は自らの命を絶つという最悪の事態を招きました

JAVAは、当時、酪農学園大学のみならず、「全国大学獣医学関係代表者協議会」に対しても、加盟大学における牛の殺処分方法の改善を働きかけました。そして、それに対して、北里大学の柴忠義学長(当時)をはじめ、加盟全12大学(当時)の学長連名で「動物の愛護及び管理に関する法律にのっとり、できるだけ動物に苦痛を与えない方法による『安楽殺処置』を講じることにより行うことが求められるところである」との回答を得ていました。

JAVA、即刻、北里大に働きかけ

今回の北里大学において、無麻酔放血殺が行われたことは、つまり、動物愛護法にも、過去に自ら出した方針にも、背いたということです。拷問ともいえるこの残虐行為は、到底許されるものではありません。JAVAは即刻、学長に対して、徹底調査と然るべき対処をし、JAVAにその報告をすること、無麻酔放血殺を廃止すること、さらに、現行の動物実験・実習を見直し、動物を犠牲にしない方法を用いることを求めました。

北里大からの回答

後日、学長名にて、JAVAの要望書を受けたのち、特別調査委員会を立ち上げ、調査し、告発内容が事実であったこと、同大学ではすでに無麻酔放血殺は廃止されているが、今回、違反があったため、対処したことが記された回答文書が届きました。

「採取した肉は焼却処分」

大学からの最初の回答では、解剖した牛の肉を食べようとしたことについて、一切触れられておりませんでした。そのため、JAVAでは、この点についての事実関係ならびにその後の対処について、再度問いました。後日、「病理解剖において、牛の肉の一部が持ち出されたのは事実で、採取したままの状態で冷蔵庫に保管されており、獣医学部長の命により、12月24日にすべて焼却処分した(食べたり、学生等に配った事実はなかった)」との回答がありました。
今回の一連の問題にかかわった教員に対する処分は、懲戒委員会を立ち上げて、審議中とのことです。

北里大学のウェブサイトには、「北里大学獣医学部における牛の無麻酔放血殺とその対策の実施について(お詫び)」として、今回の問題の経緯と対処について掲載されています。

内部告発を活かして

無麻酔放血殺を行ったことは、牛を苦しめたということのほかに、学生たちに間違った方法を見せ、内部告発がなければ、彼らはそれが通常の方法と認識してしまうところであったことも大変大きな問題なのです。
内部告発者の方は、まず大学に訴えましたが、大学側が動いてくれる様子がないため、JAVAに助力を求めてきました。外部のJAVAから働きかけたことが、大学を動かすのに大きな後押しとなったと言えるでしょう。
ご存知のとおり、動物実験は密室の行為です。情報開示請求や第三者評価制度による審査結果を見ても、その真の実態はつかめません。そういったことからも、内部告発は動物実験廃止の活動には、重要かつ不可欠なのです。JAVAでは、ウェブサイトで「企業や学術機関など密室で行われている動物実験の実態をご存じでしたら、ぜひ情報をお寄せください。告発者の方の秘密は厳守いたします。ぜひ勇気をもってご連絡を!」と呼びかけるなど、常時内部告発を受け付ける体制をとっています。実際、多くの告発が寄せられています。今後もこの体制を継続し、内部告発という貴重な情報を生かし、動物実験の廃止につながる取り組みをしてまいります。

富山大学における遺伝子組換えラットの不正取扱い問題

自主管理と第三者評価では、動物実験はなくせない
富山大学における遺伝子組換えラットの不正取扱い問題でも明らかに

報道でご存知の方も多いと思いますが、2014年7 月に、富山大学の生命科学先端研究センター動物実験施設において、不活化(殺処分)措置をとったはずの遺伝子組換えラット3 匹が、蘇生した状態で死体一時保管冷凍庫内にて発見されたという問題がありました。

遺伝子組換え動物の使用については、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」で規制されています。富山大学では、この法律とそれに基づく大学の規則にのっとって遺伝子組換え動物を扱うことになっています。しかし、それらに違反し、遺伝子組換え動物の実験や保管等を行う「管理区域」の外で、不活化措置、ケージ間の移動が行われていたのです。
さらに、その後の大学の調査で、同動物実験施設において実施された遺伝子組換え動物の殺処分のうち、管理区域外で行われたものが平成17 年度以降に少なくとも128 件あることが判明しました。

富山大学は文部科学省による現地調査と厳重注意を受け、10月にこの一件について双方から発表がなされました。

富山大学のプレスリリース(PDF)

文部科学省の報道発表

rat-NAPA

photo/Norwegian Animal Protection Alliance
※この写真は富山大学とは関係ありません

JAVA、富山大学と国動協・公私動協に質問状を提出

そもそも、このような異様な事件が発生するのは動物を用いた非倫理的な実験を行っているからに他なりません。JAVAは実験の削減やシステムの構築が目的ではなく、動物実験廃止の実現を大前提に、研究機関における様々な事件や問題に対して追及の機会を逃すことなく対応しています。

今回の富山大学の事件に関しても、そのような方針に基づき、11月、JAVAは、事実確認と問題の追及を行い、富山大学学長あてに公開質問状を提出しました。
また、「動物実験に関する相互検証プログラム」*1 において、富山大学に訪問調査を行い、「適正」と評価していた国立大学法人動物実験施設協議会(以下、国動協という)・公私立大学実験動物施設協議会(以下、公私動協という)の検証委員会委員長あてにも公開質問状を提出しました。

  1. *1文部科学省告示「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(基本指針)」の規定に基づき、加盟している大学同士で、各大学の動物実験の実施体制が基本指針に適合しているかを訪問調査のうえ、評価するプログラム。

質問状への回答が届く

12月、富山大学からは、遠藤俊郎学長と同大学動物実験委員会の西条寿夫委員長名で、国動協・公私動協からは、「動物実験に関する相互検証プログラム」の八神健一検証委員長名で回答が届きました。

<富山大からの回答(PDF)
※PDFは、読みやすいように、富山大学からの回答にJAVAからの質問を挿入したものです。

回答から、富山大学は今回の違反を重く受け止め、再発防止ための策をいち早く講じたと言えると思います。しかしながら、「遺伝子組換え動物は管理区域内で扱う」という基本的なルールすら守られていなかったということには驚かされます。管理区域外での殺処分という違反が過去に128件もあったということは、これが常習化していた証でしょう。
殺処分とその後の死亡確認の不手際で、冷凍庫内でラットが蘇生した問題については、実施したのが留学生で日本語の理解が不十分だったから、責任者の教育が不十分だったからと、その理由を説明しています。しかし、留学生の語学力に関係なく、殺処分措置を的確に実施できない人物に任せたということ自体に問題があります。
今回の問題は遺伝子組換え動物についてのみ取り上げられたものですが、このような大学そして動物実験関係者の意識の低さを考えると、それ以外の実験動物の管理・取扱いにも多くの問題があるのではないかとの疑いを禁じ得ません。

<国動協・公私動協からの回答(PDF)

回答では、ラットが蘇生した問題、そのラットが管理区域外においてケージ間で移し替えられていた問題を訪問調査で見抜けなかった理由を、「動物実験に関する相互検証プログラム」の訪問調査時に「発生していなかった」「遭遇しなかった」と説明しています。
また、平成17年度以降、128件もあった管理区域外での殺処分については、「大学側の自己点検・評価の報告書への記載がなかったため」と説明しています。
つまり、これは訪問調査がいかに信頼性がないかを証明するに十分な一件であり、他の大学に対する訪問調査でも多くの問題が見落とされた可能性は大いにあると言えます。

自主管理と第三者評価の問題が露呈

動物実験者の多くは、動物実験の規制は「自主管理で十分」と主張しています。実際、大学を含め、どこの動物実験施設も自主管理を行っているわけですが、今回の富山大学の一件だけをみても、自主管理では明らかな違反であっても放置されることがわかります。

では、第三者が介入すればいいのでしょうか。「自主管理では不十分で、第三者機関による査察が必要」といった意見もあり、動物実験に反対する市民の方たちからもこういった声が多く聞かれます。しかし、国動協・公私動協による第三者評価制度「動物実験に関する相互検証プログラム」では、今回の問題が見落とされ、富山大学に対して「適正」との評価が下されていたのです。

アメリカでは、AAALACインターナショナル(国際実験動物ケア評価認証協会)による施設の第三者認証が普及しており、2007年10月29日現在、622施設が認証を受けています。普及している理由には「社会的信頼が得られる」「動物実験反対活動家への牽制にもなっている」といったこともあげられているのです。しかし、アメリカでは、サルを虐待するなどの動物福祉法に反する行為をしていてもAAALACの認証を維持している施設がいくつもあるのです。

日本では、研究界の中枢組織である日本学術会議は、「動物実験に対する社会的理解を促進するために」と題した提言書を2004年に出していますが、それには「統一ガイドラインの基準が満たされていることを第三者の立場から評価・認証する機構を設けること 」と記述があります(下線はJAVA)。
ここからも、第三者評価とは、動物実験者側が、動物実験反対の声を抑えるために考えた制度であるかがお分かりいただけるでしょう。

JAVAでは以前から、第三者評価について異議を唱えてきました。第三者評価は動物実験を守るための「隠れ蓑」となる制度であり、動物実験の廃止を阻害するシステムであるからです。第三者評価制度で「査察」をうけ「認証をされた」「適正と評価された」と聞けば、「ここの研究機関は大丈夫ね」というイメージを持たれることになるでしょう。しかしながら、それはイメージだけで、現実的には動物を救うことはできないのです。第三者評価は、良くて実験動物の福祉の向上であり、今回のように法律違反すら指摘できないケースもあるわけで、動物実験を廃止できるどころか、その妨げになってしまうのです。

動物実験廃止のために最も重要なことは何かというと、それはまさに、「動物実験反対の世論を高めること」です。現に、EUにおける化粧品の動物実験廃止が実現した大きな要因は、動物実験反対の世論が高まった結果、動物を犠牲にしない研究方法が強く求められるようになり、代替法研究が発達したためと言われています。そして、日本でも化粧品最大手の資生堂やマンダム、コーセー、ポーラが国内での廃止を決定しましたが、これは法律が改正されたからでも法規制ができたからでもありません。それは私たち消費者の声で成し得たことです。これからも「動物実験反対」の声をあげ続けていきましょう。

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